戦略防衛構想
[Wikipedia|▼Menu]
それでも国防総省や各軍をはじめ、様々な方面から提案がなされ、研究・開発が進められた結果、いくつかは具体的な成果を上げるに至った。

しかしレーガン自身が予言したように、研究はやがて困難に直面する。「見込みのある」、あるいは「敵(ソ連)が保有しうる兵器・技術」の全てに投資する姿勢は、開発費の膨張を招き、個別の研究も技術的困難などから停滞し始める。実戦配備の目処が立たない中、ソ連のゴルバチョフ政権誕生をきっかけとした緊張緩和と軍縮路線が加速。SDI構想は次第に存在意義を失い、冷戦終結と相前後して、自然消滅に近い形で中止された。以後のミサイル防衛は、湾岸戦争を受けてソ連の協力[1][2]も得ながら迎撃の対象と規模を絞り込んだジョージ・H・W・ブッシュ政権下のGPALS(Global Protection Against Limited Strikes / 限定的攻撃に対する地球規模防衛構想)、さらにビル・クリントン政権下ではTMDとNMDへと移行していくこととなる。
日本

1986年9月9日、日本政府は戦略防衛構想の研究への参加方針を通告するとともに、方針の内容を記した当時外相である倉成正の書簡を当時米国防長官キャスパー・ワインバーガー、当時国務次官(政治問題担当)マイケル・アマコストに手渡した。[3]
内容探知実験衛星デルタ・スターの打ち上げLACE(低出力大気補正実験)衛星、いわゆるミラー衛星の実験機
捜索・追跡システム

ブースト段階捜索・追跡システム (Boost Surveillance and Tracking System, BSTS)、宇宙空間捜索・追跡システム (Space Surveillance and Tracking System, SSTS) などからなる。MIRV(多弾頭ミサイル)が展開する前の、敵国上空での探知が求められた。
地上配備防衛

ERINT (Extended Range INTercept、延長射程迎撃弾)は、戦域ミサイル防衛計画の一部で、FLAGE (Flexible Lightweight Agile Guided Experiment) を発展させたものとされた。FLAGEは小型のレーダー誘導ミサイルでミサイルを撃墜する実験であり、現在のミサイル防衛(MD)にも繋がる。FLAGE は1987年にランスミサイルの撃墜に成功している。ERINT は固体燃料を用い、FLAGE よりも高速で飛翔するとされた。

HOE (Homing Overlay Experiment、誘導被覆実験)は、直径4メートルの網によってミサイルを迎撃するというもの。開発は陸軍が担当し、1983年から1984年にかけて4回実験が行われた。最初の3回はセンサーや誘導装置に問題があったために失敗し、最後の1回だけが成功した。

ERIS (Exoatomosphere Reentry-Vehicle System、大気外ミサイル妨害機構)はロッキード社によって開発が行われ、1990年代初頭に2回実験された。しかしながらそれ以降の開発はされていない。この計画の成果は戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)や地上配備中間軌道防衛(GMD)に活用された。
光線/粒子線兵器

初期には核爆発を動力源とするX線レーザーによるミサイル迎撃が検討された。これは人工衛星(軌道迎撃衛星)から発射されるもので、通常のレーザーと仕組みは同じであるが、エネルギー源が原子爆弾であるという点で非常に開発が困難であった。1983年に最初の実験が行われているが、核爆発によって計器が破壊されて数値を得ることができなかったため開発が断念された。核動力の実用化には失敗したが自由電子レーザーなどX線レーザーそのものは現在各方面で利用されており、SDI構想もその発展に貢献している。

化学レーザーは海軍と空軍主導で開発が進められた。海軍はSDI構想以前から、艦船に搭載する近接防御兵器としてレーザー兵器を独自に研究していた。これは「シー・ライト計画」と呼ばれており、まず出力0.4メガワットのフッ化重水素レーザー、ベースライン・データ・レーザー(BDL)を完成させ、1979年には対戦車ミサイルBGM-71 TOWの撃墜に成功。続いて出力2.2メガワットの実用プロトタイプMIRACL(Mid-Infrared Advanced Chemical Laser、中赤外線先進化学レーザー)の制作に入る。1980年に完成、1981年には出力試験も終えたが、予算のカットなどもあり、追跡・照準システムも含めた全システムが完成したのは、SDI構想後の1984年だった。開発早々の1985年にはタイタンミサイルのブースターを破壊することに成功している。

空軍の化学レーザーは『トライアッド』と呼ばれており、SDI構想以前から研究されていた唯一の宇宙用レーザーとして知られている。レーザーの発振装置、目標の追跡・捕捉装置、収束ミラーの三要素から成り立つため、空軍からDARPA(国防総省高等研究計画局)に研究が移管された際、『トライアッド(三和音)』と名付けられた。高度600 - 1,200kmの軌道上に配置する、出力5メガワット、射程5,000kmのレーザー衛星の開発を目指していた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:29 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef