@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}イギリス法では被告が原告に「神の証明」(probatio divina)を要求することを「悪魔の証明」として表現することもあった[要出典]。 権利の存在を推定する規定、いわゆる「法律上の権利推定」の場合、権利の不存在を否定するためには、あらゆる原因による権利の発生原因たる事実が不存在であること、発生した権利が消滅した場合であっても、その後さらにあらゆる原因による権利の発生原因事実が発生していないことを証明しなければならないことになり、権利推定に対する反対の証明について 「悪魔の証明」という[5]。 民事訴訟法における推定には事実上の推定と、法律上の推定があるが、このうち法律上の推定とは、ある事実の証明に関して、証明が容易な別個の事実の証明がなされたときに事実が証明されたと認めるべき場合のことである[6]。そして権利の推定に関して、権利推定に対する反証が困難な様子を「悪魔の証明」とする[7][8][9]。 不動産登記に関して、民法では占有の推定力よりも登記の推定力が優先されるが、この登記の推定力が法律上の推定である場合、推定を覆すには相手方は本証を要し、事実上の推定である場合は、事実の不存在を証明するという反証によって推定を覆すことができる[6]。しかし、過去の権利状態を捨象した現在の権利状態のみが推定されるとされる場合に、相手方が推定を覆すためには、現在にいたるまでいかなる権利取得原因事実も存在しないことを立証せねばならなくなり、仮にある権利消滅原因事実を立証しても、権利喪失後ふたたび権利取得するいかなる原因事実の不存在を証明せねばならなくなり、推定を覆すことが不可能に近くなり、これをいわゆる「悪魔の証明」と呼ぶ[7]。なお、日本の民法学では登記に対して、「悪魔の証明」のような要求をすることになる法律上の権利推定でなく、単に事実上の推定がはたらくにすぎないとする学説もあるが、この学説が適当か考慮を要するとする指摘もある[7]。 物権法の分野でも立証の困難という意味で使われている[10]。 「ないことの証明」を、「悪魔の証明」とする使われ方もある[11]。また、証明が困難でないことを『「悪魔の証明」には当たらない』と反論で使うこともある[12]。 なお、欧米でも同様の用法が存在する[13][14]。 消極的事実の証明に関連する法諺として、「否定する者には、立証責任はない」がある[15]。 パウルスは「主張する者は証明を要し、否定する者は要しない」とした[15]。ディオクレティヌスとマクシミアヌスは「事実を否認する者には、立証義務はない」とした[15]。現在では、法律要件分類説が通説となっている[15]。 悪魔の証明は証明不可能な事態を指し、単に証明困難な事態を指すのではない[2]。「ない」という消極的事実の証明を求めることは証明不可能で悪魔の証明になるが、「ある」という積極的事実の証明を求めることは単に証明困難なだけで悪魔の証明にならない[2]。
法律上の権利推定における反証の困難
消極的事実の証明「消極的事実の証明」も参照
関連する諺
悪魔の証明の誤用「ヘンペルのカラス」および「消極的事実の証明」も参照
脚注[脚注の使い方]^ 田中整爾『占有論の研究』 有斐閣 (1975)p84.ゲオルク・クリンゲンベルク『ローマ物権法講義』(瀧澤栄治訳)2007年、大学教育出版、p.77.藤原弘道「占有正権原の立証と占有の推定力」判例タイムズ 18巻5号, pp64-68, 1967年3月、判例タイムズ社
^ a b c d e f g h i j k l m 七戸克彦「所有権証明の困難性(いわゆる「悪魔の証明」について) : 所有権保護をめぐる実体法と訴訟法の交錯
^ 司法研修所編『新問題研究 要件事実』60頁(法曹会)
^ 川島武宜『新版 所有権法の理論』127頁
^ 伊藤眞『民事訴訟法 第4版』361-362頁
^ a b 神田孝夫「登記の推定力について」北大法学論集20(1)、1969年,p89-90.
^ a b c 神田孝夫「登記の推定力について」北大法学論集20(1)、1969年,p98.
^ 兼子一「推定の本質及び効果について」法学協会雑誌・55・12・1)p33、1937年
^ 伊藤眞『民事訴訟法』第2版,p315、2002年
^ 舟橋諄一『物権法』275頁
^ 並木茂「証明責任の分配についての二,三の試論」司法研修所論集63・48,昭和54年、p54.
^ 松本博之『証明責任の分配』(平成8年)p408,並木茂『要件事実原論』悠々社2003年、p179.
^ Barendrecht, J.M., et al. Service contracts. Principles of European law / Study Group on a European Civil Code, 1860-0905,2007,p752.
^ Donahue, Charles, Jr. "Medieval and early modern lex mercatoria: an attempt at the probatio diabolica." Chicago Journal of International Law 5.1 2004年, P27
^ a b c d 吉原達也、西山敏夫、松嶋隆弘『リーガル・マキシム: 現代に生きる法の名言・格言』p264-265
参考文献
伊藤眞『民事訴訟法』第2版、有斐閣、2002年
神田孝夫「登記の推定力について」北大法学論集20(1)、1969年
七戸克彦「所有権証明の困難性(いわゆる「悪魔の証明」について) : 所有権保護をめぐる実体法と訴訟法の交錯