日本においては1948年に公布された性病予防法にある、梅毒、淋病、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫症の4疾患のことを「性病」と呼んでいたが、その後、性交およびその類似の性行為によって感染する病気を広く捉えて「STD(sexually transmitted disease)」、「性行為感染症」と呼ぶようになった。近年では「性感染症」の用語が使われることが多い[14]。 すべての性感染症が症状を示す訳ではなく、また症状を示すとしても感染直後にそれが現れるとは限らない。症例によっては感染症が無症状で保有される事があり、このような場合は他の人を感染させる可能性が高くなる。感染症の種類によって性感染症は不妊や慢性痛、さらには死を引き起こしうる[15]。 性感染症に思春期以前の子どもが感染していた場合は性的虐待の可能性を示すことがある[16]。 なお、性感染症というが、あくまで「性行為で感染することが多い」というだけであり、性行為以外でも感染することはある。他人の唾液や咳、くしゃみのしぶきなどが偶然、口や目に入ったりしても感染する可能性はある[17]。 感染した細菌によって、血液検査、尿検査、ぬぐい取って染色、または培養して観察など各種の方法がとられる。同じ細菌に対しても、方法によって検出精度に差があり不適切な場合がある。 検査機関には病院のほか、肝炎に関しては日本では無料で各自治体が行っている場合がある。エイズ、梅毒、淋病、クラミジアに関しても保健所が無料で行っている場合がある[34]。こうした無料の検査は月に1?2度である。ほか、郵送での検査キットが販売されている。 日本では、1948年に性病予防法が施行されると、路上の売春婦などを摘発して保健所に同行させ、強制的に性感染症の検診を受けさせる「狩込み」が行われた時期がある。この狩込みについては、1950年10月30日に法制意見局から違憲の疑いがあるとして警告が出されて中止に追い込まれている[35]。 梅毒やHIVでは特徴的な口腔の病変が生じ診断の機会となりうるが、淋菌やクラミジアでは症状がなかったり、特徴のない炎症が生じるため見逃されやすい[36]。梅毒の感染が発覚した場合、HIVの検査も推奨される[37]。 イボでは尖圭コンジローマや伝染性軟属腫。 排尿痛、尿道の痛みや分泌液は、性感染症以外でも起こりうるため鑑別が必要である[38]。
徴候と症状
病原体
細菌
梅毒 - Treponema pallidum
クラミジア感染症 - クラミジア・トラコマチス: Chlamydia trachomatis[18]。以下、主に性器の痒みや分泌物。
淋病 - 淋菌: Neisseria gonorrhoeae[18]
マイコプラズマ・ジェニタリウム - Mycoplasma genitalium[19][20][21]
マイコプラズマ・ホミニス - Mycoplasma hominis[22][23][24][25][26]
ウレアプラズマ感染症[27][28]
軟性下疳 - Haemophilus ducreyi(英語版)[18]。日本では少ない、性器の痛みや出血。
鼠径リンパ肉芽腫 - Klebsiella granulomatis(英語版)[29]。痛みのない潰瘍。かつては「第四性病」と呼ばれた。
真菌
カンジダ症[18]。性器の痒みや分泌物。
ウイルス顕微鏡写真(英語版)はヘルペス・ウイルスの細胞変性効果を示す。 (ground glass nuclear inclusions, multi-nucleation). パップテスト。パパニコロウ染色。
ウイルス性肝炎(B型肝炎ウイルス)- 唾液、性器分泌液から感染し、肝機能に異常を示す。
(A型肝炎とE型肝炎は糞口感染によって伝播、C型肝炎は稀に性交感染[30]、D型肝炎(B型肝炎との共感染のみ)の感染経路ははっきりしないが、性交感染を含む可能性がある[31][32][33]。)
後天性免疫不全症候群(AIDS)(ヒト免疫不全ウイルス)- 性器分泌液、精液、乳、血液から感染。進行すると免疫不全に陥る。
単純ヘルペス(単純ヘルペスウイルス、HSV-1、HSV-2)- 皮膚や粘膜から、疱疹の有無によらず感染しうる。主に性器の水膨れと潰瘍、女性ではそれによる痛み。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 - 皮膚や粘膜との接触から。高リスク型を除くHPVの一部は、イボの尖圭コンジローマの病原体である。子宮頸癌のほとんどが高リスク型HPVの感染によるものであり、さらに一部の肛門癌、陰茎癌、外陰癌の原因でもある。
伝染性軟属腫(伝染性軟属腫ウイルス)- 肌に直接触れるなどの濃厚接触による。水イボ。
寄生虫
ケジラミ症(ケジラミ) 痒みと吸血跡。
疥癬(ヒゼンダニ) 痒みと線状の跡。
原虫
トリコモナス症(膣トリコモナス)[18]。性器の痛みと分泌物。
検査
強制検診
診断
鑑別診断
淋菌性尿道炎[38]。
クラミジア性尿道炎 - クラミジアが分離できる[38]。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎 - 主にマイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナスなどであり、他の多くの細菌では確実な証拠は不足している[39]。
Size:86 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef