これに先立つ近代では、ゲーテはフランス革命戦争に従軍した経験から、戦時下の市民生活を舞台とする『ヘルマンとドロテーア』(1797)を執筆、フリードリヒ・シラーの三十年戦争を背景にした歴史悲劇『ヴァレンシュタイン』(1799)、百年戦争におけるジャンヌ・ダルクの悲劇を描く『オルレアンの少女』(1801)なども書かれている。ロマン派詩人フリードリヒ・ヘルダーリンは、ギリシャの独立闘争に参加した若者の心情と内幕を描く『ヒュペーリオン』(1797-99)を書いた。スコットランドの詩人トマス・キャンベルも、フランス革命戦争を題材にした「ホーエンリンデン」(1803)などの戦争詩を残している。
ジェイムズ・フェニモア・クーパーの革脚絆物語五部作は、北アメリカにおける植民者とネイティブ・アメリカンの関わりの物語であるが、その中で『モヒカン族の最後』(1826)は、イギリスとフランスの領土紛争の中での彼らの闘争が語られている。ロバート・ルイス・スティーヴンソンは薔薇戦争を舞台にした冒険小説『二つの薔薇』(1888)がある。セヴァストーポリの激戦、フランツ・ルボー画(1912年) アメリカの南北戦争を舞台にした作品ではスティーヴン・クレイン『赤い武功章』や、看護師として従軍したウォルト・ホイットマンの詩集『軍鼓の響き』(1865)などがある。普仏戦争において国民兵を志願したアルフォンス・ドーデは『月曜物語』で、戦争下のパリとアルザス地方の人々を描き、その中の「最後の授業」はよく知られる。エミール・ゾラを中心とした自然主義文学のグループは1880年に普仏戦争を題材とした小説集『メダンの夕べ』を刊行し、ゾラの「水車小屋攻撃」、召集されて従軍したギ・ド・モーパッサンの「脂肪の塊」、ユイスマンスの「背嚢を背負って」などが掲載された[4]。ゾラは『ルーゴン・マッカール叢書』の中の長編の一つとして、戦争の実態と社会全体を描く『壊滅』も執筆し、モーパッサンも風刺的、反戦的な短編を書いた。
様々な近代戦争