復活の日
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発熱・咳・頭痛・関節の痛みといった諸症状から、世間では新型インフルエンザ「チベット風邪」[注 8]と思われていたが、細菌でもウイルスでもないMM-88にはワクチン抗生物質も効果がなく、防疫体制は崩壊。マイヤー博士は、世界を襲う惨禍の正体がRU-308であることに気づいたが、世界の破滅を食い止めることはできなかった。唯一感染をまぬがれた南極では、病原体の性質を突き止めたアメリカの医学者A・リンスキイがアマチュア無線で伝えた情報に着想を得て分離に成功したMM-88を「リンスキイ・バクテリオウィルス」と命名。南極の科学ブレーンの一員であるド・ラ・トゥール博士により、半ば偶然に発見された唯一の対抗手段は、原子炉内での中性子線照射によって生まれた人体には無害な変異体[注 9]により、MM-88の増殖を抑えることだけであった。しかし、ARSの存在により、MM-88は予想外の運命を迎える。
ARS(Automatic Revenge System)
米国の狂信的な反共軍人・ガーランド中将(映画では統合参謀本部議長・大将)が反共主義のシルヴァーランド前大統領[注 10]と共に造り上げたホワイトハウスイーストウイング大統領危機管理センターにある切り替えスイッチにより作動する「全自動報復装置」。相互確証破壊戦略の確度を上げることを目的としたもので、システムの起動後、破壊された軍施設から一定時間の応答が無い場合、ソ連の攻撃を受けたものと見做し、報復として自動で敵国に対する全面核攻撃を実行する。MM-88の蔓延をソ連の生物兵器による攻撃とかたくなに信じ込んだガーランドは死の直前にシステムを起動させる。ARSシステムを廃棄しようとした後任のリチャードソン大統領はガーランド以下軍内部の反共勢力の強硬な反対によって果たせず、全面軍縮を実現させてからARSを無用の長物と化そうと目論んでいたが、極秘で南極にも軍事基地を建設した反動政治家シルヴァーランドの恐怖政治で全面戦争一歩手前だった[注 11]ソ連側もまったく同じARSシステムを保有せざるを得ず[注 12]、南極も核ミサイルの射程に置かざるを得なかった。ワシントンを訪れた吉住とカーターは、起動している可能性のある[注 13]ARSのスイッチを「システム停止」に切り替えようとした瞬間、地震によってアラスカの軍施設が破壊されたのをソ連の攻撃であると誤認したARSは作動し、ソ連本土への全面核攻撃を始める。
WA5PS
病原体の性質を突き止めたアメリカの医学者A・リンスキイ(ファーストネームは頭文字のみで不明)が使用する、アマチュア局コールサイン。エンドレステープを使い、ウイルス解析のヒントを放送し続けた。この情報が南極を守ることとなり、これを記念してMM-88を媒介する球菌に「WA5PS」の名が付けられた。小松左京の没後、このコールサインが実際のアマチュア無線局として指定されていないことが判明し、小松左京事務所に許可を求めたうえで「小松左京記念局」として免許された[10]。2012年10月26日の夜より、WA5PS/KH0(メキシコ国境地域で免許され、マリアナへ移動している扱い)として運用されている。
映画

復活の日
VIRUS
監督
深作欣二
脚本高田宏治
深作欣二[11]
グレゴリー・ナップ
原作小松左京
製作角川春樹
出演者草刈正雄
ボー・スヴェンソン
オリヴィア・ハッセー
夏木勲
グレン・フォード
多岐川裕美
ロバート・ヴォーン
千葉真一
チャック・コナーズ
渡瀬恒彦
ジョージ・ケネディ
緒形拳
音楽テオ・マセロ
羽田健太郎
主題歌ジャニス・イアン
「You are love」
撮影木村大作
編集鈴木晄
製作会社角川春樹事務所/TBS
配給東宝
公開 1980年6月28日
上映時間156分
製作国 日本
アメリカ合衆国
言語日本語
英語
ドイツ語
製作費20億円[12]
配給収入24億円[13]
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ポータル 映画
プロジェクト 映画

角川春樹事務所とTBSが共同製作し、東宝が配給した1980年の日本映画。アメリカ大陸縦断ロケや南極ロケを敢行し、総製作費は24億[14]とも25億円とも32億円ともいわれたSF大作映画である[15][16]。本来は1980年の正月映画として封切り予定だったが、製作の遅れから公開に間に合わなくなり、『戦国自衛隊』が正月作品として取って代わり、本作は半年遅れで公開された[17]
映画版ストーリー

1983年12月、イギリスの原子力潜水艦ネレイド号は東京湾に入り、ドローンで東京の偵察を行う。ドローンから送られてきた映像は、どこも白骨死体が累々広がる死の世界だった。ラトゥール博士は採集した空気サンプルを研究のために持ち帰りたいとマクラウド艦長に訴える。最初は隔離が不可能だと却下した艦長も、放射能遮蔽の安全性を逆手に反論され、渋々認めざるを得なかった。

1982年2月、東ドイツのクラウゼ博士は米国から盗み出した研究中のMM-88の毒性と脅威を知り、ウイルス学の権威に渡してワクチン開発を依頼するためサンプルを仲介者に託す。この仲介者は実は盗まれたウイルスを回収する目的で米陸軍が差し向けた工作員で、逮捕のため突入した兵士と撃ちあいになりクラウゼは死亡。工作員たちはセスナ機に乗り猛吹雪の中低空で逃走中アルプスに墜落。サンプルを収めた容器も粉々になり、ウイルスが雪の中に散乱した。

3月、米ソ冷戦は雪解けに向かいつつあり、タカ派のランキン大佐にとって面白くない。一方、細菌学者のマイヤー博士は自分が作成に携わったMM-88というウイルスが東側に渡ったという懸念に、頭を抱えていた。ランキンの来訪にマイヤーはMM-88を奪還できたかと問うが、ランキンには工作員の消息さえ掴めていなかった。MM-88は極低温下では活動を休止しているが、気温が上がると活発化して爆発的に増殖するモンスターウイルスだった。マイヤーは元々毒性がなかったMM-88にランキンが各大学で作らせた研究成果を合わせて耐性や毒性をつけ、BC兵器として完成させていたことを問い詰める。その事実をマイヤーが告発しようとしていることを知ったランキン大佐は、軍の息のかかった精神病院にマイヤーを隔離する。

4月に入り北半球に春が訪れたが、その直後からカザフスタンでは放牧中の牛が大量死し、イタリアでは嬰児と幼児を中心に感染が広まっていく。かつてのスペインかぜに倣って「イタリア風邪」と通称された疾患は全世界に広まりつつあった。イタリア風邪の猛威の状況は、南極にも知らされていたが「まもなく収束する」という希望的観測に辰野をはじめ昭和基地南極観測隊の隊員たちは冷ややかだった。隊長の中西は、各国の観測所と連絡を取り合い事態の把握に努めるが、象も罹患したという情報に驚愕する。観測隊員で地震予知学者の吉住は、南極へ出発する前に辰野の妻の友人で恋人の則子から妊娠と別れを切り出されたことを思い出していた。その頃、看護婦として患者の対応に追われていた則子は疲労が祟り、吉住との子を流産してしまう。世界各地で勃発する暴動に、米国大統領リチャードソンは事態を重く見て閣僚たちと対応策を練るが、爆発的な感染にワクチン精製が追いつかず、そのワクチンもイタリア風邪の分析したものではなかった。タカ派の米軍統合参謀本部議長・ガーランド将軍は示威目的で自動報復システム(ARS)の起動を進言するが、そこへホットラインを通してソ連首相がイタリア風邪で病死したという知らせが届く。

恐るべき致死率のイタリア風邪は、各国主要都市を次々に壊滅させていく。7月には日本で戒厳令が発令され、死者が3,000万人を超えた。8月には日本と南極の通信も途絶え、辰野ら家族を日本に残す隊員たちの動揺は増すばかりである。そんな中、ニューメキシコ州からとある少年の通信が昭和基地に届くが、無線機の扱いを知らない(デスクマイクの送信ボタンを押したままロックさせてしまい、受信状態に戻せない)彼の通信は銃声で終わった。解決の糸口が見えない中、上院議員バークレイは遺伝子操作によってウイルスを開発する「フェニックス計画」の存在とMM-88が盗み出された事実をリチャードソンに暴露し、マイヤーを救出する。ガーランドはランキン大佐を解任し、再びARSの起動を進言するが、リチャードソンは再び拒絶する。情報を公開すべきと主張するマイヤーと極秘にするというリチャードソンは対立するが、そこへリチャードソンの妻も感染したという知らせが届く。


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