後天性免疫不全症候群
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

世界的にAIDSは急性経過をとって致死に至るより、むしろ慢性化する感染症である[33]。予後には個人差があり、CD4陽性細胞数とウイルス量の測定が経過の予測に有用である[34]。無治療の場合、HIVの亜型によってHIV感染後の平均生存期間は9年から11年と見積もられる[35]。さらにAIDSと診断されてなお治療がなされない場合、生存期間は6か月から19か月の間となる[36][37]HAART療法と適切な日和見感染症の予防が行われると死亡率は最大80パーセント減少し、余命は新規に診断された若い成人で20年から50年に延長される[33][38][39]。この数値は健常者の余命と比べても3分の2[38]からほぼ同等の水準である[40][41]。治療開始が遅れると予後はそれほどよくない[40]。たとえばAIDSの診断後に治療を開始すると、余命は最大で10年から40年となる[40][33]。HIVの感染とともに産まれた新生児に関しては、無治療の場合その半分が2歳までに死亡する[42]

AIDSの直接的な死因は日和見感染症がんであり、いずれも多くの場合、進行性の免疫不全の結果として生じる[43][44]。がんのリスクはCD4陽性細胞数が500 /μLを下回ると増加するようである[40]。臨床症状の進行速度は個人差が大きく、患者の感受性や免疫機能[45]、保健施設の利用度、共感染の有無[36][46]、特定のウイルス株への感染といった要素に影響を受けることが示されている[47][48]

結核の共感染はAIDS患者における病態進行と死の主要な原因の一つで、HIV感染者の3分の1が結核で死に、25パーセントのHIV関連死の原因となっている[49]。またHIV自体も結核のもっとも重要な危険因子の一つである[50]C型肝炎も一般的な共感染症であり、HIVとC型肝炎ウイルスは互いの増悪因子である[51]。AIDS関連のがんでもっとも一般的なのはカポジ肉腫非ホジキンリンパ腫である[44]

抗レトロウイルス療法を行っても、HIV感染者は長期的に神経認知障害[52]骨粗鬆症[53]、神経病[54]、がん[55][56]腎臓疾患[57]、および心血管疾患など[58]を経験する可能性がある。場合によっては、リポジストロフィーがHIVとその治療によって引き起こされることがある[58]
疫学
世界

2022年末現在、世界のHIV陽性者数は3,900万人、新規HIV感染者数は年間130万人、エイズによる死亡者数は年間63万人となっている[59][60]世界各国におけるHIV感染者の割合

  15–50%   5–15%   2–5%   1–2%   0.5–1.0%   0.1–0.5%   0.1%以下   不明


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:135 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef