弾倉
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前者は強度において勝り破損の危険性も少なく、弾薬が必ず同じ位置から給弾されるため銃本体の設計もシンプルになるが、手動での装填が比較的難しく[注 5]、弾倉内で二列の弾薬が一列に絞り込まれる際に摩擦が生じ、目詰まりが起こって給弾不良を起こす危険性がある。一方後者は手動での装填が比較的容易で[注 6]、目詰まりの危険性も低いが、弾薬が左右から交互に給弾されるため銃本体の設計がやや複雑になり、遊底などの全幅を確保する必要がある。マガジン自体については、開口部が大きく開いてしまうため内蔵ばねの劣化によって弾薬が飛び出したり抜け落ちたり、破損変形して給弾不良を起こす危険性がある。サイズに制約が多い拳銃ではシングル・フィードが、対照的に自動小銃ではダブル・フィードが多く採用されている。さらに、スオミ KP/-31短機関銃やスペクトラ M4(英語版)短機関銃のように、4列が並んだ「複々列式」も存在し、ドラムマガジンに近いレベルの大容量化が可能だが、重すぎて取り回しが悪くなる問題も生じあまり普及していない。
ドラムマガジン

多くの弾丸を収納し、ゼンマイ動力で送り出す円筒形の弾倉[注 7]。近年のものには、後方が透明のプラスチック製で残弾が容易に確認できるものもある。

構造が複雑で目詰まりしやすい上にコストが高く、重くかさばるため複数個を持ち運ぶことが難しい。装弾時に強力なゼンマイの力で指を骨折や切断してしまう事故もしばしば起こったため、特に第二次世界大戦後は用としては少数派である。この他、軽機関銃用として弾帯を丸めて収納しただけで、中身にゼンマイなどの給弾機構を備えないドラムマガジン型コンテナもある[注 8]。また、それから派生した単なる布袋の弾倉もある。
パンマガジン

「パン」とは平たい鍋のことであるが、日本語では円盤型、形とも呼ばれる弾倉。ドラムマガジンの一種とみなされる場合もある。ルイス軽機関銃用のパンマガジンは下面が開放されており、内部の螺旋状の溝が切られた中心軸に弾頭を挿し込んで保持されており、ゼンマイ動力で装填位置へ送り出す。またM61 バルカンのドラム型弾倉は、ルイス機銃の弾倉を長く引き伸ばしたような要領になっている。この他、DP28軽機関銃は円盤型保弾板上に先端を円の中心に向けてぐるりと配置され、やはりゼンマイ動力で送り出す。使用する弾薬が旧式で、薬莢がリム付き(.22LR弾7.62x54mmR弾.303ブリティッシュ弾など)であることが多い。ルイス軽機関銃の様に射撃時に弾倉自体が回転する物もあった。ほとんどの場合、薬室上部に水平に設置される[注 9]が、シャテルロー(Chatellerault) M1931のように側面に垂直に設置されるものもある[2]

装弾数は多いが大型で重く、物によっては破損しやすいなど問題もあり、現代ではこの形式を採用している銃はごく少ない。
ヘリカルマガジン

細長い円筒形または多角柱で、内部の螺旋状の溝に多くの弾丸を収納し、銃の前方下部や後方上部に銃身と並行に取り付けられる。スパイラルマガジンとも呼ばれる。

採用例はキャリコM100PP-19 ビゾンなど。比較的新しい形式で、採用している銃はごく少ない。

多数の弾薬をコンパクトな空間に収められるという利点があるが、構造が複雑な上、前後に細長い形状のため残弾が減少するにつれて弾倉の、そして銃全体の重心位置が変わってバランスが崩れる。更に大型で重く、装着時に作動用発条のテンション調整に手間が掛かるという欠点がある。
チューブマガジン

細長い形の管状弾倉。脱着式の場合もあるが、その長さから来る取り扱いにくさから固定式である場合が圧倒的に多い。単純な円管とコイルスプリングで製作できるため、歴史的に最初に実用化された弾倉形式であり、まだ前装式単発銃の時代、1779年のジランドーニ空気銃まで遡るとされる[注 10]。後にウィンチェスターライフル他のレバーアクション(英語版)型小銃に採用され、現代では散弾銃[注 11]用として使用されている。多くの場合、銃身下へ並行して取り付けられるが、スペンサー銃のように銃床に内蔵される場合もある。

実包は一列に並べられるので、センターファイア弾では尖頭弾が一発前の実包の雷管に干渉するため、暴発を防止するために平頭弾しか使えないとされている。例外として、ルベルM1886小銃は弾丸の先端をその一発前の薬莢部に雷管を避ける角度で当てるよう設計されており、尖頭弾の使用を可能にしている。その他にヘリカルマガジン同様、発射に伴って重心位置が移動してしまうなどの欠点がある。



その他

この他、上部に寝かせて設置され、装填直前に弾倉内部で実包が90度回転する機構をもつ特殊な細長いボックスマガジン[注 12]や、複数本のチューブを束ね、手動で回転させることでチューブを素早く切り替えることができる手動回転式チューブマガジン[注 13]、ロータリーマガジン[注 14]などがある。

内蔵型では、ボックスマガジンと同じ原理だが実包を手動で一発ずつ、ないしストリッパー・クリップを用いて一括で装填するボックス型[注 15]、脱着式の挿弾子を実包ごと押し込み装填するエンブロック・クリップ[注 16]、ロータリー型[注 17]、垂直に立てた円盤へ360°放射状に実包を全周配置するターレット型[注 18]、銃身内部に複数の弾薬を連ね、いわば銃身兼弾倉であるメタルストームなど。

多数の弾薬を確実に押し出せるバネや、弾薬を自力で引き込む装弾のカラクリが開発される以前の連発式火器であるガトリング砲では、上側から重力により弾薬を落とし込む自重落下型(あるいはホッパー型)が採用された。近代以後でも弾薬が大型で重い20-40mmクラスの対空機関砲などには、何発かまとめたクリップを次々と上から載せていく方式の固定式弾倉(ホッパー式)がある。日本十一年式軽機関銃も、小火器としては珍しくこの方式で、5発ずつクリップにまとまった実包を重ね装填していくが、ホッパー弾倉自体は保管や運搬、整備のため容易に取り外すことができる。
脱着式と固定式

脱着式と固定式では、固定式の方が再装填に時間がかかることから、法規制の厳しい狩猟用やホビー用などに限られる傾向があり、軍事用途や警察・法執行機関用途では圧倒的に脱着式のものが多く採用されている。

脱着式の弾倉は、により形状と大きさが明白に異なることが多い。たとえばM16系とAK系の弾倉は、特徴を掴めば一目で見分けることができる。しかし、同じ弾薬を用いる場合、たとえばルガー・ミニ14AR-15の弾倉、M16と89式5.56mm小銃の弾倉を一目で見分けるのは難しいが、共用できるよう最初から規格が合わせてある場合が多い。逆に、外見が良く似ているAK-47/AKM系とAK-74では使用弾薬が異なるため、暗所でも手触りで区別できるように弾倉に識別用の刻みを入れたり、銃側にも銃床の中央に溝を入れるなど、工夫がなされている。ポーチなどから引き抜きやすくするため、指をかける穴がついたゴム製ストラップも販売されており、マグプルの製品が有名であるためマグプルと通称される。
関連項目



銃の部品

STANAG マガジン

ジャングルスタイル

弾薬盒

弾薬箱

タクティカルリロード

脚注[脚注の使い方]
注釈^ FALM16の初期型など、ライフル弾でも20発程度であれば弾倉の底面を斜めにする事でストレート形状を保つ事が多い。
^ ZB26軽機関銃ブレン軽機関銃九九式軽機関銃など、主にライフル弾を使用する軽機関銃で採用される。短機関銃での事例としてはオーウェン・マシンカービンやF1サブマシンガンがある。
^ MP18ステン短機関銃スターリング短機関銃一〇〇式機関短銃など、主に拳銃弾を使用する短機関銃で採用される。
^ AK-74など。
^ マガジンリップの隙間から装填済みの弾薬を押し下げてスペースを確保しつつ新たな弾薬を滑り込ませる必要があり、装弾数が増えるほどバネのテンションが強くなり作業が困難になる。
^ マガジンリップの上からパチパチと新しい弾薬を押しこむだけで装填できる。
^ トンプソン・サブマシンガンPPSh-41など。


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