空戦法規(空戦規則、空戦に関する規則案)は航空戦における武力行使について規定したものであり、ワシントン軍縮会議で設置された戦時法規改正委員会において日本、イギリス、オランダ、アメリカ、フランス、イタリアが1923年に署名した報告書で規則が定められたが、当時は将来的な航空機の発展可能性に鑑みて運用が制限されることを回避したために、現在条約として存在しない。しかし、慣習法としてしばしば引用される場合がある。
軍用機は全方位から視認できる軍用の外部標識と単一の国籍記載を有し、軍人が操縦する航空機であり、これだけに交戦権の行使が容認される。非軍用機や民間人は交戦権が認められず、どのような敵対行為も禁止される。空襲は非戦闘員保護の観点から軍事目標、すなわちその破壊が交戦国に明確に軍事的利益をもたらす目標に限定される、などが定められている。 戦時国際法において背信行為とは、敵の信頼を裏切る目的を持ちながら敵の信頼を誘う行為であり、禁止されている。背信行為の禁止は中世の騎士道に由来し、慣習国際法として確立され、1907年にはハーグ陸戦条約、1977年にも第1議定書で記された。 その具体的な行為としては、赤十字や赤新月旗、塗装などを揚げながらの軍事行動、休戦旗を揚げながら裏切る行為、遭難信号を不正に発信する行為、敵国の軍服や国籍標識の使用行為などが挙げられる。なおこれに則り、鹵獲した戦闘車両や航空機、船舶を軍事利用する場合は、即時に自国標識に変更することが必要である[注釈 5]。 非戦闘員とは、軍隊に編入されていない人民全体[5]を指し、これを攻撃することは禁止されている。また、軍隊に編入されている者といえども、降伏者、捕獲者に対しては、一定の権利が保障されており、これを無視して危害を加えることは戦争犯罪である。 これらは、1949年のジュネーブ諸条約と1977年のジュネーブ条約追加議定書TとUにおいて定められている。 戦争犯罪とは、軍隊構成員や文民による戦時国際法に違反した行為であり、かつその行為を処罰可能なものを言う。 1998年には、戦争犯罪等を裁く常設裁判所として国際刑事裁判所規程が国連の外交会議で採択された。 交戦当事国とそれ以外の第三国との関係を規律する国際法である。中立国は戦争に参加してはならず、また交戦当事国のいずれにも援助を行ってはならず、平等に接しなければならない義務を負う。一般に、次の3種に分類される。 永世中立国として有名なスイスは、第二次世界大戦においても中立を守った。ただし、中立を守るために相応の努力をしている。スイス軍は領空侵犯に対しては迎撃を行い、連合国側航空機を190機撃墜、枢軸国側航空機を64機撃墜した。スイス側の被害は約200機と推定されている。 この節には内容がありません。加筆 条約を履行しない国家および企業は経済制裁を受ける。 多国間で条約化された戦時国際法の一覧[6]。 1949年8月12日のジュネーブ諸条約 1977年のジュネーブ諸条約の追加議定書
背信行為の禁止
非戦闘員および降伏者、捕獲者の保護
まず降伏者および捕獲者は、これを捕虜としてあらゆる暴力、脅迫、侮辱、好奇心から保護されて人道的に取り扱わなければならない。捕虜が質問に対して回答しなければならない事項は自らの氏名、階級、生年月日、認識番号のみである。
また負傷者、病者、難船者も人道的な取り扱いを受け、可能な限り速やかに医療上の措置を受ける。衛生要員、宗教要員も攻撃の対象ではなく、あらゆる場合に保護を受ける。
文民とは、交戦国領域、占領地での 敵国民、中立国の自国政府の保護が得られない者、難民、無国籍者である。全ての文民は人道的に取り扱われる権利があり、女性はあらゆる猥褻行為から保護される。文民を強制的に移送、追放することは禁止されている。
戦争犯罪の処罰
交戦国は敵軍構成員または文民の戦争犯罪を処罰することができる。
また国家は自国の軍隊構成員と文民の戦争犯罪を処罰する義務を負う。戦争犯罪人には死刑を処すことができるが、刑罰の程度は国内法によって定められる。
特に重大な戦争犯罪として考えられるものとしては、非戦闘員への殺害・拷問・非人道的処遇、文民を人質にすること、軍事的必要性を超える無差別な破壊・殺戮など様々に考えられる。
中立国の義務「中立主義」、「武装中立」、および「非武装中立」も参照
回避の義務
中立国は直接、間接を問わず交戦当事国に援助を行わない義務を負う。
防止の義務
中立国は自国の領域を交戦国に利用させない義務を負う。
黙認の義務
中立国は交戦国が行う戦争遂行の過程において、ある一定の範囲で不利益を被っても黙認する義務がある。この点について外交的保護権を行使することはできない。
スイスの自衛努力
条約履行の確保
条約化された戦時国際法の一覧
ジュネーブ諸条約
戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーブ条約(第1ジュネーブ条約)
海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の改善に関する1949年8月12日のジュネーブ条約(第2ジュネーブ条約)
捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーブ条約(第3ジュネーブ条約)
戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーブ条約(第4ジュネーブ条約)
ジュネーブ諸条約の追加議定書
1949年8月12日のジュネーヴ諸条約に追加される議定書(第1追加議定書)
1949年8月12日のジュネーヴ諸条約に追加される議定書(第2追加議定書)
2005年12月8日のジュネーヴ諸条約に追加される議定書(第3追加議定書)
児童の権利保護
武力紛争における児童の権利保護
文化財の保護
武力紛争の際の文化財の保護に関する条約
戦闘手段に関する条約
陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(ハーグ陸戦条約)
開戦ノ際ニ於ケル敵ノ商船取扱ニ関スル条約
商船ヲ軍艦ニ変更スルコトニ関スル条約
自動触発海底水雷ノ敷設に関スル条約
戦時海軍力ヲ以テスル砲撃ニ関スル条約
海戦ニ於ケル捕獲権行使ノ制限ニ関スル条約
武器類の禁止・制限に関する条約
対人地雷の使用、貯蔵、生産及び委譲の禁止並びに廃棄に関する条約
化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約
過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約
過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約に付随する1996年5月3日に改正された地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用又は制限に関する議定書
環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約
細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約
窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止関する議定書
窒息セシムヘキ瓦斯ヲ散布スルヲ唯一ノ目的トスル投射物ノ使用ヲ各自ニ禁止スル宣言書
外包硬固ナル弾丸ニシテ其ノ外包中心ノ全部ヲ蓋包セス若ハ其ノ外包ニ截刻ヲ施シタルモノノ如キ人体内ニ入テ容易ニ開展シ又ハ扁平ト為ルヘキ弾丸ノ使用ヲ各自ニ禁止スル宣言書
中立等に関する条約
開戦に関する条約
陸戦ノ場合ニ於ケル中立国及中立人ノ権利義務ニ関スル条約
海戦ノ場合ニ於ケル中立国ノ権利義務ニ関スル条約
国際組織等に関する条約
国際連合憲章
国際連合要員及び関連要員の安全に関する条約
海洋法に関する国際連合条約
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 「軍事的考慮」と「人道的考慮」とも言う。小寺彰、岩沢雄司、森田章夫編『講義国際法』(有斐閣、2006年)468頁
^ ここでいう攻撃とは攻勢作戦、防勢作戦や、その戦術行動に拘らない暴力行為をさす。第1追加議定書第49条第1項
^ 石油貯蔵施設、港湾施設、飛行場、鉄道、発電所、産業施設など間接的に軍事力に貢献するものについては、その全面的、または部分的な破壊、無力化、奪取が明らかに軍事的利益になる場合にのみ限られる。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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