日本においては1948年に公布された性病予防法にある、梅毒、淋病、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫症の4疾患のことを「性病」と呼んでいたが、その後、性交およびその類似の性行為によって感染する病気を広く捉えて「STD(sexually transmitted disease)」、「性行為感染症」と呼ぶようになった。近年では「性感染症」の用語が使われることが多い[14]。 すべての性感染症が症状を示す訳ではなく、また症状を示すとしても感染直後にそれが現れるとは限らない。症例によっては感染症が無症状で保有される事があり、このような場合は他の人を感染させる可能性が高くなる。感染症の種類によって性感染症は不妊や慢性痛、さらには死を引き起こしうる[15]。 性感染症に思春期以前の子どもが感染していた場合は性的虐待の可能性を示すことがある[16]。 なお、性感染症というが、あくまで「性行為で感染することが多い」というだけであり、性行為以外でも感染することはある。他人の唾液や咳、くしゃみのしぶきなどが偶然、口や目に入ったりしても感染する可能性はある[17]。
徴候と症状
病原体
細菌
梅毒 - Treponema pallidum
クラミジア感染症 - クラミジア・トラコマチス: Chlamydia trachomatis[18]。以下、主に性器の痒みや分泌物。
淋病 - 淋菌: Neisseria gonorrhoeae[18]
マイコプラズマ・ジェニタリウム - Mycoplasma genitalium[19][20][21]
マイコプラズマ・ホミニス - Mycoplasma hominis[22][23][24][25][26]
ウレアプラズマ感染症[27][28]
軟性下疳 - Haemophilus ducreyi(英語版)[18]。日本では少ない、性器の痛みや出血。
鼠径リンパ肉芽腫 - Klebsiella granulomatis(英語版)[29]。痛みのない潰瘍。かつては「第四性病」と呼ばれた。
真菌
カンジダ症[18]。性器の痒みや分泌物。
ウイルス顕微鏡写真(英語版)はヘルペス・ウイルスの細胞変性効果を示す。 (ground glass nuclear inclusions, multi-nucleation). パップテスト。パパニコロウ染色。
ウイルス性肝炎(B型肝炎ウイルス)- 唾液、性器分泌液から感染し、肝機能に異常を示す。
(A型肝炎とE型肝炎は糞口感染によって伝播、C型肝炎は稀に性交感染[30]、D型肝炎(B型肝炎との共感染のみ)の感染経路ははっきりしないが、性交感染を含む可能性がある[31][32][33]。)
後天性免疫不全症候群(AIDS)(ヒト免疫不全ウイルス)- 性器分泌液、精液、乳、血液から感染。進行すると免疫不全に陥る。
単純ヘルペス(単純ヘルペスウイルス、HSV-1、HSV-2)- 皮膚や粘膜から、疱疹の有無によらず感染しうる。主に性器の水膨れと潰瘍、女性ではそれによる痛み。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 - 皮膚や粘膜との接触から。高リスク型を除くHPVの一部は、イボの尖圭コンジローマの病原体である。子宮頸癌のほとんどが高リスク型HPVの感染によるものであり、さらに一部の肛門癌、陰茎癌、外陰癌の原因でもある。
伝染性軟属腫(伝染性軟属腫ウイルス)- 肌に直接触れるなどの濃厚接触による。