どのようなときに強迫観念や強迫行為が生じにくい/生じやすいかについての気づきをサポートし、それにより強迫観念や強迫行為をコントロールできる可能性を上げるのも、大切な支援となる[27]。
また、本人が強迫行為を行っていないときや生き生きと過ごしているときに、承認・称賛などの肯定的な言葉かけを行うことで、自己肯定感の向上をサポートすることもできる[28]。強迫に関すること以外でのコミュニケーションを増やしたり、本人の良いところや好きなことを認めて自尊心を高めたりする関わりが、功を奏す場合もある[27]。
加えて、強迫行為の回数や時間が減ってきた時には、それが些細な変化であったとしても見逃さず、本人の頑張りをしっかりと認めることが重要である[27]。 薬物療法としてセロトニン系に作用する抗うつ薬は強迫観念を抑えることが知られており、現在の日本では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) である塩酸パロキセチン、マレイン酸フルボキサミン、塩酸セルトラリンもしくは三環系抗うつ薬である塩酸クロミプラミンなどが用いられる。 NICEは成人のOCDに対し薬物療法を行うのであれば、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムの5つのSSRIから一つを選ぶべき(should)であるとしている[1]。 日本国外の報告では最高用量で単剤投与が望ましいとされているため、塩酸クロミプラミンでは225mg、塩酸パロキセチンでは60mg、マレイン酸フルボキサミンでは300mgまで増量する場合がある。これらは主治医の理由書があれば保険適応となるが、日本人の体格、体質ではこれらの条件が必ず満たされるものではないため、処方される薬の種類や用量には個人差がある。 およそ10パーセントの強迫性障害患者は治療後悪化する。この場合、脳神経外科治療または脳深部刺激療法(DBS)が施される(電気痙攣療法と経頭蓋磁気刺激法の有効性は証明されていない)。 脳神経外科治療は小さい範囲で脳切除される。その主要な内容は前嚢切開、大脳辺縁系ロボトミー、帯状回切除、ガンマナイフ治療。研究によれば脳神経外科治療を行った35%-50%の強迫性障害患者に症状の改善が見られる。脳神経外科治療のリスクとしててんかん発作、人格変化などが挙げられる[14]。 2009年2月19日には、重症の強迫性障害への脳深部刺激療法 (DBS) の使用がアメリカ食品医薬品局 (FDA) に承認された。同年7月14日、欧州でも承認された。メドトロニック社のReclaimという機器である。 アリゾナ大学の精神科医、Francisco A. Moreno等が実施した小規模な臨床試験の結果、幻覚誘発きのこマジックマッシュルームの成分であるシロシビン (psilocybin) は重症の強迫性障害 (OCD) に有用と示唆された。シロシビン服用によって、試験に参加した9人の強迫性障害症状はおよそ4-24時間にわたって完全に消失した。シロシビンは禁止されている薬物であるが、医学研究で使用することは可能である。 近年の研究において、強迫性障害がNMDA型グルタミン酸受容体と関連していることが判明し、この受容体に対するアンタゴニスト(拮抗薬)が(特に難治性の強迫性障害に対して)治療効果を持つのではないかと予想されている[30]。NMDA型グルタミン酸受容体アンタゴニストとしては、アルツハイマー型認知症の改善薬であるメマンチンや麻酔薬として使われるケタミンが知られている。現在のところ、エビデンスが存在しない薬理学上の予測に過ぎないが、米国では既に臨床実験が開始されている[31]。 2016年8月報告では、SSRIのフルボキサミンと抗生物質ミノサイクリン100mgを併用した10週間の臨床試験で、イェールブラウン強迫スケール イノシトールは、パニック障害や強迫性障害の患者が服用することで、その症状を緩和する作用が報告されており、不安感の発生頻度や、その程度を顕著に低下させる効果があるとされる。また、イノシトールの高用量摂取が、フルボキサミンより症状の軽減に効果があったとする論文報告もある。[33][34]
薬物療法
漢方薬、甘麦大棗湯、桂枝加竜骨牡蠣湯
脳神経外科治療
脳深部刺激療法
研究事例
強迫性障害の有名人・扱った作品