強迫性障害
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調査によると全人口の2-3%前後が強迫性障害であると推測されている[14]

20歳前後の青年期に発症する場合が多いといわれるが、幼少期、壮年期に発症する場合もあるため、青年期特有の疾病とは言い切れない。また、動物ではイヌネコなども発症し、毛繕いを頻繁に繰り返したりする。「常同症」も参照

また、こうした障害を持っている著名人としてデビッド・ベッカムらがいるように、外部からは日常生活に顕著な影響が見えない場合もある。一般的に、支障がない場合は”障害”ではない。

この病気の患者の特徴は、他の精神的病と違って、本人が病気を自覚していることである。本人もわかっているのだが、治せないのがこの病気といえる。重症患者を除き、社会生活に支障のないレベルの患者は、外では他人に病気であることが気がつかれないように、儀式も人前では我慢して行わず、病気のことを隠し通す。そして、他人に見られる心配のない家の中で、症状を隠さずあらわにし、儀式行為を気が済むまで行うケースが多いとみられる。
原因詳細は「強迫性障害の原因」および「強迫性障害の生物学」を参照

神経症の一型だが、神経症の原因とされる心因(心理的・環境的原因)よりも、大脳基底核、辺縁系、脳内の特定部位の障害や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常が推定され、発症メカニズムとして有力視されている。ストレスフルな出来事のあとで発症することもあるが、多くは特別なきっかけなしに徐々に発症する。

また、元々真面目、几帳面などの性格(強迫性格)の人に多い傾向がある。
生物学的要因
大脳基底核説
大脳基底核障害が強迫性障害の発症に関与している可能性のあることが報告されている
[15]
側頭葉・辺縁系説
人間は何度も行う必要がないことに対して大脳が抑制をかけるが、それが機能しなくなったときに強迫が現れるし、セロトニン系が大きく関与していることが報告されている[16]
前頭葉説
眼窩前頭皮質が持つ制御機能が低下すると、強迫症状が現れるというモデルが提唱されている[17]
心理的要因「セルフコントロール」および「コントロールフリーク」も参照

レオン・サルズマンは、強迫性格は今日もっともよくみられる性格であり、すべてをコントロールしようとし、それが可能であるという万能的な自己像をもつ点が特徴であることを指摘している[18]。強迫とは、同じ思考を反復せざるを得ない強迫観念と、同じ行為を繰り返さざるを得ない強迫行為を指すが、これらの症状の背後には強迫症者の持つ自己不全感が関与している。行為や思考を強迫的に反復して完全を期すことは、自己不信という根源的不安を防衛し、自己の完全性を維持することに繋がる。精神病理学者の笠原は、「人生における不確実性、予測不能性、曖昧性に対する防衛」と強迫症をとらえ、そうした不安に対して「単純明快な生活信条、狭隘化した生活様式を設定して、確実で予測可能な世界を構築できるという空想的万能感を抱いている」と述べている[19]。統合失調症患者が人格解体の危機に際して少なからず強迫症状を呈するのは、着実に増加してくる内的不確実感を「強迫」によって防衛していると考えられ、この機制は様々な精神疾患で見られることがある。心理的側面から見た強迫的行動パターンは、無力感と自己不確実感を克服しようとする試みであると捉えられる。

ただし自閉症スペクトラムを抱える人物が強迫性障害を併発しやすいことが報告されるなど、上のような心理的メカニズムによってのみ強迫性障害が発症するものではない。またセロトニンの濃度が脳の一定の部位で高まると強迫症状が強まることが確認されており、強迫性障害は脳そのものの生物学的病態だと捉えるのが現在の主流学説である[20]
鑑別

鍵をかけたかを数度確認する程度では無害であり、あるいは2時間の祈りが宗教的に周りの人々にもみられる慣習であれば、逸脱だとはみなされず正常である[21]。約5%は統合失調型パーソナリティ障害との並存で、強迫行為が非合理的だという洞察もなく治療が困難である[21]強迫性パーソナリティ障害は名前が似ているが、強迫行為はほとんどなく並存することはほとんどない[21]

強迫性障害から除外される他の状態には。うつ病でのとらわれ、チック症の反復的な動き、摂食障害における反復される過食や嘔吐、自閉症スペクトラム障害の決まり切った儀式、薬物依存症全般性不安障害の過剰で「現実的な」不安、など様々である[21]

DSM-IVの診断基準E、DSM-5の診断基準Cは、強迫症状が薬や身体疾患の影響ではないことを要求している。物質・医薬品誘発性強迫性関連障害(DSM-5)には、薬の使用後に生じ、使用を中止するとその半減期に従って症状が止み、コカインを含む精神刺激薬の中毒、また重金属や毒素が挙げられる。他の医学的疾患による強迫性関連障害(DSM-5)は、生理学的に強迫症状を生じさせる病気にかかっていることが確認されており、例えば線条体損傷など既存の文献に確認できる症状を呈し、せん妄以外の場合に症状が確認されている場合である。
治療

英国国立医療技術評価機構 (NICE) は成人のOCDに対し、初期介入としては低強度の心理療法を提案しなければならないとし、個人単位でのCBT/ERPセルフヘルプ、電話による個別CBT/ERP、グループによる10時間以上のCBT/ERPを挙げている[1]。また成人の中程度のOCDには、SSRIまたはより強度の高いCBT/ERPを提案すべきとしている[1]。深刻な成人のOCDには、SSRIとCBT/ERPを組み合わせるべきとしている[1]

また児童青年のOCDへの初期介入として、NICEは軽度であればガイドつきのセルフヘルプを提案し、中度から深刻であればCBT/ERPを提案すべきであるとしている[1]


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