微生物
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1860年、ジョン・ホッグはこれを原生生物(Protoctista、プロトクティスタ)と呼び、1866年、エルンスト・ヘッケルがこれを原生生物界(Protista、プロティスタ)と命名した[25][26][27]

パスツールやコッホの研究は、医学に直接関連する微生物にのみ焦点を当てたため、微生物の世界の真の多様性を正確に反映していなかった。微生物学の真の広がりが明らかになったのは、19世紀後半、マルティヌス・ベイエリンクセルゲイ・ヴィノグラドスキーの研究以降のことである[28]。ベイエリンクは、微生物学に、ウイルスの発見と、集積培養技術の開発という2つの大きな貢献をした[29]タバコモザイクウイルスに関する彼の研究は、ウイルス学の基本原理を確立した。しかし、微生物学に最も直接的な影響を与えたのは、彼が開発した濃縮培養法であり、生理学的に大きく異なる幅広い微生物の培養を可能にするものであった。ヴィノグラドスキーは、化学合成無機栄養(chemolithotrophy)の概念を発展させ、地球化学的プロセスにおける微生物の果たす重要な役割を明らかにした最初の人物である[30]。彼は、硝化菌窒素固定菌の両方を初めて分離し、報告を担った[28]。フランス系カナダ人の微生物学者フェリックス・デレーユは、バクテリオファージを共同発見し、最も初期の応用微生物学者の一人である[31]
分類と構造

微生物は地球上のほとんどあらゆる場所に生息している。ほとんどの細菌古細菌は微小であるが、多くの真核生物も同様に微小であり、その中にはほとんどの原生生物、一部の真菌、また一部の微小動物(英語版)や植物も含まれる。ウイルスは自律的な増殖能力を持たないことから、非細胞生物(英語版)と見なして微生物ではないと考える研究者もいるし、微生物学のサブ分野にウイルスを研究するウイルス学を位置づける研究者もいる[32][33][34]
進化詳細は「生命の進化史の年表(英語版)」および「最古の生命体(英語版)」を参照1990年にカール・ウーズが発表したrRNAデータに基づく生物の系統樹は、細菌(Bacteria)、古細菌(Archaea)、真核生物(Eukaryota)のドメインを示す。一部の真核生物グループを除き、すべてが微生物である。

単細胞の微生物は、約35億年前に地球上に出現した最初の生命体である[35][36][37]。その後の進化は遅く[38]先カンブリア時代の約30億年間は(地球上の生命の歴史の大部分)、微生物がすべての生物であった[39][40]。2億2,000万年前の琥珀(こはく)から細菌、藻類、真菌類が確認されており、少なくとも三畳紀以降では、微生物の形態はほとんど変わっていないことが示されている[41]。しかし、新たに発見されたニッケルの生物学的役割 (en:英語版) 、特にシベリア・トラップからの火山噴火によってもたらされた役割は、ペルム紀-三畳紀境界の大量絶滅の終わりにかけて、メタン生成菌の進化を加速させた可能性がある[42]

微生物は進化の速度が比較的速い傾向がある。ほとんどの微生物は急速に繁殖することができ、細菌はまた、大きく異なる種間であっても、接合(英語版)、形質転換形質導入によって遺伝子を自由に交換することができる[43]。このような遺伝子水平伝播は、高い突然変異率やその他の形質転換手段と相まって、微生物が(自然淘汰によって)急速に進化して、新しい環境で生き残り、環境ストレスに対応することを可能にしている。この急速な進化は、抗生物質に耐性を持つ多剤耐性病原菌(スーパー耐性菌)の発生につながっており、医学において重要である[44]

2012年、原核生物と真核生物の間の過渡期にある可能性のある微生物が、日本の科学者によって発見された。パラカリオン・ミョウジネンシス(Parakaryon myojinensis)は、典型的な原核生物よりも大きいが、真核生物のように核物質が膜に包まれており、内部共生体が存在する、他に類を見ない微生物である。これは、原核生物から真核生物への発展段階を示す、微生物の最初のもっともらしい進化形態であると考えられている[45][46][47]
古細菌詳細は「古細菌」を参照「原核生物」も参照

古細菌(archaea)は原核単細胞生物であり、微生物学者のカール・ウーズが提唱した3ドメイン系(英語版)において、生命の最初のドメインを形成している。原核生物とは、細胞核やその他の膜結合細胞小器官を持たないものと定義される。古細菌は、かつては細菌と同じグループに分類されていて、この決定的な特徴を共有していた。1990年、ウーズは、生物を細菌、古細菌、真核生物に分ける3ドメイン系を提唱し[48]、その結果、原核生物のドメインが分割された。

古細菌は、遺伝学的にも生化学的にも、細菌とは異なっている。たとえば、細菌の細胞膜は、エステル結合を持つホスホグリセリドから作られているが、古細菌の細胞膜は、エーテル脂質から作られている[49]。古細菌は当初、熱水泉のような極限環境 (en:英語版) に生息する好極限性細菌(extremophiles)とされていたが、その後、あらゆる種類の生息地で発見されている[50]。今ようやく科学者たちは、古細菌が環境中でいかに一般的なものであるかを理解し始めている、Thermoproteota(以前は Crenarchaeota、クレン古細菌)は、海洋で最も一般的な生命体であり、水深150 m以下の生態系を支配している[51][52]。これらの生物は土壌にもよく見られ、アンモニアの酸化に重要な役割を果たしている[53]

古細菌と細菌を合わせたドメインは、地球上で最も多様で豊富な生物群を構成し、温度が+140℃ 未満のほぼすべての環境に生息している。それらは、水中土壌空気中、生体内のマイクロバイオーム熱水泉、さらには地殻の奥深くの岩石にさえ存在している[54]。原核生物の数は約500個、つまり 5×1030 と推定され、地球上の生物数(英語版)の少なくとも半分を占めている[55]

原核生物の生物多様性は未知数だが、非常に大きい可能性がある。2016年5月に発表された推計によると、既知の生物種の数と生物の大きさを比較したスケーリング則に基づいて、地球上の生物種はおそらく1兆種で、そのほとんどは微生物であろうと推定されている。現在、その1%のさらに1/1000が報告されているにすぎない[56]。ある種の古細菌細胞は集合し、特にDNA損傷を引き起こすようなストレス性環境条件下では、直接接触することで細胞から細胞へとDNAを転移させる[57][58]


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