強迫性障害
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その中で、「エクスポージャー後、時間が経過するとともに、不安や不快感が自然と少なくなる」ということや、「強迫行為をしなくても、実際には恐れていることは起こらない」「強迫観念は、実際には気にする必要のないものだった」ということを患者が体感・認識できるようサポートする[22]

エクスポージャー・儀式妨害を実施する際には、患者が同じ状況での他者(治療者など)の考え方・行動などを参考にする、モデリングの技法も非常に役立つ[23]。また、強迫行為をやめることで得られる利益を認識できるようサポートするなど、治療に対する意欲を維持できるようにする工夫も大切である[24]。なお、このような曝露反応妨害法は単独でも用いることができるが、強迫観念が強い場合、薬物療法と並行して行う方が成功体験が得られやすい。
行動実験

さらに、強迫観念の内容が現実には起こりえないことを理解するため、そして曝露反応妨害法のスムーズな導入へとつなげていくため、行動実験が行われる場合があり、その有効性と必要性が指摘されている[9]。先行研究の事例では、「Aしたら/Aの場合/Aが原因で、Bになる/Bが起こる」という強迫観念を持っていた場合、「実際にAをしてみても/Aを再現してみても/Aがあっても、Bにならない/Bが起こらない」ということを体験できるようサポートし、スムーズな曝露反応妨害法の導入へとつながっていった[9]
モデリング

加えて、曝露反応妨害法を実施する際に補助的に用いられることの多い技法として、モデリングがある[25]。具体的には、治療メカニズムと治療課題をよく説明した後、曝露反応妨害法の実施に先立って、治療者が治療課題であるエクスポージャーと儀式妨害を実際にやってみせる(適度な時間の手洗いをしてみせたり、鍵の確認を一度で済ませてみせたりする)[25]。これにより患者は、実際に曝露反応妨害法でどのようなことを行えばよいのかを明確に理解できるのに加えて、「強迫行為をしない治療者のやり方で、実際には何も恐れていることが起こらない」という考えを強めることもできるため、不安を少し軽減した状態で曝露反応妨害法に取り組むことができる[25]
その他の心理療法

嫌な単語が繰り返されるタイプの強迫観念(前記)のみの場合は行動療法が行いにくいため、強迫行為を伴う場合よりも治療が困難である。強迫観念の内容を現実的に解釈しなおしたり、強迫観念を回避したり阻止したりせずそのままにするといった治療方法が有効であることが知られてきた[26]

どのようなときに強迫観念や強迫行為が生じにくい/生じやすいかについての気づきをサポートし、それにより強迫観念や強迫行為をコントロールできる可能性を上げるのも、大切な支援となる[27]

また、本人が強迫行為を行っていないときや生き生きと過ごしているときに、承認・称賛などの肯定的な言葉かけを行うことで、自己肯定感の向上をサポートすることもできる[28]。強迫に関すること以外でのコミュニケーションを増やしたり、本人の良いところや好きなことを認めて自尊心を高めたりする関わりが、功を奏す場合もある[27]

加えて、強迫行為の回数や時間が減ってきた時には、それが些細な変化であったとしても見逃さず、本人の頑張りをしっかりと認めることが重要である[27]
薬物療法

薬物療法としてセロトニン系に作用する抗うつ薬は強迫観念を抑えることが知られており、現在の日本では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) である塩酸パロキセチン、マレイン酸フルボキサミン、塩酸セルトラリンもしくは三環系抗うつ薬である塩酸クロミプラミンなどが用いられる。

NICEは成人のOCDに対し薬物療法を行うのであれば、フルオキセチンフルボキサミンパロキセチンセルトラリンエスシタロプラムの5つのSSRIから一つを選ぶべき(should)であるとしている[1]

日本国外の報告では最高用量で単剤投与が望ましいとされているため、塩酸クロミプラミンでは225mg、塩酸パロキセチンでは60mg、マレイン酸フルボキサミンでは300mgまで増量する場合がある。これらは主治医の理由書があれば保険適応となるが、日本人の体格、体質ではこれらの条件が必ず満たされるものではないため、処方される薬の種類や用量には個人差がある。
漢方薬

漢方薬として柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、甘麦大棗湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、抑肝散加味逍遥散五苓散六君子湯等漢方薬が有効なこともある。症状に合わせて使い分ける。[29]
脳神経外科治療

およそ10パーセントの強迫性障害患者は治療後悪化する。この場合、脳神経外科治療または脳深部刺激療法(DBS)が施される(電気痙攣療法経頭蓋磁気刺激法の有効性は証明されていない)。

脳神経外科治療は小さい範囲で脳切除される。その主要な内容は前嚢切開、大脳辺縁系ロボトミー帯状回切除、ガンマナイフ治療。研究によれば脳神経外科治療を行った35%-50%の強迫性障害患者に症状の改善が見られる。脳神経外科治療のリスクとしててんかん発作、人格変化などが挙げられる[14]
脳深部刺激療法

2009年2月19日には、重症の強迫性障害への脳深部刺激療法 (DBS) の使用がアメリカ食品医薬品局 (FDA) に承認された。同年7月14日、欧州でも承認された。メドトロニック社のReclaimという機器である。


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