戒名
[Wikipedia|▼Menu]
一休宗純のように、生前から戒名の上に道号を付けて名乗る者も多い。

なお、律宗や浄土真宗(高田派を除く)では道号は用いない。
宗派別の特徴

下記の特徴の説明は、地域・寺院などの慣習によって異なる場合がある。
律宗
戒名の下に「菩薩」の2字が付く。
天台宗
院号、道号、戒名、位号の順につける。女性の戒名には「妙」号が多く使われる。(例)清秋院天華妙玲大姉 など
真言宗
院号、道号、戒名、位号の順につける。
浄土宗(鎮西派)
誉号は五重相伝を受けた者に対して付けられる。戒名は院号、誉号または空号、道号、戒名、位号の順・院号、誉号または空号、戒名、位号の順・院号、道号、戒名、位号の順の3通りある。
浄土宗西山派
空号は五重相伝を受けた者に対して付けられる。戒名は院号、誉号または空号、道号、戒名、位号の順・院号、誉号または空号、戒名、位号の順・院号、道号、戒名、位号の順の3通りある。
臨済宗
「戒名」の名称を用いる。院号、道号、戒名、位号の順につけるが、院号を付けない場合が多い。足利将軍家はじめ室町以来の大名家の信徒も多く、その場合院号に院殿号を用いる。院号の代わりに軒号を使用する場合が多い。
浄土真宗
「法名」を用いる。「戒名」とは呼ばない。詳細は、「法名 (浄土真宗)」を参照のこと。
曹洞宗
「戒名」または「安名」の名称を用いる。院号、道号、戒名、位号の順につけるが、院号がない場合もある。院号・位号は諡名であり没後に付けるのが通常である。単に△△□□(道号・戒名)の4文字か□□(戒名)の2文字もしくはこれに位号の信士・信女(在家信者の意、禅を行じる信者として居士・大姉を付ける例もある)が付いたものが与えられる。地方の守護大名クラスの家に信者が多く、院殿号・寺殿号、院号・齋号・寺号が付与されることが多かった。またその有力家臣には院号・軒号を用いる例があった。これらは、寺院の建立や存続に多大な貢献をしていることへの寺院よりある意味礼として付けられ、一般庶民は豪商・豪農の例を除くと一般的ではなかった。庶民まで広まったのは、明治以降の寺院の困窮時期の篤志者や英霊に対して付与したことに始まる。現在は篤志者が賜る。僧侶の場合は、「道号、戒名」のように表されることが多く、大和尚・和尚(力生)、首座(座元)、上座はなど位階と呼ばれるものは自らは名乗らない。示寂以降に住職ならば「○○寺○○世△△□□大和尚」(住職寺院では○○寺ではなく當山または當寺と呼び換える)、その他の場合は道号戒名に各位階が諡られる形を取る(稀に、高和尚という諡号が諡られることがある)。ちなみに、寺族(曹洞宗の場合は、住職の夫人ないしは未亡人のみを通常指す)の場合は、一般の戒名の法則とほぼ同様となるが、通常は、最後の位号の部分が「禪尼(あるいは常用字体の禅尼)」となる。
時宗
古くは「阿弥陀仏」号を付けた。観阿弥世阿弥はその崩れである。現在では男性にその略である「阿」号、女性には「弌」(いち)号をつけるのが原則である。阿弥陀仏号は重源が「南無阿弥陀仏」と自称したことを起源とし、成仏したことを意味する。女性も当初は阿弥陀仏号であったが、一遍は「一房」号や「仏房」号を与えた。「一仏乗」からとったという。弌号はその名残りである。
日蓮宗
日蓮宗系では、法華経信者は霊鷲山浄土に生まれるとされるため、「戒名」ではなく「法号」と呼ぶ。男性へは「法」号、女性には「妙」号などが使われる。日蓮正宗では、「法号」という言い方も「戒名」という言い方もされている。
苗字+戒名の名乗り
伝来から中世まで

もともと、日本中世では、出家者は俗世を捨てたので、俗姓を名乗らず、中国やインドでの先例に倣って、(「釈氏」を省略して)戒名のみを名乗ることが多かった。

例えば、室町幕府6代将軍足利義教は、仏門に入っていたため「義円」という戒名を名乗っていた。その後、6代将軍就任にあたって還俗し、「足利義宣」(後に義教に改める)という俗名を名乗った。つまり、義教が足利姓を名乗ったのは、還俗した後、将軍職につく前のことになる。また、道鏡のことを「弓削道鏡」と呼ぶ事例があるが、これについても道鏡の死後に一般化した例ではないかという説が有力である。
戦国時代以降

しかし、戦国時代(室町時代後期)になると、武田信玄上杉謙信山名宗全大友宗麟など、出家しながら俗事に携わる人物が法皇以外で現れ、彼らは結果として苗字+戒名を名乗った。

なお、僧が武将化した場合は、安国寺恵瓊のように寺号+戒名か、または院号+戒名の呼び方で名乗るのが普通であった。これらの呼び方は、江戸時代に入ると、急速に廃れていった。
明治維新後

明治維新以降、平民でも苗字の使用が義務付けられると、僧侶も名字+戒名で戸籍の登録を行わなければならなくなり、村名を苗字にした場合(例:滝谷琢宗)や、仏教用語から苗字を付ける(例:普賢○○)、自身や宗祖の旧姓から付ける(例:久我環渓)ことが見受けられた。
日本の戒名の課題
差別戒名について

近世には、被差別部落出身者に対して、差別的な字句を含む戒名を与える風習が存在した。戒名中に「朴」(ト)「畜」「革」などを用いた。時には巧妙に畜の字を「玄」と「田」に分けたり、「革」を似た字の「草」にするなどの細工もなされており、部落解放同盟を中心に調査がなされている。しかし在日韓国・朝鮮人や通名で帰化した「朴」姓の人たちの中では現在も戒名で用いるケースも多く、差別戒名やその件数として取り扱われている調査自体に抗議の声もある。詳細は「差別戒名」を参照
布施(戒名料)の価格目安表示について

イオンが、イオンカード保有者向けの葬儀社紹介サービスにて「お布施の価格目安」を打ち出したところ、全日本仏教会が「お布施に定価はない。企業による宗教行為への介入だ」と反発。しかし、8宗派約600の寺院が協力した。

平成22年7月2日付『産経新聞』には「目安とはいっても、大企業が発表すればそれが『定価』として一人歩きしてしまう恐れがある」(日本テンプルヴァン(JT-VAN)社長の井上文夫)と懸念するコメントと、「消費者の立場からすれば、布施価格の明示はありがたいのではないか」(第一生命経済研究所主任研究員の小谷みどり)の肯定的なコメントの双方を掲載している[5][6][7]

なお、戒名授与に対するお布施と、通夜や葬送儀礼の法要施行に対するお布施(導師供養料)は一緒に納めることが多いが、本来はそれぞれ別に納めるものである。施行時期が近いことと当日の手間の都合上一緒に納めるため、結果として高く感じられるケースはある。同日に納めた場合、相続税の控除対象となる。
脚注[脚注の使い方]
注釈・出典^ 国立国会図書館件名標目表 「法名」・同義語 - NDLSH
^ 飯倉晴武:著、青春出版社「日本人のしきたり正月行事、豆まき、大安吉日、厄年...に込められた知恵と心(青春新書INTELLIGENCE)」155ページ
^ “大谷派門徒:父の戦死、美化させない 「院号」返上 軍神扱い、苦い記憶”. 毎日新聞 (2018年8月17日). 2022年11月9日閲覧。
^ “法名・戒名”. 真宗大谷派 宗玄寺 (2021年10月21日). 2022年11月9日閲覧。
^ 「宗教介入だ」仏教界困った イオンの葬儀サービスが「お布施」に目安 (1/2ページ) - MSN産経ニュース Archived 2010年11月7日, at the Wayback Machine. - 産経新聞 2010年7月2日
^ 「葬儀に料金透明化の動き イオンがひつぎ代など明文化 (1/2ページ) - MSN産経ニュース - 産経新聞 2010年1月24日
^ “ ⇒産経新聞にコメントが掲載されました。 JT-VAN新着情報-2010年-”. 日本テンプルヴァン. 2010年7月5日閲覧。

参考文献

『戒名・法名・神号・洗礼名大事典』鎌倉新書、
1981年2月

原勝文『ものがたり戒名』琵琶書房、1984年7月

小林大二『差別戒名の歴史』雄山閣1987年7月

『わかりやすい仏教用語辞典』大法輪閣1998年5月

島田裕巳『戒名、なぜ死後に名前を変えるのか』法蔵館、2005年11月(増補新版)

外部リンク

全日本冠婚葬祭互助協会>戒名をいただくときは










人名
総論

氏名

名字





本姓

カバネ

姓氏

ミドルネーム

父称

家名


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:42 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef