後天性免疫不全症候群
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ウインドウ期間には個人差があり、スクリーニングでの検出が可能なほど血中の抗体が十分に増加するまでに通常1 - 3か月かかるとされている[25]。この間に検査を行った場合、HIVに感染していても陰性(感染なし)と判断されてしまうため、ウインドウ期間が最大の場合を考慮し3か月以上としている。

NAT検査(核酸増幅検査
ウイルス遺伝子である核酸を検知できるほどに複製する方法で、通常のスクリーニング検査と比較してウインドウ期間の短縮が可能である[26]。一部の検査機関では抗体検査と同時に実施されており、「感染の機会があってから2か月以上経過したあと」で信頼できる結果が得られる。後述する献血においても実施されている。

確定診断
上記検査にて陽性となった場合、「Western Blot法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体検査」と「HIV-1 PCR法検査」を施行し診断していく。一般的なスクリーニング検査では約0.3パーセント、即日検査では約1パーセントの確率で、HIVに感染していないにもかかわらず陽性結果となる偽陽性が発生する[27]ため、確定診断は重要である。

感染後経過
HIV-1 PCR法によるウイルス量測定と、フローサイトメトリー法によるCD4陽性細胞数検査が行われる。CD4数は現在の病態を反映する数値である。正常ならば800 - 1200個/μLであるが、HIVに感染すると徐々に低下していく。500個/μL程度では帯状疱疹結核カポジ肉腫非ホジキンリンパ腫、200個/μL程度ではニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ脳症、100個/μLではクリプトコッカス髄膜炎、50個/μLではサイトメガロウイルス非定型抗酸菌症を起こしやすいとされている。
献血における検査

献血で採取された血液からHIVやその他のウイルスの感染の有無を調べるため、日本赤十字社による献血では現在、抗体検査やNAT検査が行われている。

検査目的の献血について
献血においては安全性の面から上述の検査を行っているが、「検査目的の献血」を防ぐことから、HIVの感染においては陽性であってもその結果は献血者本人に知らせることはない。日本赤十字社では感染リスク後の献血は遠慮を願うとしており、HIV検査をする場合は保健所などで行うようにとしている[28]

献血で行われる検査の詳細
NAT検査では、感染初期の体内でウイルスが増加するウイルス血症に陥ってから(感染直後 - 1か月ほどと個人差がある)、平均11日( - 22日)以降に検出可能であり、通常の抗体検査ではNAT検査より時間がかかり平均22日以降[25](感染後4日 - 41日の間に抗体の陽性化が起きるケースは95パーセントである[29])で検出が可能となる。NATで検出ができない期間を「NATウインドウ期間」、抗体による検査で検出ができない期間を「血清学的ウインドウ期間」という。そのため、ウイルス血症の発生時期やウインドウ期間に個人差があることなども考慮して感染が疑われる機会があった場合は、それから最低でも2か月以上経過したあとに保健所などで抗体検査を行ってから献血を行うことが望まれる。現在、NATは試薬が大変高価で検査費用が高いこと、完全自動化されておらず一度に大量の検査ができないため、20検体を1つにプールしてNATを実施し(ミニプールNATと呼ばれている)、あるプール検体が陽性となった場合はプールされている20検体に対し、個別に再検査を実施し(個別NATと呼ばれている)、陽性の検体を特定して、その検体に対応する血液のみを輸血に使用しないという方法をとっている。
指標疾患(Indicator Disease)「#発病期」を参照
治療

抗HIV薬について、基本的に多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:HAART療法)にて治療が行われる。ただ、完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要がある。

一方、患者の平均余命は新薬の開発などにより改善されている。ブリストル大学の研究チームによると、2008年以降の早期に抗レトロウイルス薬治療(ART)を始めた20歳患者の平均余命は78歳であり、非感染者とほぼ同水準まで延長されていた[30]

また、HAART療法は2000年初頭までは1年間に1万ドル以上が必要であったが、インドタイブラジルなどで安価なジェネリック薬が生産されるようになり、さらに世界最大のエイズ患者を抱える南アフリカ共和国がこうした薬を輸入できるよう定めた改正薬事法を1997年に施行し、これに対し提訴した製薬会社が2001年に和解に応じたことでエイズ治療薬価格が大幅に低下した。2001年末にはHAART療法に必要な薬価は年間350ドルに低下し、エイズ治療は貧困層にも手の届くものとなった[31]
ガイドライン

一般に、アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)の治療ガイドラインが世界的に広く用いられている。おもなガイドラインには以下が存在する(ほぼ、毎年のように改訂[3])。

US DHHS Guidelines:アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)による 成人・妊婦・小児と別れて存在する

Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents-1-Infected

Recommendations for Use of Antiretroviral Drugs in Pregnant HIV-1-Infected Women for Maternal Health and Interventions to Reduce Perinatal HIV Transmission

Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection

Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents

Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Children Guidelines


HIV感染症治療の手引き:日本のHIV感染症治療研究会による

Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection:英国HIV学会(BHIVA)による

Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection:アメリカ国際エイズ学会(International AIDS Society?USA)による

HIV GUIDE:ジョンズ・ホプキンズ大学エイズサービス(Johns Hopkins AIDS Service)による


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