後天性免疫不全症候群
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詳細は「#診断」を参照
無症候期

多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、おおむね5年から10年は無症状であるが、体内でHIVが盛んに増殖を繰り返す。また、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞がそれに見合うだけ作られ、ウイルスがCD4陽性T細胞に感染し破壊するプロセスが繰り返されるため、見かけ上の血中ウイルス濃度が低く抑えられているという動的な平衡状態にある。無症候期を通じてCD4陽性T細胞数は徐々に減少していってしまう。無症候期にある感染者は無症候性キャリア(AC)とも呼ばれる。

またこの期間に、自己免疫性疾患に似た症状を呈することが多いことも報告されている。ほかにも帯状疱疹を繰り返し発症する場合も多い。
発病期

血液中のCD4陽性T細胞がある程度まで減少していくと、身体的に免疫力低下症状を呈するようになる。

多くの場合、最初は全身倦怠感、体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の過労、帯状疱疹、過呼吸めまい、発疹、口内炎、発熱、喉炎症、など、風邪によく似た症状のエイズ関連症状を呈する。また、顔面から全身にかけての脂漏性皮膚炎などもこの時期に見られる。大抵これらの症状によって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明してくる。

その後、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞の減少と同時に、普通の人間生活ではかからないような多くの日和見感染を生じ、ニューモシスチス肺炎カポジ肉腫悪性リンパ腫皮膚がんなどの悪性腫瘍サイトメガロウイルスによる身体の異常など、生命に危険が及ぶ症状を呈してくる。また、HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤し、脳の神経細胞が冒されるとHIV脳症と呼ばれ、精神障害認知症記憶喪失を引き起こすこともある。

通常、感染したと認められてから長期間経過したあとに、以下の23の疾患(AIDS指標疾患という)のいずれかを発症した場合にAIDS発症と判断される。.mw-parser-output .bquote cite{font-style:normal}

A.真菌症1.カンジダ症食道気管気管支)2.クリプトコッカス症(肺以外)3.コクシジオイデス症(1)全身に播種したもの(2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの4.ヒストプラズマ症(1)全身に播種したもの(2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの5.ニューモシスティス肺炎(P. jiroveci)

B.原虫症6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

C.細菌感染症9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの)(1)敗血症(2)肺炎(3)髄膜炎(4)骨関節炎(5)中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)(※)12.非結核性抗酸菌症(1)全身に播種したもの(2)肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの

D.ウイルス感染症13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、、リンパ節以外)14.単純ヘルペスウイルス感染症(1)1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの(2)生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの15.進行性多巣性白質脳症

E.腫瘍16.カポジ肉腫17.原発性脳リンパ腫18.非ホジキンリンパ腫19.浸潤性子宮頚癌(※)

F.その他20.反復性肺炎21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎)23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

(※);HIVによる免疫不全を示唆する所見がみられる者に限る。

?厚生労働省,感染症法に基づく医師の届出のお願い[6]
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出典検索?: "後天性免疫不全症候群" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2017年1月)

HIVの初期症状は、発熱、リンパ節の腫れ、咽喉の痛み、だるさ、口内炎、発疹、慢性的な下痢、筋肉痛などであり、風邪やインフルエンザの症状と全く変わらず、症状から感染を判断することは難しい。また、潜伏期間が10年と長く感染に気付きにくい。よって、下記の感染の可能性のある行為の経験がある場合は、早めに保健所などでの検査を受けることが重要となる。

HIVは通常の環境では非常に弱いウイルスであり、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することはない。一般に感染源となりうるだけのウイルスの濃度をもっている体液は血液精液膣分泌液母乳が挙げられる。一般に感染しやすい部位としては粘膜粘膜、膣粘膜、口腔粘膜など)、切創や刺創などの血管に達するような深いなどがあり、通常の傷のない皮膚からは侵入することはない。そのため、主な感染経路は以下の3つに限られている。
性的感染

性行為による感染では、性分泌液に接触することが最大の原因である。通常の性行為では、女性は精液が膣粘膜に直接接触し血液中にHIVが侵入することで感染する。男性は性交によって亀頭に目に見えない細かいができ、そこに膣分泌液が直接接触し血液中にHIVが侵入する事で感染する。そのため、性交でなくても性器同士を擦り合わせるような行為でもHIV感染が起こる恐れがある。また肛門性交では腸粘膜に精液が接触しそこから感染するとされている。腸の粘膜は一層であるため薄く、HIVが侵入しやすいため、膣性交よりも感染リスクが高い。コンドームの着用がHIVの性的感染の予防措置として有効である。ただし使用中に破れたり、劣化したものを気付かずに使用する場合があるため、完全に感染を防ぐことができるとはいえない。コンドームの使用に際しては、信頼できる製品を使用期限内に正しい用法で用いることが推奨される。また割礼によって感染リスクが低減するという研究結果が複数ある。傷つきやすく、免疫関連細胞の多い包皮を切除することで、HIVの侵入・感染が抑えられるためだと考えられている。なお口腔で性器を愛撫する場合も、口腔内に歯磨きなどで微小な傷が生じていることが多く、そこに性分泌液が接触することで、血液中にウイルスが侵入するおそれがある。
血液感染

感染者の血液が、傷、輸血麻薬の回し打ちなどによって、血液中に侵入することで感染が成立する。特に麻薬・覚醒剤中毒者間の注射器・注射針の使い回しは感染率が際立って高い。以前は輸血や血液製剤からの感染があったが、現在では全ての血液が事前にHIV感染の有無を検査され、感染のリスクは非常に低くなっている。医療現場においては、針刺し事故などの医療事故による感染が懸念され、十分な注意が必要である。
母子感染

母子感染の経路としては3つの経路がある。出産時の産道感染、母乳の授乳による感染、妊娠中に胎児が感染する経路である。産道感染は子供が産まれてくる際、産道出血による血液を子供が浴びることで起こる。感染を避ける方法として、帝王切開を行い母親の血液を付着させない方法があり、効果を上げている。母乳による感染が報告されており、HIVに感染した母親の母乳を与えることは危険とされている。この場合は子供に粉ミルクを与えることによって、感染を回避することができる。胎内感染は、胎盤を通じ子宮内で子供がHIVに感染することで起こる。物理的な遮断ができないため、感染を回避することが難しい。感染を避ける方法として、妊娠中に母親がHAART療法により血中のウイルス量を下げ、子供に感染する確率を減らす方法がとられている。
HIV感染予防薬


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