思考
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例えば本来区切りが無いについて、ある言語で「虹は六色」、他では「七色」と分類されていると、それを使う人間の思考では虹はそれぞれの数の色分けをして然るべきという認識が課せられる[53]

思考と言葉の関係そのものについても、それぞれの言語種類で捉え方に違いがある。日本語では両者は分けられる傾向にあり、「声に出して思考する」という表現は馴染まない。しかしドイツ語の分離動詞「nachdenken」には「熟考する」という意味の他に、副詞と結びついて「laut nachdenken」では「熟考した結果を公にする」という意味を持つ。日本語の思考では頭(または心)の中だけの行動と取られがちだがドイツ語では思考と言葉を同じものとみなす傾向があり、細分すると思考は表現する前の言葉であり、言葉は表現した思考となって、両者は本質的に同じものと捉えられている[54]

思考は人間の知能を知る上で重要な要素である。しかし、知能の解明は未だ不充分であり、その背景には本来密接に関連する思考と言語がばらばらに研究されてきた事がある[2]

このような思考と言語の関係について、ギルバート・ライルは異なる観点を提示している。多くある思考は自分自身への語りかけであり言語またはシンボルの形態を取るという意見に反論し、ライルは思考過程において言語が使われてもそれは思考が目標に向かう過程で経由した単なる段階でしかなく、誰かに聞かせる意図を持つものではないと論じ、思考は言語に限らない多くの伝達手段を自己に対して実験的に投げかけているものだと主張した[26]。思考は言語を基礎に行われるが、それだけではなくイメージなども関与する。また、感情や動機づけなども影響を与える複合的な過程である[37]
思考の種類

思考を説明するに当たり、論理的思考など「…的思考」という表現などが使われる事が多い。以下ではいくつかの例を示す。

「論理的思考」の定義は様々である。これについて井上尚美は、3つの定義を提唱した。狭義では推論が形式論理学の規則に従っている事を挙げ、次に論証の形式である前提‐結論や主張‐理由という骨格がある事、広義には直感やイメージからの思考ではなく概念的思考である事としている[55]。この論理的思考は、直感的発想にある正確性や明示性に欠ける点を補い、妥当なものかどうかを確認・察知する有効な手段であり、前提を漏れなく明示しつつ真偽を検証し、さらに推論のプロセスを明瞭にして検証可能な状態にすることができる[56]。しかし、論理的思考で得られた結論が必ず正しいとは言い切れず、また絶対に結論を得られるものではない点にも留意する必要がある[57]

アメリカ合衆国の高等教育において重要な目標とされる[58]「批判的思考」の定義は明瞭ではなく、研究者の間でも把握概念に違いが見られる[59]。ひとつの有力な説明では「信じるもの、取るべき行動の判断を下に当たって行う反省的思考」[60]と言い、具体的な説明では「根拠に基づく評価と判断を行う能力と意思」[61]と言う[62]

「白黒はっきりつける」「ものの善悪」など、二律背反で事象を思考する傾向を「二分法的思考」と言う。これは情報の理解や思考の結果である判断を素早く下せる利点があるが、一方でパーソナリティ障害[63]完全主義[64]および人間関係の悪化に繋がる場合もある。二分法的思考は、物事を明確にしたいという「二分法の選好」、物事は2つのグループに分けられるという「二分法的信念」、そして自分にとって利益があるものか否かという「損得勘定」の3つの因子が影響している[65][66]

心理学者のアーヴィング・ジャニスが提唱した「集団思考」(Groupthink、集団的浅慮)は、集団で思考して得た結論が、時に個人の思考で導いた結論よりも不合理であったり間違っていたりすることを指す。このようなことが起こる要因は、集団に結束力があること (cohesive) と、集団が一致を求める傾向にあること (concurrence-seeking tendency) がある[67][68]。これを社会心理学的実験で検証したR.S.バロンは、各人が個別に否定的な情報を持っているような場合に、集団の一致性を志向する傾向が高まり、異論が封殺されるという結果を得た。逆に、コンピュータを介して匿名のまま議論をする場合には集団思考の傾向は現れにくくなるという結果もあった[69][70]
関連項目

哲学

思考心理学、パターン認識問題解決学習論理学、表象主義批判

表象アフォーダンスコネクショニズム

想像構想理想表現

内なる声(英語版)(心の声)、個人内レベルのコミュニケーション(英語版)(個体内コミュニケーション、自問自答など)

チューリング・テスト - アラン・チューリングは、チューリング・テストと呼ばれる知能判定を想定し、人間の能力に相当する充分な記憶装置と実行ユニット、命令が正しい順番で行われるようにする制御装置を備えたデジタル計算機は原理的に思考することができると論説した。このテストは、デジタル計算機が人間を模倣してコミュニケーションを取る人物を騙して会話相手が思考をしていると思わせればよく、またこのようなことが可能な計算機を想定することが目的である。このデジタル計算機とはひとつの状態から別の状態へ不連続に飛び移る「離散状態機械」を想定しており、これは中間的な状態が無いため、初期条件と途中の入力条件が判明すれば未来を含めた機械の状態を特定できる計算機と仮定している[71][72][73]

正思惟(しゃうしゆゐ、しゃうしゐ) - 仏教用語

出典[脚注の使い方]^ a b c d 「【思考】」『広辞苑』(第五版第一刷)岩波書店、1999年、1157頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-00-080113-9。 
^ a b c 岩重洋志. “ ⇒思考と言語” (PDF). 東京工科大学コンピュータサイエンス学部亀田研究室. 2010年6月5日閲覧。[リンク切れ]
^ a b 「【思考】」『日本語大辞典』(第一刷)講談社、1989年、838頁。ISBN 4-06-121057-2。 
^ 前田麻澄. “ ⇒異類の存在論” (PDF). 滋賀大学教育学部倫理研究室. pp. 39. 2010年7月3日閲覧。
^ 『ブリタニカ国際大百科事典、第2版改訂』
^ a b c d e “ ⇒思考”. 愛知淑徳大学図書館バスファインダー. 2010年6月5日閲覧。
^ 『日本大百科全書』
^ 砂子岳彦. “ ⇒単語/熟語研究(27):laut nachdenken”. 浜松大学. 2010年6月5日閲覧。
^ 宮前珠子「作業療法の学問的位置づけと21世紀の展望」『広島大学保健学ジャーナル』第1巻第1号、広島大学大学院保健学研究科、2001年、11-15頁、doi:10.15027/208、ISSN 13477323、NAID 120000881259。


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