恒星船
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この種の話題を扱った先駆的な作品としては、幾世代にも及ぶ婚姻関係で長寿を獲得した一族(長命種)がそれ以外の人類(短命種)との対立を回避するために恒星船に乗り込む『メトセラの子ら』(ロバート・A・ハインライン1941-1958発表)がある。
亜光速恒星船

仮に年単位で1Gの加速が可能な宇宙船が存在したならば、その恒星船の速度はSFでは亜光速と言われる速度に達し、目的地への到着時間を短縮できる。また、相対論による時間の遅れにより船内の時間は遅く流れるので、光速で100年かかる距離であっても、船内時間で1年で目的地に到達することも理論上は可能である。しかし船外の時間は100年以上経っているため、出発地に残してきた家族や友人と生きて再会することはできない。

加速を続ける方法に関しては、様々な可能性が示唆されている。
バザード・ラムジェットバサード・ラムジェットを利用した宇宙船(想像図)

宇宙空間には1 m3当たり数個程度の水素分子があり、これ以外にも様々な塵や破片が存在するなど、完全な真空では無いため、空間中に散在している水素分子を主とする星間物質を強力な磁場によってかき集めて燃料(推進剤)にする、という、バサード・ラムジェット(en:Bussard ramjet、恒星間ラムジェットとも)が提唱されている。ラムジェットエンジンが、空気との相対速度によって作動することになぞらえている。理論上、作動させられる速度までの加速に必要な燃料があれば作動原理上燃料は十分である。

ラムスクープと呼ばれる収集用の磁場を発生させる枠は、水素分子だけを捉え質量の大きな微小天体は素通りさせてしまうザルのようなものが想定されていて、宇宙船本体はザルの中心にぶら下がる構造となる。

このシステムの問題は星間物質を集めるための磁場の直径が惑星なみの大きさになる事、ラムスクープを形成するためのエネルギー、そして磁場が船内の機器や人体に与える影響である。星間水素密度が見積もりより遥かに薄く、1970年代には現実的に不可能であることがわかっている。
レーザー推進「レーザー推進」も参照
マグネティックセイル

バサード・ラムジェットに関連した考えとして、加速と同規模のエネルギーを必要とする"減速"のため、同様に巨大な磁場を展開して、星間物質の抵抗を宇宙船のブレーキとして利用しようというアイデアも提案されている。
重力加速

既存の天体の引力を利用して船の運動を変化させるスイングバイと呼ばれる方法を用いて、化学ロケットで得られるよりもはるかに早く加速する事が可能である。実際にこの方法を用いるためには、
適切な天体がスイングバイに利用できる位置に存在すること。

天体の運行を精密に予測でき、その予測の上に、スイングバイに用いるべき進路を正確に計算できること。

計算結果にしたがって正確に航行できること。

が必要となる。
超光速恒星船
超光速航法「超光速航法」を参照
亜空間航行・超空間跳躍

俗に言う「テレポーテーション」である。現代科学でも、物質ストリームによるテレポーテーション現象は確認されている。エンタングルメントという状態にある原子構造が、未解明の相互作用によって片方の変化がもう片方に影響する現象であり、人間がパッと消えてパッと現れるというものではなく、原子レベルで同じ構造体が変化を同じくするという現象である。この現象は生前のアルバート・アインシュタインが光子で確認し「spooky(オバケみたい)だ」と評したとされる。

これを非常に莫大な確率の問題を解決して行けば、やがては送受信関係にある転送装置間で原子レベルに分解・再構築する事も可能になるかも知れないが、同じ方法で宇宙船を何も無い遥か先の天体近くで再構成させるのは、確実に原子の流れをコントロール出来ない事には無理だと考えられる。

上記のような不確実な量子テレポーテーションが恒星間航行に使用されるとは考えにくく、一方の空間を操作する方法に至っては、数学的モデル上では亜空間や異次元は存在するものの、物理現象として空間の歪みや穴を発見した事例は無く、これらを移動に利用できるかは未知数である。

一般的にブラックホールホワイトホールワームホールはSFファンには馴染みがあるものだが、ブラックホールは物質を吸い込む際に素粒子レベルまで分解してしまうし、数学モデル上で存在が指摘されているホワイトホールにおいて分解された素粒子が再構築されて吐き出されるとは考えられていない。ワームホールも同様である。

このような航法では、時空間的な特異現象を利用するか、その特異現象を人工的に起こす必要があるが前者はそのような現象が起きている場所まで到達しなければならず、後者に至っては、天体が発生させるような超高エネルギーを必要とする。
恒星エンジン「:en:Stellar engine」を参照

恒星エンジンとは、「宇宙船を用いて人類が太陽系を脱出する」上記の方法とは全く異なり、「太陽系その物を移動させる」事により他の恒星系を目指すアイデアである。

具体的には、太陽が放出するエネルギーを利用して巨大な推進力を発生させ、太陽自体を天球上で移動させることにより、太陽系を構成する全ての惑星や小天体も太陽の重力に引かれる形で天球上を移動していくというもので、この方法を用いる場合、人類は地球に居住したまま他の恒星系を目指すことが可能となるため、一般的な恒星船が内包する乗組員の生命維持の問題はひとまず回避されることになる。

太陽系天の川銀河内を約2億3000万年という極めて長い時間を掛けて公転しているが、これ程長い時間軸になると、公転軌道上で超新星爆発やそれに伴うガンマ線バーストブラックホールなどの太陽系にとって破局的な事象や巨大天体と遭遇する可能性も予測される。


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