怪人二十面相
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後に怪人二十面相は『怪奇四十面相』で、世間で自分が「二十面相」と呼ばれる事に不満を表し、「私の顔はたった二十ではなく、少なくともその倍の四十は違った顔をもっている」として四十面相(しじゅうめんそう)と変名しているが、これは明らかに『四十面相のクリーク』の影響である。ただ、四十面相という名前があまり世間に浸透しなかったためか、明智にも「二十面相」と呼ばれるようになり、『塔上の奇術師』(代作では『ふしぎな人』)を最後に四十面相という表記がなくなり、二十面相に戻る。
来歴

シリーズ作品中、怪人二十面相の過去が書かれたものに『サーカスの怪人』がある。これによると二十面相の本名は「遠藤平吉」であり、元々は『グランド・サーカス団』というサーカス団の曲芸師であった。笠原太郎という曲芸師と二代目団長の座を争ったが争いに敗れ、『サーカスの怪人』時から15年前に、サーカス団を飛び出している。ただサーカスの怪人事件が連載時の1957年とすると、二十面相は戦前から活動しているのでつじつまがあわなくなる。

遠藤平吉がこの後どのような経緯で怪人二十面相になったのかについては触れられていない。しかし、小説『怪人二十面相』の冒頭では、彼はすでに「二人以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつをするように怪人『二十面相』のうわさを」し、「毎日毎日新聞記事をにぎわして」いる大怪盗になっていた。

『サーカスの怪人』時から3年前に警察に捕まった際に、笠原に自分が犯人であると証言されたことから、笠原の事を逆恨みするようになり、約1年もの年月をかけて準備し、『サーカスの怪人』で「グランド・サーカス事件」を引き起こすのである。
犯行目的

二十面相は「宝石だとか、美術品だとか、美しくてめずらしくて、非常に高価な品物を盗むばかりで、現金にはあまり興味を持たない」。現金は必要経費を稼ぎ出すため、部下ともども「くらしをたてるため」に盗むだけであり、二十面相曰く、本来の目的は「世界の美術品をあつめること」、その手段は「買いいれるのではなく、ぬすみとる」ことであり、「二十面相大美術館をつくるのが、おれの一生の目的だ」という(『電人M』)。

シリーズ中何回か、この美術館を完成しているが、いつも明智や少年探偵団によって暴かれ、収蔵品を奪い返されてしまう。このため、何度も自身のアジトを突き止め通報している少年探偵団の小林少年と、チンピラ別動隊のポケット小僧に深い恨みを持っている。本人は『おれは二十面相だ!!』で、「美術品を集めることは、けっしてあきらめない。明智先生と根くらべだ」と嘯いている。

三作目の『妖怪博士』以後、「自分を何度も辱めた明智小五郎への復讐」が犯罪動機の一つとなり、世間と少年探偵団を驚かす事を主目的とした愉快犯的な行動が多くなっていく。戦後作品では劇場型犯罪がエスカレートし、変装も青銅の魔人を皮切りに、夜光人間宇宙怪人電人M鉄人Qなど手の込んだ奇妙な人外の物が多くなった。
結末の描写

シリーズ中、物語の最後で二十面相は21回捕まり(『宇宙怪人』を含む)、19回脱獄している。『怪奇四十面相』では獄中にいる二十面相が脱獄する場面が描かれた。

その他の作品では、「生死不明」が『少年探偵団』、『青銅の魔人』、『宇宙怪人』、『鉄塔の怪人』(ポプラ社版『鉄塔王国の恐怖』)の4回。『宇宙怪人』のラストでは下項のように二十面相は「生死不明」として描かれているが、のちの『奇面城の恐怖』で、明智はこの際に「二十面相を逮捕した」と述べている。

『怪人二十面相』では、二十面相の偽者が捕まっており、替え玉を使っての脱獄は何度か見られた。また、「少年探偵シリーズ」では、怪人二十面相の「死」が何度か描かれている。しかしもちろん二十面相は本当に死んだわけではなく、死んだように見せかけてどこかに逃げたのである。『虎の牙』で明智は二十面相を「二度も三度も死んだ男だ。死んだと見せかけて、生きていた男だ」、「不死身の男だ」と評している。

『少年探偵団』では、アジトの床下にある小部屋で火薬の樽に火を放ち自爆した。しかしその際二十面相の死体は発見されなかった。次作『妖怪博士』で二十面相は復讐の為に、自ら「生きている二十面相」と名乗って明智と少年探偵団の前に再びその姿を現した。

青銅の魔人』では、二十面相の乗ったモーターボートが爆発し、着ていた青銅魔人の衣装ごと川に沈み行方不明となった。

『宇宙怪人』では、二十面相は潜航艇で逃げようとするが、明智に潜航艇の機械を壊されていた事を知ると、予め用意してあった爆弾で自爆した。

『鉄塔の怪人[注 3]』(ポプラ版『鉄塔王国の恐怖』)では、巨大カブトムシに扮した二十面相が塔の天辺から身を投げた。後述するように、このときは本当に死んだのかも知れない。

小道具、トリック
変装具
カツラやつけ髭、眼鏡など、様々な変装用小道具で、わずか3分ほどで他人の姿に化けてしまう。いつも化粧道具を入れた円いコンパクトを携帯しており、明智探偵に化けたことも多数あった。
拳銃
「人殺しは嫌い」ということで、玩具の拳銃を脅しに使う。細紐でこれを吊るし、カーテンの向こう側から銃口をのぞかせて、部屋内の人達を足止めさせるトリックを好んだ。稀に実銃を使うこともある。
絹紐の縄梯子
丈夫な黒い絹紐を縒り合せ、鉤と結び目をつけて梯子にしたもの。丸めてポケットに納められ、まったく同じ道具を明智や少年探偵団員(中学生限定)も使用している。
ブラック=マジック
小道具ではないが、二十面相はブラック=マジックを多用する。ブラック=マジックとは、暗がりを利用したマジックで、観客席をライトで照らすことで、舞台の暗さを引き立たせ、舞台で物体を黒い布で覆ったり、逆に布を取り除いたりする事で、物体を消失させたり出現させたりするトリック。二十面相はこのトリックでバラバラの骨を浮遊させて「骸骨男」、また黒い糸で物を吊り上げ、あたかも浮遊しているかのように見せた「透明人間の出現」を演出する。暗闇をバックに奇怪な顔を浮遊させるトリックも好んで使った。
マンホール
路上のマンホールに隠れることで、逃走や誘拐に使う。変装具を隠しておく場合もあり、公設のマンホールに見せかけて作った「私設マンホール」を使うこともある。
自動車
戦前はまだ珍しかった
自家用自動車を活用し、拉致連行などの悪事を働く。少年探偵団員が後部トランクに忍びこんでアジトに潜入するパターンも多かった。
義手
上着の袖に精巧な義手を縫い込んでいて、この義手に手錠をかけさせ、まんまと逃走した(『妖怪博士』)。『夜光人間』でもマントの下にビニール製の義手を二本ぶら下げ、それと知らずこれにしがみついたチンピラ別動隊を蹴散らして逃走している。
着ぐるみ
蝙蝠の怪人、巨大カブトムシ、妖星人R、黄金の虎、鉄の人魚、様々なロボットなど、部下ともども着ぐるみを被って化け物に扮し、世間を惑乱させる(多くの場合、二十面相/四十面相を名乗らず、最後に明智に正体を暴かれるまで、新たに作り上げたキャラクターに徹する)。二十面相はこの被り物のリアリティーに拘り、『鉄塔の怪人』(ポプラ社版『鉄塔王国の恐怖』)では巨大カブトムシに入って、汗びっしょりになりながら何度も部屋の壁を這い上って動き方の手本をみせたり、『海底の魔術師』ではわざわざ大蟹に入って断崖を這い降りたりしている。脱いだ後はコンパクトに折りたたんで隠せる仕様の着ぐるみも多かった。「青銅の魔人」など、着ぐるみと同じ形の伸縮自在の風船状のゴムの替え玉人形を用意しておき、高所から落として身代りとする逃走術もよく用いている。
ゴムの吸盤
西洋の手品師が使う、20cmほどのゴムの吸盤を手と膝に着けて、建物の外壁を這う。『虎の牙』で二十面相扮する「魔法博士」が洋館の外壁を逆さまに這い降りた。
プロペラ
『宇宙怪人』事件以来、二十面相はデモンストレーションや逃走用に「プロペラ」を使って空を飛ぶ。これは「プロペラのついた箱のような機械を(革帯で)背中にくっつけて使う」もので、夜や薄暗い日にはプロペラが見えないため、地上からはあたかもスーパーマンのように空を飛んでいるように見える。『宇宙怪人』によれば、「この機械は、一年ほど前、フランス人が発明して、パリの郊外で飛んでみせたもの」で、その写真が日本の新聞にものったほど。しかしまだオモチャみたいなもので、遠くまでは飛べず、せいぜい200?300mで、機械(エンジン)の力がなくなってしまう。この機械は明智の依頼でより馬力を増して複製され、明智小五郎や少年探偵団が以後使用することがあった。『鉄人Q』では少年探偵団の小林・井上両少年が、『妖星人R』(ポプラ社版『空飛ぶ二十面相』)では明智探偵が、このプロペラを使って逃亡を図る二十面相と空中戦を展開した。『夜光人間』や、『仮面の恐怖王』、『ふしぎなひと』、二十面相最後の作品『超人ニコラ(黄金の怪獣)』でも、二十面相はこのプロペラを使って悪事を働く。


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