応力腐食割れ
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炉水中の溶存酸素を低減するため、次の施策が実施された[1]


原子炉起動時の脱気運転

水素注入法の開発[10]

貴金属注入法[10]

また、既設プラントのSUS304系部材についても1970年代後半頃から順次置き換えが進み、ネックとして残されていた炉内構造物(シュラウド、上部格子板、炉心支持板、給水スパージャー、ジェットポンプ)などについても、1994年スウェーデンのオスカーシャム原子力発電所でシュラウド交換した先行事例を参考に、1997年日本の福島第一原子力発電所3号機を嚆矢として順次、交換されていった[11]
非鋭敏化ステンレス

このようにして、原子力発電所で使用されるステンレスは所謂第2世代以降SUS304LやSUS316系が多用され、SUS304を使用していた初期のプラントで起こったような問題については解決していった。しかし低炭素系ステンレス鋼についても、SUS304に比較すれば長期であるものの経年使用に伴って応力腐食割れが報告されるようになった。SUS304Lの場合アメリカのプラントで1990年代半ば頃から、SUS316系の場合2002年頃に日本国内のプラントでも報告が見られた[12]。1996年に当時の通商産業省は、適切な機器交換を実施すれば原子力発電所は60年運転可能との検討結果を報告していた。また、東京電力原発トラブル隠し事件で問題点の一つとされたことに過剰な品質管理要求があったため、再発防止策として原子力安全・保安院は経年を経たプラントに対して新品並の品質を要求しない維持基準の導入を決めていた。しかしながら、一度は応力腐食割れ対策を施した配管類が長期の使用で応力腐食割れを発生したことにより、こうした再検討過程にも一石を投じる結果となった[5]。これらの亀裂進展速度は観察結果によればSUS304よりは低いとされているが、冷間加工材でTGSCCが発生する機構、非鋭敏化ステンレスでのIGSCCの発生機構については2010年初頭の時点でも定説は確定しておらず、研究が進められている[12]

対策としては、上記ピーニング法、Nストリップ法、水素注入法による対処が当面は有効であるとされている[13]
脚注[脚注の使い方]^ a b c d応力腐食割れ(SCC)『エネルギー問題に発言する会』HP
^ a b c 水谷義弘 2010, pp. 41.
^ a b 原子力安全・保安院 独立行政法人原子力安全基盤機構 2006, pp. 3.
^ 六ヶ所村ラプソディーの中で、撮影当時原子力安全委員会委員長であった班目春樹は、「原子力発電所を設計したときには、応力腐食割れ、SCCなんてのは(メーカーは)知らなかったんですよ」と述べている。原子力安全委員会は2012年に廃止され、原子力規制委員会へ移行した。2014年には原子力安全基盤機構も同委員会へ統合された。2011年3月22日の参院予算委員会では社民党の福島瑞穂から福島第一原子力発電所事故に関して質問を受けて、班目は「原子力を推進してきた者の一人として、個人的には謝罪する気持ちはある」と陳謝した。2007年2月の浜岡原発運転差止訴訟の静岡地裁における証人喚問で、非常用発電機や、制御棒など重要機器が複数同時に機能喪失することまで想定していない理由を問われ、「割り切った考え。すべてを考慮すると設計が出来なくなる」と述べていた。読売新聞 2011年3月23日
^ a b 「科学 材料早期劣化の疑い 原発機器ひび割れ」『日本経済新聞』2002年9月23日朝刊17面
^ 原子力安全・保安院 独立行政法人原子力安全基盤機構 2006, pp. 14.
^ a b 出町和之編 2010, pp. 61.
^ 出町和之編 2010, pp. 63.
^ 原子力安全・保安院 独立行政法人原子力安全基盤機構 2006, pp. 12?13.
^ a b応力腐食割れ_水素注入_貴金属注入『エネルギー問題に発言する会』HP


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