戦いの原則についてはその存在について肯定的な意見と否定的な意見があるが、古来より多くの戦術家によって考案されてきた[13]。
『孫子』詳細は「孫子 (書物)」を参照
『孫子』においては多くの戦いの原則が考案されている。孫子においては戦略と戦術が明確に区分されていないが、戦術的な原則を取り上げれば、以下のようなものがある[14]。
戦いは敵の意図に正対することで不敗の態勢を築き、虚を突く事によって勝利する
先に戦場に到着することによって、戦いの主導権を握る
地形の掌握と有効な活用
敵情を把握するために、情報活動は必要不可欠
ジョミニ「戦争概論」も参照
19世紀の軍事学者アントワーヌ=アンリ・ジョミニは当時行われていた戦いの原則の存在をめぐる論争において、肯定の立場に立っていた。そのために彼の著書『戦争概論』においてはいくつかの原則が示されている[15]。
戦略的な判断に基づいて、主力を勝敗を左右する重大な地点である決勝点に機動し、敵の後方連絡線を圧迫する
大規模な味方をもって小規模な敵と戦闘するように機動する
戦術的な判断に基づいて、主力を決勝点または撃破する要点へ志向させる
全ての味方に同時的に戦果を生み出すように効率的に運用する
クラウゼヴィッツ「戦争論」も参照
また同時代の軍事学者カール・フォン・クラウゼヴィッツは戦いの原則の存在をめぐる論争において、否定の立場にたっていた。しかし彼の著書『戦争論』は現代でも評価されている優れた軍事理論の古典であり、戦いの原理につながる理論や概念を論じている。ここでは戦術における戦いの原理に関連する理論・考察の一部と現代でも用いられるクラウゼヴィッツの論じた概念について簡単に述べる[16]。 英国陸軍軍人のジョン・フレデリック・チャールズ・フラーはこれまでの軍事研究と戦史研究を通じて、陸戦の原則を以下のように要約した。この原則は若干の差異はあるものの各国陸軍の教範類にも影響を与えている[17]。 しかしアメリカ軍では物量の原則(飽和攻撃)、イギリス軍では運用の原則、ソビエト連邦軍では殲滅の原則が加えられている場合もあり、一様ではない。 兵科とはそれぞれの部隊が持つ専門分野であり、戦闘兵科、戦闘支援兵科、後方支援兵科に大別される。ここでは戦術的に重要な兵科について簡単に説明する。 歩兵は主に小銃などの携帯火器を装備し、徒歩の移動手段を持ち、近接戦闘の能力を持つ兵科であり、地域の占領を行うことが出来る唯一の兵科である。あらゆる地形や状況において柔軟に運用を行うことが出来る。しかし個々の兵員が主体であるために防護性は低い。またその基本的な部隊・装備・運用の差異から軽歩兵部隊・機械化歩兵部隊・空挺部隊などに分類でき、機械化歩兵は装甲車での移動、空挺部隊は航空機での移動能力を持つ。責任交戦距離は0メートルから500メートル程度であり、自動車化された部隊の機動速度は平均して時速18キロメートルである[18]。 機甲は主に火砲・装甲を併せ持って履帯機動を行う戦車を装備し、高度な打撃力を有する兵科である。
防御は攻撃よりも強い形態である
勝利は敵の物的・精神的な戦闘力の破壊であり、これは追撃の段階で急速かつ強固に達成される
迂回機動は味方の後方連絡線が優勢である場合に成り立つ
あらゆる攻撃は前進することによって弱化する(攻勢極限点)
勝利によって得られる成果はある一点を過ぎると逓増から逓減に変わる(勝敗分岐点)
戦場において一般的に情報の不確実性・混乱が生じる(戦場の霧)
戦場において一般的に計画と実施の齟齬が生じる(摩擦)
フラー
目標の原則 - 目標の明確化と一貫性
統一の原則 - 部隊の指揮統制の一元性を保持する
主導の原則 - 先動・先制によって戦闘の主導権を確保する
集中の原則 - 敵弱点への味方戦力を一点集中する
奇襲の原則 - 意外性を伴う行動をする
機動の原則 - 機動を先制する
経済の原則 - 戦力を徹底して節約する
簡明の原則 - 目標・計画・行動の簡明さを保つ
警戒の原則 - 敵への準備・即応対処を準備する
兵科
歩兵
機甲
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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