形而上学
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ソクラテスプラトンも、現象の背後にある真因や真実在、「ただ一つの相」を探求した。

しかし、形而上学の学問的な伝統は、直接的には、それらを引き継いだ古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『形而上学』に始まる[3]。彼の著作は西暦30年頃アンドロニコスにより整理されたが、その際、『タ・ピュシカ』(: τ? φυσικ?, ta physika、自然(についての書))に分類される自然学的書作群の後に、その探求の基礎・根本に関わる著作群が置かれた。その著作群は明確な名を持たなかったので、初期アリストテレス学派は、この著作群を、『タ・メタ・タ・ピュシカ』(τ? μετ? τ? φυσικ?、自然(についての書)の後(の書))と呼んだ。これが短縮され、『メタピュシカ』(: μεταφυσικ?、: metaphysica)として定着、後の時代の各印欧語の語源となり、例えば英語では「メタフィジックス」(metaphysics)という語となった。

上記のごとく、書物の配置に着目した仮の名称「meta physika(自然・後)」が語源なのだが、偶然にも、その書物のテーマは自然の後ろの探求、すなわち自然の背後や基礎を探るものであり、仮の名前が意味的にもぴったりであったため、その名のまま変更されずに定着した[注釈 3]。アリストテレスの著作物の『形而上学』では存在論神学普遍学と呼ばれ西洋形而上学の伝統的部門と現在みなされている三つの部分に分けられた。また、いくつかのより小さな部分、おそらくは伝統的な問題、すなわち哲学的語彙集、哲学一般を定義する試みがあり、そして『自然学』からのいくつかの抜粋がそのまま繰り返されている。

存在論は存在についての研究である。それは伝統的に「存在としての (qua) 存在の学」と定義される。

神学はここではあるいは神々そして神的なものについての問いの研究を意味する。

普遍学は、全ての他の探求の基礎となるいわゆるアリストテレスの第一原理の研究と考えられる。そのような原理の一つの例は矛盾律「あるものが、同時にそして同じ点で、存在しかつ存在しないことはありえない」である。特殊なリンゴは同時に存在し、かつ存在しないことはありえない。普遍学あるいは第一哲学は、「存在としての (qua) 存在」を扱う―それは、誰かが何かある学問の個別的な詳細を付け加える前に全ての学問への基礎となるものである。これは、因果性実体元素といった問題を含む。

中世

アリストテレスの形而上学は、その後、中世におけるアンセルムスアクィナスなどによる神学的な研究を経ながら発展してきた。中世のスコラ学では、創造者たるを万物の根源であるとして、神学的な神の存在証明を前提とし、普遍存在自由意思などなどの形而上学的問題を取り扱ったのである。
近世

近代に入ると、デカルトは、スコラ学的な神学的な神の存在証明を否定し、絶対確実で疑いえない精神を、他に依存せず存在する独立した実体と見、その出発点から、理性によって神の存在(および誠実さ)を証明するという方法をとった。ジョン・ロックはデカルトの生得説を批判したが、やはり神の存在は人間の理性によって証明できるとした(いわゆる宇宙論的証明)。

これらの大陸合理論経験論に対して、人間自身の理性的な能力を反省するカントは、神の存在証明は二律背反であるとして理性の限界を示し、理論的な学問としての形而上学を否定した[3]。カントは、その著書『プロレゴメナ』において、それまでの形而上学を「独断論」と呼んで批判し、ヒュームが独断論のまどろみから眼覚めさせたとした。以後、哲学の中心的なテーマは、認識論へと移っていった。
現代

19世紀から20世紀の現代の形而上学の時代になると、近代に解明された理性と経験の対立を踏まえながら、存在論的な研究が発展することになる。生の哲学を展開したアンリ・ベルクソン現象学を発展させたハイデガーなどは新しい形而上学の方法論によりながら人間の存在をめぐる意識や社会について研究している[3]

20世紀前半に活躍したウィーン学団論理実証主義を奉じ、その立場から形而上学を攻撃した。その代表的論客カルナップは意味の検証理論に則り、形而上学の命題は経験的にも論理的にも検証ができないがゆえに無意味であると主張した。彼によれば、経験的に形而上学で出てくる「存在」や「形相」のような語が用いられている命題の正しさを検証できないし、そのような命題は論理的にも検証できない。彼は分析命題と総合命題の区別に則っており、ここで論理的に検証できるのは分析命題である[4]


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