懲戒処分
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また、公務員等の懲戒免除等に関する法律に基づく免除の発動により、懲戒処分が免除されることがある。
公平審査

懲戒処分の変更または取消を求めるには、一般職国家公務員なら人事院(担当:公平審査局)に審査請求を行う[注釈 3]。一般国家公務員の懲戒処分に対する審査請求は、人事院に対してのみ行うことができる[11]。ただし特例として外務職員が外交機密の漏えいによつて国家の重大な利益を毀損したという理由で懲戒処分を受けた場合は、審査請求は外務大臣に対して行う[12]。この場合外務人事審議会の調査を経て外務大臣の採決がされる[13]

特別職国家公務員である自衛隊員の懲戒処分の審査請求は、防衛大臣に対して行う[注釈 4]。この審査請求の裁決は、裁決は防衛人事審議会の議決を経る必要がある[14]

地方公務員であれば人事委員会又は公平委員会に対して、審査請求を行う。

審査請求に対する裁決に不服がある場合は、裁判所に出訴することができるが、審査請求を行わずに裁判への出訴はできない[15]

人事院公平審査は裁判ではないが、被処分者がいわば原告となり、処分者が被告、公平委員[注釈 5]が裁判官の形式で審査が行われる。傍聴できる公開審査もあるが非公開審査にもできる。代理人を立てることもできるが、裁判同様に弁護士もよいが、裁判とは違うために被処分者が指定した代理人でも構わない。また被処分者、処分者ともに証人を招致することができる。被処分者側から、処分者側の証人出席を求めることもできるが、必要かどうかは公平委員の裁量による。審理は書面(甲が被処分者、乙が処分者)を用意して証拠書類とする。その書面に沿って公平委員が尋問したり、被処分者が処分者または処分者側証人を尋問する。審査は1日ないし2日で行われ、人事院から決定が出されるのに6か月ないし1年ほどかかる。
裁量権と司法審査

前述のとおり、非違行為のあった職員に対していかなる懲戒処分を行うかは任命権者の裁量に委ねられているところであるが、前述の不服申立て後に裁判所に出訴した場合、任命権者の裁量権(行政裁量)に対して司法審査(合法・違法の審査)がどの程度及ぶかが問題となる。このことについて、争議行為禁止規定違反等を理由として、税関職員で組合幹部である3名を国家公務員法第82条1号・同3号に基づき懲戒免職としたことに対して、同3名からなされた当該処分の無効確認及び取消訴訟に対する判決[16]において、最高裁は次のように説示し、「処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を乱用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき」とした。

「懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられるのであるが、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、都下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより、右の裁量は、恣意にわたることを得ないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。」
司法警察職員に対する懲戒手続の特例

検事総長、検事長または検事正は、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示または指揮に従わない場合において必要と認めるときは、その者を懲戒しまたは罷免する権限を有する者(警察官であれば公安委員会など)に、それぞれ懲戒または罷免の訴追をすることができ、当該訴追を受理した者は、前項の訴追が理由のあるものと認めるときは、別に法律の定めるところにより、訴追を受けた者を懲戒しまたは罷免しなければならない。
士業に対する懲戒処分

士業には、それぞれの根拠法に基づきそれぞれの懲戒権者による懲戒が規定されている。

また、第三者が懲戒手続の開始を申し立てることができるとされていることが多く、このような申立てを懲戒請求という。司法書士行政書士等一部の士業に対する懲戒請求は、根拠法が「措置をとることを求める」と規定しているため「措置請求」と呼ばれることもある(例として、新潟県行政書士及び行政書士法人の措置請求事務取扱要綱第2条第1項[17])。
弁護士の懲戒処分
弁護士
詳細は「
弁護士の懲戒処分」を参照
外国法事務弁護士
詳細は「外国法事務弁護士#外国法事務弁護士の懲戒」を参照
税理士の懲戒処分詳細は「税理士#税理士の懲戒処分」を参照
司法書士の懲戒処分
司法書士法上の懲戒処分
懲戒事由

司法書士が司法書士法または同法に基づく命令に違反したこと(司法書士法第47条柱書)。
懲戒処分の種類


戒告

二年以内の業務の停止

業務の禁止

懲戒請求(措置請求)

何人も、司法書士または司法書士法人に、司法書士法または同法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、法務大臣に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる(司法書士法第49条第1項)。
所属司法書士会による懲戒処分

各司法書士が所属する単位司法書士会においても内規による懲戒処分が規定されている。その懲戒事由および懲戒の種類は各単位会に委ねられている[18]
行政書士の懲戒処分
行政書士法上の懲戒処分
懲戒事由

行政書士法、同法に基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したときまたは行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったこと(行政書士法第14条柱書)。
懲戒処分の種類


戒告

二年以内の業務の停止

業務の禁止

懲戒請求(措置請求)

何人も、行政書士または行政書士法人について懲戒事由があると思料するときは、当該行政書士又は当該行政書士法人の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる(行政書士法第14条の3第1項)。
所属行政書士会による懲戒処分

各行政書士が所属する単位行政書士会においても内規による懲戒処分が規定されている。その懲戒事由および懲戒の種類は各単位会に委ねられている[18]
裁判所における懲戒処分「司法行政権」、「裁判官#分限制度」、「裁判所法」、および「裁判所書記官」を参照
船舶における懲戒処分

船員(船員法第1条に規定する船員)には労働基準法が適用されず(労働基準法第116条)、別途船員法によって船員に対する懲戒が定められている。

海員(船長以外の乗組員)は以下の事項を守らなければならず(船員法第21条)、船長は、海員がこれらの事項を守らないときは、これを懲戒することができる(船員法第22条)。
上長の職務上の命令に従うこと。

職務を怠り、又は他の乗組員の職務を妨げないこと。

船長の指定する時までに船舶に乗り込むこと。

船長の許可なく船舶を去らないこと。

船長の許可なく救命艇その他の重要な属具を使用しないこと。

船内の食料又は淡水を濫費しないこと。

船長の許可なく電気若しくは火気を使用し、又は禁止された場所で喫煙しないこと。

船長の許可なく日用品以外の物品を船内に持ち込み、又は船内から持ち出さないこと。

船内において争闘、乱酔その他粗暴の行為をしないこと。

その他船内の秩序を乱すようなことをしないこと。

船長が科すことができる懲戒の範囲は次のとおりである(船員法第23条)。ただし、海員を懲戒しようとするときは、3人以上の海員を立ち会わせて本人及び関係人を取り調べた上、立会人の意見を聴かなければならない(船員法第24条)。

10日間以内の上陸禁止(停泊日数のみを算入)

戒告

学校における懲戒処分

校則に違反した者に対して行われる懲戒処分については、学校・設置者によって異なるが、主に次のようなものがある。

退学・放学(除名) - 退学処分の場合その学校は「中途退学(中退)」となるが、放学(除名)処分の場合はその学校に在学していたこと自体が抹消され、復学が認められなくなるばかりか、正式な学歴としても認められなくなる措置も存在する。

退学勧告 - 問題行動を起こした生徒・学生に対して、自主退学を促すものである。

停学 - 期限に設定の無い無期停学と期限に設定のある有期停学がある。無期停学では本人の反省の状況により解除され、有期停学は本人の姿勢に関係なく期間の満了をもって解除される。よって、無期停学であっても有期停学のそれより短期であることもあり得る。

訓告

謹慎 - 停学に準じる処分であるが、最近では生徒指導室や図書室、会議室等の別室で勉強する「学校謹慎」もある。

特別指導 - 校長や学長・総長に呼び出され説諭される譴責もこの一つ(こちらは公務員の譴責と若干違う)。

懲戒のうち、退学、停学、訓告の処分は校長(大学においては学長の委任を受けた学部長を含む)が行うとされている。


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