御璽
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大日本帝国憲法下では、勅令公文式(明治19年勅令第1号)および公式令(明治40年勅令第6号)に、御璽または国璽を押す場合が明文規定されていた。

公文式によれば、法律・勅令には親署の後、御璽を押すとされた。また、勅任官の任命では辞令書に、奏任官の任命では奏薦書に御璽を押すとされた。

公式令によれば、詔書・勅書親任官及び勅任官の官記・免官の辞令書、爵記[注釈 6]四位以上の位記には親署の後、御璽を押すとされた。また、帝国憲法の改正皇室典範の改正・皇室令・法律・勅令・国際条約の発表・予算及び予算外国庫の負担となるべき契約には、上諭を附して公布するとされたが、その上諭には親署の後、御璽を押すとされた。

公式令は1947年(昭和22年)5月3日の内閣官制の廃止等に関する政令(昭和22年政令第4号)により廃止され、その後これに代わる法令はないが、国璽・御璽の用例など公式令に定められた事項は慣例により踏襲されている。

現在は、詔書、法律・政令・条約の公布文、内閣総理大臣最高裁判所長官認証官の官記・免官の辞令書、四位以上の位記等に押印されるほか、公式令では国璽とされていた、条約の批准書、大使公使の信任状・解任状、全権委任状、領事委任状、外国領事認可状も御璽が使用される。
刑罰

刑法第19章「印章偽造の罪」に規定があり、行使の目的で、御璽、国璽又は御名を偽造した者は、2年以上の有期懲役に処せられる(第164条第1項)。御璽、国璽若しくは御名を不正に使用し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用した者も、前項と同様とする(第164条第2項)。第164条第2項に関しては、未遂も罰せられる(第168条)。

刑法第17章「文書偽造の罪」にも規定があり、行使の目的で、御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽若しくは御名を使用して詔書その他の文書を偽造した者は、無期又は3年以上の懲役に処せられる(第154条第1項)。御璽若しくは国璽を押し又は御名を署した詔書その他の文書を変造した者も、前項と同様とする(第154条第2項)。

また、大日本帝国憲法下では、これらの犯罪行為は、不敬罪に処される事もあった。
満洲帝国

満洲帝国(満洲国)の御璽は、縦横が9cm、高さ約8cmの少し緑がかった白玉製で、「満洲國皇帝之寶(満洲国皇帝之宝)」と刻されている。御璽の背にはの彫刻があり、持ち易いように紐が通してある。御璽・国璽を使用することを「用璽」または「用宝」と称した[13]
満洲国での運用

御璽及び国璽は、帝政実施に伴って新設された満洲国尚書府が尚蔵し、詔書・勅書・その他の文書の用璽に関する事務を掌った(尚書府官制(康徳元年帝室令第1号)第1條)。なお、帝政初期は満洲国皇帝溥儀自身が手元に保管して下げ渡さず、用璽も尚書府に代わって内廷(満洲国皇宮内の皇帝の私的空間)の使用人が担当していたが、御璽と国璽を押し間違えたのを機会に、尚書府秘書官長が用宝(用璽)は尚書府秘書官に任せられたいと奏上して許され、以後は秘書官の一人がその都度内廷へ伺候して用璽を担当した。しかし、勲章が一度に何千人にも下賜されるようになると、大量の叙勲状(勲記)に国璽を押す必要があり、尚書府秘書官が内廷内の皇帝御居間に詰め切りとなる事態が起こったため、再度奏請を行い、毎朝、両璽(御璽及び国璽)の下げ渡しを受けて尚書府大臣室に保管し、夕方に内廷へ戻す運用に改めた。また、皇帝が地方へ出かける時は、尚書府秘書官の一人が、皮製の箱に納められた御璽・国璽を黄色い風呂敷に包んで首にかけてお供をした[14]
満洲国での法制

満州国では、公文程式令(康徳元年勅令第2号)に、御璽または国璽を押す場合が明文規定されていた。

公文程式令によれば、詔書・勅書・国書・その他外交上の親書・条約批准書・全権委任令・外国派遣官吏委任令・名誉領事委任令及び外国領事認可状・特任官の任命状・簡任官の任命状・特任官の解任状には親署の後、御璽を押すとされた。また、帝室令(日本の皇室令に相当)・法律・勅令・国際条約の公示・予算及び予算外国庫の負担となるべき契約には、上諭を附して公布するとされたが、その上諭には親署の後、御璽を押すとされた。
脚注
注釈[脚注の使い方]^ 強度を保つために金合金製(18金)とされる。
^ 唐尺に由来。当時の寸は約2.96cmに相当。
^ 曲尺に由来。当時の寸は現在の寸(約3.03cm)とほぼ同じ。
^ 位階を授ける際に渡される文書。
^ 任官の際に渡される任命書。
^ 爵位を授ける際に渡される文書。

出典[脚注の使い方]^ 村上重良「御璽・国璽」『皇室辞典』、50頁
^ The Privy Seal and State Seal、The Imperial Household Agency(宮内庁)
^ a b c d 荻野三七郎「内印」『国史大辞典 10』
^ a b c d e 早川庄八「内印」『日本史大事典 5』
^ a b c 西山良平「内印」『日本歴史大事典 3』
^ a b 荻野三七郎「内印」『平安時代史事典』
^ a b c 『集古十種』(国立国会図書館所蔵)より。
^ 「天皇御璽ノ印影ヲ彫刻ス」『太政類典第一編 第四十巻』
^ 「維新後印璽之制」『図書寮記録. 上編 巻二』
^ a b c 「国璽御璽ヲ鋳造ス」『太政類典第二編 第四十二巻』
^ 『太政官沿革志 印璽之制 三』
^ 村上重良「御璽・国璽」『皇室辞典』、51頁
^ 『青い焔―満洲帝国滅亡記』、148頁
^ 『青い焔―満洲帝国滅亡記』、149-150頁。なお、黄色は満洲国皇帝が使用する色とされる。

参考文献

村上重良「御璽・国璽」『皇室辞典』、
東京堂出版、1980年、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-490-10129-4

荻野三七郎 「内印」『国史大辞典 10』 吉川弘文館、1989年、ISBN 978-4-642-00510-4

荻野三七郎 「内印」『平安時代史事典角川書店、1994年、ISBN 978-4-04-031700-7

早川庄八 「内印」『日本史大事典 5』 平凡社、1993年、ISBN 978-4-642-00510-4

西山良平 「内印」『日本歴史大事典 3』 小学館、2001年、ISBN 978-4-09-523003-0

「国璽御璽鋳造・二条」『太政類典第二編 第四十二巻』、国立公文書館


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