性転換
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ハゼ科のダルマハゼ、オキナワベニハゼなど一部の魚類では、両方向に性を変えることができるものが知られている。またホンソメワケベラのようにかつては雌性先熟の性転換しか行わないとされてきたが、実は逆方向の性転換も可能であることが近年になって判明した種もある。これらの種では、一度優位になり雄に性転換した個体が、何らかの要因により再び劣位になった場合に、雌への性転換が起こると考えられている。
節足動物

節足動物の1グループである甲殻類では、とくにエビ類に性転換を行うものが多い。代表的なものとしては、アマエビとして食されるホッコクアカエビを含むタラバエビ科タラバエビ属で雄性先熟の性転換が知られている。ただしタラバエビ属では一部の個体が生涯を雌として過ごす。雄性先熟は他に、テッポウエビ科のムラサキヤドリエビなどでも知られている。

甲殻類では魚類とは逆に、雌性先熟種は比較的少ない。等脚目のウミナナフシ(英語版)科、タナイス目などで雌性先熟が知られている。
その他の無脊椎動物

軟体動物では、巻貝の一種エゾフネガイ(学名 Crepidula grandis Middendorff)などで雌性先熟の性転換が知られている。この種は多数の個体が積み重なった状態で生息し、下部の大型個体が雌、上部の小型個体が雄として繁殖する。二枚貝イガイ(Mytilus coruscus)は、雄性先熟の性転換を起こすと考えられており、大型の個体は雌が多い。

環形動物のノリコイソメ科に属するゴカイの一種Ophryotrocha puerilisは一夫一妻であり、クマノミのようにペアのうち大きな個体が雌になり、小さな個体が雄になる。しかし雌として繁殖を続けると体重が減少するために、やがてサイズの逆転が起こり、雌だった個体が雄に、雄だった個体が雌に性転換する。

これ以外にも性転換が知られている分類群はいくつも存在するが、詳しく研究されているものは少ない。
植物

植物のうち、性転換を行うことで有名なのはサトイモ科テンナンショウである。テンナンショウでは、球茎が小さい、すなわち蓄えられた栄養が少ないうちは雄花を咲かせる。球茎が大きくなり、種子果実をつくるための栄養が充分に蓄えられると性転換して雌花を咲かせる。そして、雌としての繁殖に栄養を消費して球茎が小さくなると、再び雄花を咲かせる。つまり、両方向の性転換を行うのである。

ほかに、カエデ科ウリハダカエデでは雄性先熟の性転換が見られる。
医学的な性転換詳細は「性同一性障害」を参照

人間が性器などの外観を手術により人工的形成処置を施して性同一性の性に近づけたり、性ホルモンを使って体型を変えることがある。これらの医学的な手術は、以前は「性転換手術(sex change operation, change-of-sex surgery)」と呼ばれていたが、今日では正式には「性別適合手術(gender-affirming surgery)」と呼ばれている。この場合においては「性転換」という表現は不適切とされている[2]。性別適合手術を希望する人の多くはトランスジェンダーであり、中には性同一性障害(現在は性別不合もしくは性別違和)と診断される者もいる。
関連項目

LGBTポータル
プロジェクト LGBT


雌雄同体

性別



有性生殖

椎名桔平

脚注^ ただし、イソギンチャクの密度が非常に高い温帯域では、雌を失った雄は移動して他の雌とペアになることが多く、必ずしも性転換しないことが知られている。
^ “「反トランス感情」を煽る偏向報道が蔓延、保守派メディアは『書きかえ』告発され訂正”. フロントロウ (2023年6月30日). 2023年12月4日閲覧。

参考文献

P・J・グリーンウッド、J・アダムズ『「性」の不思議がわかる本 ♂と♀の進化生態学』巖佐庸(監訳)、佐々木顕、田町信雄(訳)、HBJ出版局、1991年(原著1987年)。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}
ISBN 4-8337-6022-3。 

中園明信、桑村哲生(編)『魚類の性転換』東海大学出版会〈動物―その適応戦略と社会〉、1987年。ISBN 4-486-00913-4。 

桑村哲生『性転換する魚たち ―サンゴ礁の海から―』岩波書店〈岩波新書〉、2004年。ISBN 4-00-430909-3。 

桑村哲生、中嶋康裕(共編)『魚類の繁殖戦略(1)』海游舎、1996年。ISBN 4-905930-71-5。 

桑村哲生、中嶋康裕(共編)『魚類の繁殖戦略(2)』海游舎、1997年。ISBN 4-905930-72-3。 

酒井聡樹、高田壮則、近雅博『生き物の進化ゲーム ―進化生態学最前線:生物の不思議を解く』共立出版、1999年。ISBN 4-320-05522-5。 

典拠管理データベース: 国立図書館

ドイツ


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