性教育
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男女間での性に関する知識やスキルについてだけでなく、ジェンダー性的志向の多様性、人権、幸福を学ぶ概念としての包括的性教育が普及しつつある[1][24]

2009年のUNESCOらのガイダンスは2018年1月に改訂され、ジェンダーの理解や価値、文化などの側面が強化され、欧州のスタンダードに近づいた[22]。8領域の広い射程からセクシュアリティを捉え、性行為や避妊の方法だけでなく、友情や恋愛などに関する人間関係やジェンダー論まで、包括的な内容となっている[22][25]。国際セクシュアリティ教育ガイダンスにおける8つのキーコンセプト:
人間関係

価値観、人権、文化、セクシュアリティ

ジェンダーの理解

暴力と安全確保

健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル

人間のからだと発達

セクシュアリティと性的行動

性と生殖に関する健康
? 『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】』[9]

国連人口基金(UNFPA)は2014年に「包括的性教育運用のためのガイダンス- 人権とジェンダーに焦点をあてて」を出しており[23]、包括的性教育を推奨している。UNFPAによると、包括的性教育とは次の通りである[26]。包括的性教育は、若者の発達に合わせて、年齢に応じた情報を提供しながら、数年間にわたり行われる。人間の発達、解剖学、妊娠に関する科学的に正確な、カリキュラムに基づいた情報が含まれる。また、避妊やHIVを含む性感染症に関する情報も含まれる。さらに、情報を与えるに留まらず、自信やコミュニケーション能力の向上も促す。カリキュラムは、文化的規範、家族生活、対人関係など、セクシュアリティと生殖を取り巻く社会的問題にも取り組むべきである。

人権問題、ジェンダーの平等、ジェンダーの役割は、こうした議論のあらゆる側面に組み込まれるべきであり、これには、人権の保護、充実、エンパワーメント、ジェンダー差別の影響、平等とジェンダーに対する配慮の重要性、ジェンダー役割の根底にある考え方が含まれるとしている。性的虐待、ジェンダーに基づく暴力、有害な慣習も議論されるべきである。これらにより、若者たちは自分自身の行動に責任を持ち、他者の権利を尊重するために必要なライフスキルを学ぶことになるという[14]

包括的性教育は、「若者が自分のセクシュアリティと健康について、十分な情報を得た上で決定できるようにするものである。これらのプログラムは、ライフスキルを身につけ、責任ある行動を促すものであり、人権の原則に基づいているため、人権、ジェンダー平等、若者のエンパワーメントの推進に役立つ。」[14]
性教育プログラムの検証

オーストラリアやイギリス、アメリカの一部の学校では、10代の妊娠を防ぐ目的で、子育ての実際を教えるために、生徒がリアルな赤ちゃんロボットを預かり、ミルク、おむつなどの世話するプログラムが行われているが、それが実際に期待通りの効果を上げたかについての研究はほとんどなく、10代の妊娠の減少という目的に効果があるという証拠はほとんどない[27][28]。ランセット誌に掲載された2016年のオーストラリアでの研究では、プログラムに参加した女子の10代での妊娠率は17%、参加しなかった女子は11%で、わずかではあるが統計的に有意な差が見られ、目的とは逆の結果が示された[27][29]。サリー・ブリンクマン准教授は、「10代の若者は脆弱な集団であり、彼らを対象とした介入ベースのプログラム、特に人生に影響する可能性のある10代の妊娠のようなものに対処するプログラムは、常に確実な証拠に裏付けられるべきである」「私たちの研究が示したのは、たとえ非常に善意に満ちたプログラムであっても、予期せぬ結果をもたらす可能性があるということだったと思う。だからこそ、研究は非常に重要なのだ。オーストラリアは10代の妊娠率がOECD加盟国21カ国の中で6番目に高く、この問題の一因となるプログラムに資金を提供すべきではない。」と述べ、赤ちゃんロボットを世話するプログラムは生徒たちにとって魅力的でやりがいを感じていると思われ、赤ちゃんロボットを返却する際に非常に動揺し、中にはカウンセラーが必要になる女子もいたと指摘している[27]。こうした研究結果にもかかわらず、このプログラムを引き続き行っている学校もあり、赤ちゃんロボット RealCare Baby の製造元によると、2019年時点でアメリカの学区の3分の2で使用されている[28]

イギリスでは、10代の妊娠、薬物使用等の減少のための青少年育成プログラムの有効性を評価するため、専門家によって10代の妊娠、薬物乱用、学校からのドロップアウトのリスクがある、または脆弱であるとみなされた13-15歳の若者を対象に、54の青少年サービス施設で、介入性・薬物教育を含む集中的で多要素の青少年育成プログラム(Young People's Development Programme:YPDP)と標準的な青少年教育との前向き比較研究が行われた[30]。主なアウトカム指標は18ヵ月後時点での、妊娠、週1回の大麻使用、月1回の飲酒などで、結果は、介入群の女子は比較群の女子よりも妊娠を報告することが多く(16%対6%)、介入群の女子はまた、早期の異性間の性体験(58%対33%)および10代で親になるという予測(34%対24%)をより多く報告しており、介入が異性経験の遅延や妊娠、飲酒、大麻使用の減少に効果的であるという証拠は認められなかった[30]。悪影響が示唆された結果もあった[30]。方法論的な限界によって結果の一部は説明できるかもしれないが、それらしい原因としては、参加者がよりリスクの高い仲間と出会い、問題児というレッテルを貼られたと感じたことが考えられる[30]。プログラム内の性教育は比較的小規模で施設により実施内容にはばらつきがあり、また、性教育から生じる害のエビデンスは少なく、性的な行動に関する結果がプログラム内の性教育に起因する可能性は低い[30]。この実証プログラムは 2004 年から 2007 年まで実施された[31]
各国の性教育.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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アメリカ
キリスト教と純潔教育詳細は「キリスト教」を参照

アメリカ合衆国では1980年代半ばから、性病やエイズ感染症の予防からコンドームの使用指導をしていた。しかし1990年代初めより、キリスト教右派の「絶対禁欲性教育(英語版)」が導入された。結婚するまで絶対にセックスをしてはならず、妊娠の医学的仕組み、避妊の仕方も教えてはならないというもの。ブッシュ政権は莫大な資金援助をしたが、避妊を教えた場合は助成金を打ち切った。その結果、一部の州で未成年者の性病罹患と妊娠が急増した[32][33]

アメリカ心理学会の研究では、「包括的性教育」の有効性が示されているとした[34]。包括的・総合的な性教育の有効性は、査読誌の記事の複数によって明白であるとする一方、「絶対禁欲性教育」は深刻な危険があるとの指摘がなされている[35]

ハーバード大学の18-25歳を対象にした「思いやりの常識化」調査では、若者の3分の1が性的同意について親と話し合ったことがない。一方、コロンビアの大学調査ではセックスの誘いを断ることを学んだ学生はレイプの被害が半数になる。小児から体のつくりを教わり触れられることの自己決定や他者尊重を学ぶ性教育は、加害者化も被害者化を防ぐことに有効であることが分かっている。しかし1990年代以降、性教育を行う際の性的自己抑制を義務づける法律が28州で成立したことで包括的性教育に取って変わられた問題がある。ポルノが非現実的なものとして理解していく「ポルノリテラシー」教育も新しい教育方法として試みられている[36]
イギリス

イギリスでは中等学校(11歳から16歳)での性教育が1994年より義務化された[37]。イギリスの10代少女の妊娠数は1960年代終わりから1970年初頭にかけて正式統計で年間13万件以上、実数は20万とも30万とも言われるほど多く、学業の継続困難から安定した職業に就くことも出来ず、貧困問題とも結びついて社会問題化していた[38]


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