恒星船
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光速に限りなく近い亜光速航行ですら数年の歳月を要する事を考えれば、その間乗員が快適に生活出来る方法を考えなければ、恒星間航行は不可能である。
冷凍・冬眠

人間を恒星船に乗せて飛ばす場合、その人間の扱いに関して様々な方法がある。現在の科学で、比較的実現へのハードルが低いとされているのは、人体を冷凍し、限りなく無人恒星船に近付けて打ち上げる方法である。この方法は冬眠船とも呼ばれる。

これには倫理的な問題もさる事ながら、安全性の確保に問題がある。たとえ冷凍したとしても、宇宙空間の素粒子放射線は無遠慮に宇宙船を貫通して行き、衝突の際にはエネルギーを発生させる。この過程で凍結された人体は部分解凍と再凍結を繰り返し、また衝突した時のエネルギーは有機分子を変性させる可能性もあるため、人体を構成する分子構造が破壊される危険性がある。生命活動を行っている状態なら、少々の破壊は自己治癒するが、凍結されている場合は破壊される一方であるため、この問題はより顕著となる。

そのため、できるだけ短い期間で目的地に到着させることで被曝量を減らすか、何らかのシールドで凍結した人体を確実に保護する必要があるが、化学ロケットでは速度に問題があり、より技術的な進歩を待たなければならない。

また凍結に至らず一定温度に冷却しながら人工的な冬眠状態=コールドスリープによって代謝量を極端に下げ老化を防ぎ寿命を延長しようというアプローチも存在する。2010年代において短期間であれば実用化の目途も立っている[要出典]。ただしこちらは人間の生存に必要な資源を必要最小限にしようというアプローチであり、冬眠中は緩やかであるにせよ代謝を行っているので無制限に寿命を延長できるわけでもない。そのため、恒星間航行に適用するためにはより強力な推進機関の開発も必要となっている。
遺伝子搬船

断絶への航海』や『遥かなる地球の歌』、『2001夜物語』、『ビブリオテーク・リヴ』等で言及されており、方法論的には2種類が想定され、活動している人間がいない点が冷凍方式と共通する。

遺伝子データのみを搬送し必要時にのみ有機体として再生する方法。

凍結精子及び卵もしくは凍結受精卵を搬送し、想定される目的地到着期間を前倒しで解凍受精させる方法。

しかし、冬眠船と同様の倫理上の問題、宇宙船外的素粒子による被爆問題以上に、有機化技術、凍結解除(受精)後もしくは有機化再生後に使用する教育用AIの開発もしくは、遺伝子データを採取した人物のオリジナルの記憶を複製する技術、宇宙船のアクシデントを自動対処する修復システムの構築など技術的に克服しなければならない問題が多い。
世代交代

凍結なら単世代で他の恒星系へ移動可能となる訳だが、これとは別のアプローチとして、種族として低速恒星船に乗り込み、世代交代を繰り返しながら他の恒星系に到達する方法がある。この方法は世代宇宙船とも呼ばれる。

SF作品としては、ロバート・A・ハインラインSF小説『宇宙の孤児』に登場している。またアイザック・アシモフの『ネメシス』には「宇宙コロニーとして既に機能していた宇宙国家そのものを他恒星系に飛ばす」というアイデアが登場しているが、こちらは超光速航法で1世代未満にて架空の太陽系近隣恒星系に到達しているため、世代宇宙船ではない。

これは航行期間にもよるが、到達時に目的を果たせる乗員が存在している必要性から、近親交配に陥らずに種族を維持できるのに十分な人数や、それらを教育出来る機能、更にはそれらの人員が生活できるだけの食糧や水・酸素を生産・消費可能なリサイクルを続けるために、循環する生物的な環境が必須となる。また居住スペースは人体活動を維持できる十分な重力がある必要がある。これらの必然性から、遠心力で擬似的な重力を作るためにも、宇宙コロニー程度の居住スペースや食糧生産能力が必要になり、以下の諸問題が考えられる。

人員の数がスペースコロニー程度になるため、完全に孤立した社会の規模も小規模な都市国家程度となることが予測される。この場合は、独力で航行する以上、政治経済も独自の形態を維持する必要があると考えることができる。「宇宙の孤児」では、遥かな昔に船内で大規模な暴動が発生、船の運航に必要な人員を教育できなくなり、文明は技術を含め急激に後退、中世さながらの後退した社会で、独自の文化・価値観が迷信となって混乱を招いている様が描写されている。「ネメシス」では、強烈なカリスマ性を持つ指導者が人心を束ねる様子が描かれており、世代宇宙船では無いものの、開拓に十分な人員をもっていることから、到着後にすぐさま恒星系宇宙域の開発を行っている。


非常に巨大な居住スペースを持つ宇宙船を必要とするため、それを駆動する強力なエンジンも必要となり、更にはそのエンジンを働かせるための十分な動力源を必要とする。こうなると、化学ロケットのようなエンジンでは航続距離が足りなくなるため、原子力ロケット核融合ロケットなどの、継続的かつ強力な推進が可能なロケットエンジンの開発が不可欠になる。

人体改造

遺伝子工学サイボーグ技術の発展に伴いSFにて用いられるようになったアプローチ。惑星内で生きることを前提とした人類をそのまま恒星船で送り出すのではなく、遺伝子レベルでの人体改造や機械による身体機能の補助や強化を行い、宇宙環境での長期航海に適応した形にすることで、宇宙船に必要な要求スペックをいくらか下げることが出来るとされている。現状では技術的ハードルが高く、倫理的問題もありSFの域を出ない。この種の話題を扱った先駆的な作品としては、幾世代にも及ぶ婚姻関係で長寿を獲得した一族(長命種)がそれ以外の人類(短命種)との対立を回避するために恒星船に乗り込む『メトセラの子ら』(ロバート・A・ハインライン1941-1958発表)がある。


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