戦死
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このため「行方不明」の状態が続く場合や、逆に公式に「戦死」とされた後で生存が確認された場合もある。個人識別の容易化のために多くの国の軍では認識票を使用している。また現在では血液型の他、DNA型鑑定も併用される場合がある。

戦死の際の葬儀方法は、その国・軍・宗教などにもよる。各国の海軍では伝統的に水葬も採用している[要出典]。
死後の対応秋田県護国神社

戦死者への対応には、死後の勲章褒章階級特進などの栄典や、国家による顕彰や追悼、遺族への軍人恩給などの国家補償などがある。旧日本軍では第一次上海事変以降、戦功に応じて二階級特進も行われた。

戦死者への敬意の表明は、古代より多くの国家・民族・宗教などで、公的犠牲への感謝と評価、遺族感情への配慮、あるいは軍の士気維持、新兵募集、国威発揚などの理由で行われている。その内容は国家、政府、民族、宗教、文化、立場などにより、積極的な賞賛・顕彰・美化や、特定の宗教あるいは多宗教・無宗教による慰霊・追悼・祈念など、さまざまである。

古代より多くの戦死者はそれぞれの部族や民族で勇士英雄とされた。中世ヨーロッパでは騎士などの主要な戦死者は、教会などで聖人や聖人に準じた扱いを受けた。特にユダヤ教キリスト教イスラム教では、異教徒との戦争を聖戦と呼び、その戦死を殉教とも呼んだ。また日本では古来より敵味方双方の戦死者を慰霊・追悼する碑も複数存在している[9]

各国の戦死者や戦没者に対する、慰霊碑慰霊塔、祈念館、銅像などのモニュメントは、国立や地方自治体設立、民間設立などを含め各種のものがある。特に総力戦となった第一次世界大戦の前後では、列強各国で多数の戦争祈念施設が作られた。
日本

日本では明治から昭和初期にかけて、いわゆる国家神道により国家が靖国神社護国神社を創建し、民間でも各種の忠魂碑忠霊塔などが作られた。第二次世界大戦後は靖国神社問題もあり、第二次世界大戦での軍民合わせて約310万人の日本人戦死者・戦没者を対象にした政府主催の全国戦没者追悼式、身元不明の遺骨を納めた千鳥ケ淵戦没者墓苑、各地の追悼式・慰霊碑・戦没者墓苑などがあるが、国立の追悼・慰霊施設は存在していない。

戦死者の名誉を謳うために様々な措置が講じられた。1937年(昭和12年)には、戸籍上「死亡」とのみ記載されていたものを「戦死」に改めたほか、翌年には「戦傷死」の記載も加えられるようになった[10]。また、婚姻届の受理前に戦死した場合(実質的に後出し)でも婚姻を有効とする措置も行われた[11]

自衛隊では賞恤金の支給対象となる。
報道統制

独裁国家だけでなく民主国家でも、特に戦死に関しては遺族感情や国民感情などを理由に報道統制が行われる傾向が強い。アメリカでは、ベトナム戦争では従軍記者などによる比較的自由な取材・報道が行われたが、それが激しい厭戦気分や反戦運動と敗北に影響したとの意見も存在し、湾岸戦争イラク戦争では戦死者・戦傷者などの映像や写真は厳しく規制された[12][13]
脚注^戦死
^戦没
^AAP-6, NATO Glossary of terms and definitions
^ “ ⇒The 'Lectric Law Library's Legal Lexicon On * Justifiable Homicide *”. 2007年2月4日閲覧。
^ “ ⇒Nolo Press Legal Definition Homicide”. 2007年2月4日閲覧。
^ 河野仁『<玉砕>の軍隊、<生還>の軍隊 日米兵士が見た太平洋戦争』講談社学術文庫、2013年。序章「戦争と死」の頁。
^ 守屋淳 『最高の戦略教科書 孫子』 日本経済新聞出版社 15刷2016年(1刷2014年) ISBN 978-4-532-16925-1 p.70.p.71に参考書名が記される。
^ マーガレット小菅信子 石塚久郎・鈴木晃仁(編)「<戦死体>の発見」『身体医文化論:感覚と欲望』 慶應義塾大学出版会 2002年、ISBN 4-7664-0924-8 pp.349-359.
^ 「靖国問題」(高橋哲哉、筑摩書房 ちくま新書、2005年、ISBN 978-4480062321
^ 「戦傷死」も戸籍に明記『東京朝日新聞』昭和13年6月3日夕刊(『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p166 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
^ 本人の戦死後受理でも婚姻届は有効『東京朝日新聞』昭和12年12月11日夕刊(『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p166 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
^ 「現代の戦争報道」(門奈直樹岩波書店 岩波新書、2004年) ⇒[1]
^ 「ジャーナリズムの可能性」(野中章弘岩波書店、2005年、234p)[2]

参考書籍

『一兵士の戦争体験―ビルマ戦線生死の境』(小田敦巳
ISBN 978-4-87959-219-4・ ⇒全文Web公開

『新・戦争のテクノロジー』(ジェイムズ・F・ダニガン、訳:岡芳輝、ISBN 4-309-24135-2

『戦後日本と戦争死者慰霊:シズメとフルイのダイナミズム』(西村明、有志舎、2006年)

『近代日本と戦死者祭祀』(今井昭彦、東洋書林、2005年)

関連項目

戦争 - 軍隊兵士

無名戦士の墓 - 靖国神社護国神社 - 英霊

威厳ある移送 (アメリカ軍)

モータリー・アフェアーズ(英語版) - アメリカ軍の敵・味方問わず死体を回収して・移送・管理を行う部署。

米軍兵による日本軍戦死者の遺体の切断

日本人墓地(必ずしも戦死者墓地とは限らない)

戦友 (軍歌)

エインヘリャル

クララ・バートン - アメリカ赤十字創設者。南北戦争後の作戦行動中行方不明か戦死したかを調査事務所を設置し、名前を照合して正しい名前で埋葬を行った。

遺体送還と再埋葬(英語版)(戦時中には不衛生とされて送還を禁止される場合があったが、たびたび破られた。また、交戦国同士で捕虜交換(英語版)と同時に遺体交換も行われる場合もある。)

外部リンク

第二次世界大戦等の戦争犠牲者数 - 我が家のホームページ

典拠管理データベース: 国立図書館

ドイツ


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