HIVには2つの型が知られる。HIV-1とHIV-2である。HIV-1は最初に発見された(そして当初はLAV、もしくはHILV-IIIとも呼ばれた)ウイルスである。HIV-1はより病原性(virulence)と感染性が高く[22]、世界的に見てHIV感染症の主要な病原体となっている。HIV-1と比べたHIV-2の感染性の低さは、HIV-2の曝露時に感染が成立する確率が低いことを暗示する。相対的な感染能力の低さゆえ、HIV-2はほとんど西アフリカに限って存在している[23]。 厚生労働省は、HIV感染症であり、かつ、指標疾患(Indicator Disease)の1つ以上が明らかに認められる場合にAIDSと診断し、感染症法に基づく届出が必要、としている[6]。 HIV感染症の診断では、血液中に抗体を有することを検査する。日本での検査方法は、日本エイズ学会による「HIV-1/2 感染症の診断ガイドライン」が広く用いられている。 HIVに感染しているかどうかの検査は居住地に関係なく全国の保健所で匿名・無料で受けることができる[24]。都市部の保健所では、夜間や休日にも検査を行っているところがあり、仕事や学業に影響を与えず検査できる体制を整えつつある。また、医療機関でも実費負担で検査を受けられるところがある。 結果はおよそ1週間ほどで判明するが、近年は30分以内で判明する即日検査も普及し始めている。通常は抗体スクリーニング検査が行われるが、より感度が高くウインドウ期間の短いNAT検査(詳細は後述)を実施している保健所や医療機関もある。 血液を採取して以下の検査が行われる。 献血で採取された血液からHIVやその他のウイルスの感染の有無を調べるため、日本赤十字社による献血では現在、抗体検査やNAT検査が行われている。
診断
HIV感染症検査
検査機関
種類
血清抗体検査
PA法(粒子凝集法)
ELISA法(酵素抗体法)
CLEIA法(化学発光酵素免疫法)
IC法(免疫クロマトグラフィー法)
IFA法(間接蛍光抗体法)
Western Blot法
血清抗原検査
抗原抗体法(HIV-1 p24抗原検査)
核酸増幅検査
HIV-1 PCR法(リアルタイムPCR法:RT-PCR法)
HIV-1 proviral DNA法
NAT(Nucleic acid Amplification Test)
方法
スクリーニング(通常の抗体検査)
一般にスクリーニング用検査キットとしてさまざまなものが市販されているが、ELISA法またはPA法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体・HIV-1 p24抗原が同時測定が可能な第4世代キットが広く用いられるようになってきている。検査時期としては、「感染の機会があってから3か月(検査機関により異なる)以上経過したあと」での検査が推奨される。これはHIVの感染初期においては抗体が十分に作られず、血液検査では検出できない期間があるためであり、この期間は「ウインドウ期間(ウインドウピリオド・空白期間)」と呼ばれている。ウインドウ期間には個人差があり、スクリーニングでの検出が可能なほど血中の抗体が十分に増加するまでに通常1 - 3か月かかるとされている[25]。この間に検査を行った場合、HIVに感染していても陰性(感染なし)と判断されてしまうため、ウインドウ期間が最大の場合を考慮し3か月以上としている。
NAT検査(核酸増幅検査)
ウイルスの遺伝子である核酸を検知できるほどに複製する方法で、通常のスクリーニング検査と比較してウインドウ期間の短縮が可能である[26]。一部の検査機関では抗体検査と同時に実施されており、「感染の機会があってから2か月以上経過したあと」で信頼できる結果が得られる。後述する献血においても実施されている。
確定診断
上記検査にて陽性となった場合、「Western Blot法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体検査」と「HIV-1 PCR法検査」を施行し診断していく。一般的なスクリーニング検査では約0.3パーセント、即日検査では約1パーセントの確率で、HIVに感染していないにもかかわらず陽性結果となる偽陽性が発生する[27]ため、確定診断は重要である。
感染後経過
HIV-1 PCR法によるウイルス量測定と、フローサイトメトリー法によるCD4陽性細胞数検査が行われる。CD4数は現在の病態を反映する数値である。正常ならば800 - 1200個/μLであるが、HIVに感染すると徐々に低下していく。500個/μL程度では帯状疱疹、結核、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、200個/μL程度ではニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ脳症
献血における検査
検査目的の献血について
献血においては安全性の面から上述の検査を行っているが、「検査目的の献血」を防ぐことから、HIVの感染においては陽性であってもその結果は献血者本人に知らせることはない。日本赤十字社では感染リスク後の献血は遠慮を願うとしており、HIV検査をする場合は保健所などで行うようにとしている[28]。
献血で行われる検査の詳細
NAT検査では、感染初期の体内でウイルスが増加するウイルス血症に陥ってから(感染直後 - 1か月ほどと個人差がある)、平均11日( - 22日)以降に検出可能であり、通常の抗体検査ではNAT検査より時間がかかり平均22日以降[25](感染後4日 - 41日の間に抗体の陽性化が起きるケースは95パーセントである[29])で検出が可能となる。