彼氏彼女の事情
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演出のコンセプトは「最初にリアリティのある美術背景を見せることで世界観を確立させて、その他は漫画と舞台のモンタージュにして綿密な舞台装置の描写を省略する」というものだった[3]。その結果、信号機や風景での心象表現・庵野作品を含む様々な作品のパロディやギャグ要素の挿入・原作漫画のカットや実写映像の利用・さらには「劇メーション」と呼ばれる一風変わった描写の使用など、実験的なものも含めて様々な演出表現が用いられている[4]

アイキャッチには、各話のエピソードを象徴するような四字熟語が表示されていた。次回予告には宮沢月野役の渡邉由紀と宮沢花野役の山本麻里安を中心としたアフレコ現場の映像が用いられた。

オープニング曲のプロデュースは庵野と親交のあった藤井フミヤが担当。エンディングでは「夢の中へ」のカバーに合わせ、毎回異なる実写映像が流れた。また、劇中でも「インヴェンション第8番」「ゴルトベルク変奏曲-アリア」などのクラシックや、挿入歌に「S・O・S」のカバー、アバンタイトルに「正太郎マーチ(鉄人28号)」や「宇宙戦艦ヤマト」など、過去の著名曲が各所で使用されている。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では本作の劇中音楽の一部が流用されている。

オープニングは、まず最初に「テレビを見(み)る時(とき)は部屋(へや)を明(あか)るくして離(はな)れて見(み)て下(くだ)さい」との注意書きが表示され、その直後にオープニングが放送される流れである。オープニングの終盤の製作のテロップ表示後は提供テロップと音声が被さり、オープニングが提供バックを兼ねる作りとなっており、注意書きから提供バックまでがセットになっている。また番組終わりの提供バックは犬(宮沢家の飼い犬)のアニメになっているなど、凝った作りとなっている。

配役に関しては、高校生役の多くがテレビアニメ初出演となっている。これは既存声優に対して限界を感じていた庵野の発案であり、有名な声優は極力起用せずに大規模なオーディションを催した。特に新谷真弓・山本密(現:山本大介)に至っては庵野からの直接のオファーによって起用された[3]。このため元々実写畑・舞台畑の役者や新人声優が多数起用され、後に各方面で活躍している。また、制作面でも今石洋之佐伯昭志など当時若手だったスタッフの起用が目立っている[4]。通常のアフレコとは違い、セミプレスコとして仮編集の映像で声優が台詞を入れ、音声を優先して絵のタイミングや各カットの尺を変更、同時にタイムシートの変更や原画チェックも行う作業を行っていた。これはスケジュールを圧迫した原因の一つにもなり[5]、庵野は「今のテレビアニメの制作システムでは、役者優先は難しかった。でも既にできた絵のイメージを通り越して、役者特有のトーンができたのは独特の面白さがあった」と苦労と手応えについて振り返っている[3]

ガイナックスがセル画からデジタル制作へ移行する過渡期に作られた作品でもある。
原作との相違点

ACT25.0や総集編などを除けば、漫画でのネームをそのまま台本として使えるほど原作に忠実なセリフ回しだが、作画や演出における相違点は当然ある(テレビアニメ版は庵野の意向によりギャグ要素をより強調している[6][7])ほか、オリジナルの展開もある。特にACT25.0「これまでと違うお話」では、主人公の妹である宮沢花野をヒロインにした全編オリジナルストーリーが展開された。

番外編『桜の林の満開の下』は原作と同じく物語途中に組み込まれているが、アニメ版では『ACT0.5』と幕表示されている。また、放送当時は原作の連載が終了しておらず、終盤にはアニメ側のストーリー進行が原作側にほぼ追いついたという事情もあり、物語としては完結させずに最終話を迎えている。最終回は、雪野と有馬の物語が一段落したところで佐倉と十波のエピソードを一話入れ、「彼と彼女(男と女)の物語は、つづく」という形で終了させている。

原作では一年生の夏休み明けにあたるタイミングでアニメ化発表がなされ、原作はその後しばらく休載した。連載再開時に原作の画風が変化していたこと(それまでの丸みを帯びた画風が相対的に直線的で清楚なものになっている)とアニメ化の関係、およびアニメ終盤の展開との関係[6]が取りざたされたが、詳細は不詳である。放送期間中の原作では、やはりアニメ化との関連か「初号機」などの『エヴァ』ネタが登場したこともあった。
スタッフィング

鶴巻和哉監督による新作アニメ(後に『フリクリ』として発表される)の企画が難航して制作に入れず、『エヴァ』で集まったスタッフを留めておく為に急遽立ち上げられた企画である。そのためオリジナル企画を立ち上げる時間的余裕がなく、庵野監督としては初となるマンガ原作付きの監督作品となった。

参加したスタッフの内、佐伯昭志は第8話で原画デビューを果たした[8]。また、作画監督を務めた高村和宏は、キャラクターの服を調べるために雑誌を集めていたと2003年のインタビューの中で振り返っており、「別にシャツなんかちょっとくらい形変わってても気にはならないはずなんですけど、実際にあるものだから探してみないと、不安なんですよね。もし違ってたらと思うと。」とも話している[8]
監督降板劇

第14話のテレビ東京による納品拒否により、放送内容に責任を持てない状況で監督を続けられない、というのが表面上の理由となっている。

実際それは理由の一つではあったが、庵野監督の方法論・作業がスケジュールを圧迫する最大要因となっていた為、この作業を無くし普通のアニメ制作方法にすることでスケジュールを巻き戻すのが最大の理由であったという。スケジュールとスタッフの自主性や自由度を守る為に、怒って自ら辞める形にしたとのこと[9]

ただし、監督を降板したとは言っても毎日制作現場に来てチェックや指示を出しており、普通の監督としての作業は行っていた。その為、実際は監督を降板したとは言わない状況であった。また第26話に関してはスケジュールがきつかった為、積極的にスタッフのコントロールを行い、第14話以前に戻ったような積極的な監督作業を行っている[10]
スタッフ

原作 - 津田雅美(
白泉社LaLaコミックス刊)

企画 - GAINAX

監督 - 庵野秀明(第1話 - 第15話)→あんのひであき(第16話)→アンノヒデアキ(第17話 - )、佐藤裕紀(第16話 - )

アニメーションキャラクターデザイン - 平松禎史

美術監督 - 佐藤勝

美術設定 - 平澤晃弘、服部由美子

色彩設定 - 高星晴美

撮影監督 - 黒澤豊

編集 - 三木幸子

音響監督 - 庵野秀明

音響プロデューサー - 中野徹(第17・20話のみ音響監督の役職名でクレジット)

音楽 - 鷺巣詩郎

オープニングテーマプロデュース - 藤井フミヤ

エンディング撮影協力 - 摩砂雪、シネバザール

プロデューサー - 小林教子、柳沢隆行、大月俊倫

アニメーション制作プロデューサー - 阿部倫久、松倉友二佐藤裕紀→神村靖宏

アニメーション制作・2Dデジタルワークス - J.C.STAFF、GAiNAX

製作 - テレビ東京SOFTXガンジス

主題歌
オープニングテーマ「天使のゆびきり」
作詞 -
藤井フミヤ / 作曲・編曲 - 有賀啓雄 / 歌 - 福田舞

ACT1.0?ACT5.0、ACT7.0はOPなし

エンディングテーマ「夢の中へ
作詞・作曲 - 井上陽水 / 編曲 - 光宗信吉 / 歌 - 榎本温子鈴木千尋

一部ACTで榎本のソロ歌唱、またはカラオケバージョンあり。

ACT25.0 エンディングテーマ「風邪ひいた夜」
作詞・作曲・編曲 - 松浦有希 / 歌 - 渡邉由紀山本麻里安
ACT6.0 挿入歌「S・O・S
作詞 - 阿久悠 / 作曲 - 都倉俊一 / 歌 - 渡邉由紀、山本麻里安
各話リスト

『ACT14.0 - 14.6』および『ACT24.25 - 24.75』は総集編となっている。

回話数・サブタイトル(アイキャッチの四字熟語)脚本絵コンテ演出作画監督放送日
1ACT1.0 彼女の事情 (油断大敵)庵野秀明
今石洋之
佐伯昭志安藤健平松禎史1998年
10月2日
2ACT2.0 二人の秘密 (塞翁失馬)大塚雅彦


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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