憲法
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また、立憲的憲法は性質面では一般に法律よりも改正が難しい硬性憲法となっている[29]。憲法は権力(特に立法権)を法的に制限することによって不可侵で不可譲の自由を保障する普遍的な実質的価値を内在するものだからである[29]。ただし、フランスの憲法思想ではフランス人権宣言6条が「法は一般意思の表明である」という考え方が強く憲法と法律との区別は徹底されてはいなかった[30]。これに対しアメリカの憲法思想は独立時にイギリス議会や州議会による不当な権利・自由に対する制限への反発が強く、立法権への不信から立法権は制限されるべきと考えられ、憲法と法律との区別がフランスやドイツよりもはるかに明確に現れることとなった[31]

近代憲法の多くは人権規定と統治機構の両面で構成される。人権規定については、その後、環境権プライバシー知る権利など、新しく生まれた概念が盛り込まれた憲法も多い[26]
最高法規性と国法秩序
形式的最高法規性

憲法が国法秩序の段階構造で最も強い形式的効力をもつ規範であることは通常の法律改正よりも難しい憲法改正手続きが要求される硬性憲法のもとでは当然のことである[32]。そこで憲法の最高法規たる本質は憲法が実質的に法律とは異なる点に求める必要があり、それが次の実質的最高法規性である[32]
実質的最高法規性

憲法の最高法規性の実質的根拠は、憲法が自由の基礎法として、人間の権利・自由をあらゆる国家権力から不可侵なものとして保障するという理念に基づきその価値を規範化したものという点にある[33]

憲法の実質的最高法規性を重視する立場では、人権体系を憲法の根本規範と解し、憲法規範には価値序列があることを認める[34]。「堅固に保護された条項」も参照

なお、一部のイスラム教国ではイスラム教の教典であるクルアーンが憲法と位置づけられている。1992年3月のサウジアラビアでは統治基本規則第1条で「憲法はクルアーンおよびスンナとする」と定められており、イスラム教の教典が不文憲法となっている国である。このため、いかなる手続きをもってしても、絶対に憲法を改正することはできない。「シャリーア」も参照
法律との関連

多くの近代国家では法律は憲法の規定を満たす範囲で公布されるため、初等的な法学の教書では「憲法は法律の法律である」等と説明される。より一般的には上述したような歴史的経緯などから、多くの国では、憲法は「国民が国家に守らせる法」であり、法律は「国家が国民に守らせる法」であると捉えられている。このような解釈により、国民主権の国では必然的に憲法は法律よりも優先される法となるため、結果的に法律は憲法に基づくことが必要となる[35][36]。「立憲主義」も参照
著名な憲法学者日本の著名な憲法学者については「日本の法学者一覧#憲法」を参照「Category:憲法学者」も参照

ゲオルグ・イェリネック(ドイツ)

ハンス・ケルゼン(オーストリア)

カール・シュミット(ドイツ)

ルドルフ・スメント(ドイツ)

コンラート・ヘッセ(ドイツ)

パウル・ラーバント(ドイツ語版)

パウル・キルヒホフ(ドイツ語版)

ディーター・グリム(ドイツ語版)

エルンスト=ヴォルフガング・ベッケンフェルデ(ドイツ)

ローレンツ・フォン・シュタイン(ドイツ)

クラウス・シュテルン(ドイツ)

フィリス・シュラフリー(アメリカ)

アルバート・ヴェン・ダイシー(イギリス)

ホルスト・エームケ(ドイツ)

アデマール・エスマン(フランス)

レオン・デュギー(フランス)

クリストフ・メラース(ドイツ)

エルンスト・フォルストホフ(ドイツ)

フーゴー・プロイス(ドイツ)

ヘルマン・ヘラー(ドイツ)

レイモン・カレ・ド・マルベール(フランス)

脚注[脚注の使い方]
注釈^ このように元来、日本にはこれに相当する「国家の基本法」という概念がなかった。穂積陳重の『法窓夜話』によれば、憲法という日本語は、伝統的には単に「法律」の同義語か「厳しい法(いつくしきのり)」「道理」という意味でしかなかった。1873年明治6年)に、箕作麟祥がフランス語の「Constitution」に「憲法」なる訳語を当てたのが始まりという。その後も「国憲」など別の訳語が当てられるときもあったが、明治17年になって伊藤博文が大日本帝国憲法の編纂に着手した際に「憲法」という語彙が確定したという。なお、1874年(明治7年)には地方の政治に関して「議院憲法」という名称の詔勅が出ている[6]
^ 十七条憲法は、成立時期などについて議論がある。詳細は十七条憲法を参照
^ 小森義峯は以下のように述べ、十七条憲法は「実質的意味の憲法」かつ「固有の意味の憲法」としている[7]

立憲政体ではないが、公務員)が遵守すべき規範を成文で定めていることから国家の根幹法たる性格を有するとして、マグナ・カルタが成文憲法であるのと同じような意味で成文憲法といえる。

日本法制史を研究した牧健二の論文を引用し、牧も十七条憲法が国家統治の根本を定めることを主目的としていたことから成文憲法と見ていたとする。


出典^ デジタル大辞泉「憲法」
^ a b c d 佐藤幸治『憲法』青林書院 16?17頁
^ 芦部信喜『憲法学』 I 憲法総論、有斐閣、1992年、40頁。 
^ 衆議院会議録情報 第183回国会メモ
^ a b c 芦部信喜『憲法学』 I 憲法総論、有斐閣、1992年、2頁。 
^ 板垣退助 監修『自由党史(上)』遠山茂樹、佐藤誠朗 校訂、岩波書店(岩波文庫)1992年、148?149頁
^ 小森義峯「十七条憲法の憲法学的重要性について」『憲法論叢』第1号、関西法政治研究会、1-11頁、1994年4月15日。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}NAID 110002283598。


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