感染症の歴史
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平安時代の日記や記録にはマラリアの流行が幾度も記載されており、敦良親王藤原頼通はマラリア感染者であったと考えられる[27][30]。当時の王侯貴族は多くの場合、加持祈祷によって病気平癒を願った[27]蚊帳

アメリカ大陸には、大航海時代以降、旧大陸各地から持ち込まれた[28]。アメリカ合衆国では18世紀から20世紀にかけて、多い年には10万にも感染者があらわれた[28]。とくに首都のワシントンD.C.は元来沼沢地であったためにマラリア蚊が蔓延し、ジョージ・ワシントンエイブラハム・リンカーンユリシーズ・グラントといった大統領職にあった政治家も感染を経験している[28]

ロシア革命後の1923年、マラリアはウラル山脈より西側のヨーロッパ・ロシアの地域で流行し、約300万人が感染したといわれる[28]。また、第二次世界大戦中に沖縄県、とくに八重山諸島で発生した集団罹患は、特に「戦争マラリア」と呼ばれる[29]。ここでは、急ごしらえの簡素な小屋で多数の人びとが共同生活を余儀なくされたことから、およそ1万7000人が感染し、死者は約3000人におよんだ[29]

アフリカにおいては、現在、エイズ、結核と並ぶ3大感染症のひとつであり、視覚や聴覚を失うなどの後遺症で悩む人も少なくない。その感染者は毎年3.5億人から5億人にかけてと推測され、アフリカでは子どもの主要な死因のひとつになっている。2008年3月にマスメディアに流れた情報によると、ケニアウガンダタンザニアにまたがるアフリカ大陸最大の湖ヴィクトリア湖は、年々水位が下がっており、係留していたと思われるボートが陸に上がってしまったり、湖岸であった箇所には幅10メートルないし20メートルの草地が続いていたという。NASAなどの衛星観測データは、ヴィクトリア湖の水位がピークの1998年にくらべ1.5メートルも低下しており、1990年代の平均と比べても約50センチメートル低くなっていると伝えている。その原因としては、降雨量の減少と下流にあるダムへの過剰な流出が考えられている[31]。干上がりかけた水たまりにハマダラカのボウフラ(カの幼虫)が泳ぐなど蚊の繁殖に好適な水域が広がり、従来はマラリアが非流行地だったケニア西部の高地にも多発する傾向が顕著となっている[31]。また、地球温暖化の影響でハマダラカが越冬できる地域が広がったことにより、感染地域が広がる危険性についても指摘されている。日本もマラリア対策に協力しているが、そのひとつに伝統的な蚊帳づくりがある。
細菌性感染症の流行
ペスト

14世紀以降の主な流行年代場所推定死者数
1347?51欧州・アジア・中東2500万?7500万
1360?63イギリス700,000?800,000
1464?66パリ40,000
1471イギリス300,000?400,000
1479?80イギリス400,000?500,000
1576?77ヴェネツィア50,000
1596?99スペイン・カスティリア地方500,000
1603?11ロンドン43,000
1620?21アルジェリア30,000?50,000
1628?31フランス1,000,000
1629?31イタリア280,000
1647?52スペイン南部500,000
1654?55ロシア700,000
1656?57ナポリ・ローマ150,000
1665?66ロンドン70,000?100,000
1675?76マルタ11,300
1679?80オーストリア76,000
1681プラハ83,000
1689?90バグダッド150,000
1704?10ポーランド75,000
1709?13バルト海沿岸300,000?400,000
1720年代マルセイユ100,000
1738?40ハンガリーなど50,000
1770年代モスクワ75,000
1772バグダッド70,000
1791エジプト300,000
1813?14マルタ4,500
1829?35バグダッド12,000
詳細は「
ペストの歴史」を参照

ペストは、ペスト菌の感染によって引き起こされる重篤な感染症である[32]。ペスト菌は、日光や乾燥・熱には弱いが寒冷や湿潤に強い特性を持ち、したがって動物体内で乾燥を受けなければ長期間の生存が可能で、穀類・獣乳・用水などでも棲息する[32]。ペストは元来ネズミなど齧歯類の感染症であるため、一般的には、ヒトが感染する以前にネズミの集団のなかで流行がみられる[32]。齧歯類の個体相互にペスト菌を媒介するのはノミであるが、多数のペスト菌を保持したノミがヒトの皮膚を刺し、やがてヒト相互のあいだでノミが菌を伝播させる[32]腺ペストの流行はこのように発生し、ノミの多い夏季に多く発生する[32]。しかし、腺ペスト患者が敗血症や肺炎に罹り、喀痰のなかにペスト菌が確認されるに至ると、飛沫感染によって直接的に、また、排泄物や衣類等日用品によって間接的に、急速な感染拡大がうまれる[32]。これが肺ペストであり、冬にも多く発生する[32]。そして、ネズミの移動とともに感染も各地に広がる[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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