恋空
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社会学者宮台真司は自身のブログで本作品の映画版について、わざと短絡的につくった映画としか思えず年長者の自分からは理解できないとしたうえで、本作では時間の堆積が与える関係性が欠落し、そこには図書館で性交すれば妊娠して突き飛ばされれば流産する、というような脊髄反射だけが描かれており、単なる「死にオチ」の駄作では片づけられないとしている[8][9]。これに対して批評家の濱野智史は、この作品の登場人物は脊髄反射的な携帯電話への反応に追われて内面性を失っているため「限定されたリアル」しか描かれていないように思えるが、例えば「届いたメールが非通知かどうか」「送ったメールの返事がくるまでの時間はどれくらいか」といったような携帯電話の操作ログを追跡しその行動をとった背景を考えながら読めば(内面性の深さが読み取れるわけではないものの)無数の行間的表現がちりばめられていることが読み取れると指摘している。そして、作品に刻み込まれた無数のケータイの操作ログの集積が、ストーリーの水準ではなくケータイ利用のリテラシーの水準で「リアルさ」を保障しているのだとして、そのことをゲーム的リアリズム[注 2]をもじって「操作ログ的リアリズム」と呼んでいる[10][11]

文芸評論家の福嶋亮大は、前述の濱野智史の議論を受けて、携帯電話の着信に対する操作というリアルタイム性(正史)と、PHSというやや古いツールによる制約や「♪ピロリンピロリン♪」という着信音がかもし出すレトロな雰囲気(偽史)という二重性が『恋空』には存在するとし、それを「偽史的想像力」と呼んでいる[12]

書評家の豊崎由美は、「ケータイ小説」全般における「1年間ほどにおける少女の恋愛、性交、妊娠、中絶、不治の病」という特殊な詰め込み展開を「コンデンスライフ」と名付け、「この作品におけるガン知識の欠落」や「出版社の安易な書籍化」などに警鐘を鳴らしている[13]
支持者層と批判者層

インターネット上では、Amazonにおいて、本作品の商品紹介ページのカスタマーレビュー欄に、2ちゃんねるから誘導されたと思われるユーザーによる批判のレビューが殺到して炎上するという事態が発生した[14][15]。評論家の宇野常寛は、インターネット上でのバッシングの背景には文化的トライブの違いがあると指摘している[16]。つまり、『恋空』を支持しているのが10代から20代の活動的な女性なのに対し、ネット上でバッシングを行っている人の中にはそれと対照的なオタクの男性たちが目立ち、これらの集団は互いに相手側を軽蔑しあう関係にあるため、「ケータイ小説は敵の文化だから批判する」という側面も存在するのだとしている。また、『恋空』の物語自体はオタクの間で人気の高いセカイ系というジャンルと似ており、その代表例とされるライトノベル作品の『イリヤの空、UFOの夏』の男女を逆転させると『恋空』の構図になると述べている[17][18]
類似性の指摘

週刊文春」2007年12月20日号で盗作の疑惑が報じられた。井上香織の小説『さよならの向こう側』にストーリー、全体のプロットが類似していると指摘されている[19]

文学研究者の石原千秋は、問題にするほどでもないかもしれないとしながらも、本作と韓国ドラマ冬のソナタ』のストーリーの類似性を指摘している[20]
真実性

魔法のiらんどの編成部部長の草野亜紀夫は、著者の実体験だからこそ読者は共感でき、大ヒットしたのだと述べている[21]

しかし、例えば癌・妊娠に関する記述などについて現実にはありえないという指摘がある[22]本田透は、恋空の内容が客観的には実話ではないと判断せざるを得ないとしながらも、敬虔なクリスチャン聖書の内容を事実と信じるのと同じように、客観的な真理よりも救済を求める読者は物語を事実として受け止めるのだとしている[23]。また、速水健朗も、そういった真実性を批判の論点とするのは筋違いで、むしろそのような一般的には非現実的と思える設定にもかかわらず「事実である(事実を元にしている)」と宣言していることの意味を汲み取るべきだと述べている[22]

なお、作者の美嘉は、物語の終盤で主人公が授かる2人目の子供はすでに他界していると、書籍版のあとがきで述べている。
書籍情報
小説
スターツ出版単行本(旧版)


恋空〈上〉―切ナイ恋物語― 2006年10月17日発売、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-88381-045-3

恋空〈下〉―切ナイ恋物語― 2006年10月17日発売、ISBN 4-88381-046-1

君空 ―‘koizora’another story― 2007年10月1日発売、ISBN 978-4-88381-063-5

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