強迫性障害
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人間は何度も行う必要がないことに対して大脳が抑制をかけるが、それが機能しなくなったときに強迫が現れるし、セロトニン系が大きく関与していることが報告されている[16]
前頭葉説
眼窩前頭皮質が持つ制御機能が低下すると、強迫症状が現れるというモデルが提唱されている[17]
心理的要因「セルフコントロール」および「コントロールフリーク」も参照

レオン・サルズマンは、強迫性格は今日もっともよくみられる性格であり、すべてをコントロールしようとし、それが可能であるという万能的な自己像をもつ点が特徴であることを指摘している[18]。強迫とは、同じ思考を反復せざるを得ない強迫観念と、同じ行為を繰り返さざるを得ない強迫行為を指すが、これらの症状の背後には強迫症者の持つ自己不全感が関与している。行為や思考を強迫的に反復して完全を期すことは、自己不信という根源的不安を防衛し、自己の完全性を維持することに繋がる。精神病理学者の笠原は、「人生における不確実性、予測不能性、曖昧性に対する防衛」と強迫症をとらえ、そうした不安に対して「単純明快な生活信条、狭隘化した生活様式を設定して、確実で予測可能な世界を構築できるという空想的万能感を抱いている」と述べている[19]。統合失調症患者が人格解体の危機に際して少なからず強迫症状を呈するのは、着実に増加してくる内的不確実感を「強迫」によって防衛していると考えられ、この機制は様々な精神疾患で見られることがある。心理的側面から見た強迫的行動パターンは、無力感と自己不確実感を克服しようとする試みであると捉えられる。

ただし自閉症スペクトラムを抱える人物が強迫性障害を併発しやすいことが報告されるなど、上のような心理的メカニズムによってのみ強迫性障害が発症するものではない。またセロトニンの濃度が脳の一定の部位で高まると強迫症状が強まることが確認されており、強迫性障害は脳そのものの生物学的病態だと捉えるのが現在の主流学説である[20]
鑑別

鍵をかけたかを数度確認する程度では無害であり、あるいは2時間の祈りが宗教的に周りの人々にもみられる慣習であれば、逸脱だとはみなされず正常である[21]。約5%は統合失調型パーソナリティ障害との並存で、強迫行為が非合理的だという洞察もなく治療が困難である[21]強迫性パーソナリティ障害は名前が似ているが、強迫行為はほとんどなく並存することはほとんどない[21]

強迫性障害から除外される他の状態には。うつ病でのとらわれ、チック症の反復的な動き、摂食障害における反復される過食や嘔吐、自閉症スペクトラム障害の決まり切った儀式、薬物依存症全般性不安障害の過剰で「現実的な」不安、など様々である[21]

DSM-IVの診断基準E、DSM-5の診断基準Cは、強迫症状が薬や身体疾患の影響ではないことを要求している。物質・医薬品誘発性強迫性関連障害(DSM-5)には、薬の使用後に生じ、使用を中止するとその半減期に従って症状が止み、コカインを含む精神刺激薬の中毒、また重金属や毒素が挙げられる。他の医学的疾患による強迫性関連障害(DSM-5)は、生理学的に強迫症状を生じさせる病気にかかっていることが確認されており、例えば線条体損傷など既存の文献に確認できる症状を呈し、せん妄以外の場合に症状が確認されている場合である。
治療

英国国立医療技術評価機構 (NICE) は成人のOCDに対し、初期介入としては低強度の心理療法を提案しなければならないとし、個人単位でのCBT/ERPセルフヘルプ、電話による個別CBT/ERP、グループによる10時間以上のCBT/ERPを挙げている[1]。また成人の中程度のOCDには、SSRIまたはより強度の高いCBT/ERPを提案すべきとしている[1]。深刻な成人のOCDには、SSRIとCBT/ERPを組み合わせるべきとしている[1]

また児童青年のOCDへの初期介入として、NICEは軽度であればガイドつきのセルフヘルプを提案し、中度から深刻であればCBT/ERPを提案すべきであるとしている[1]。それらの心理療法が効果を示さない場合はSSRIが選択肢ではあるが、自殺リスク増加が指摘されているため副作用を注意深く観察すべきであるとしている[1]
心理療法
曝露反応妨害法

認知行動療法 (CBT) では、エクスポージャーと儀式妨害を組み合わせた、曝露反応妨害法 (ERP) が用いられる。エクスポージャーとは、不安や不快感が発生する状況に自分を意図的にさらすもので、儀式妨害とは、不安や不快感が発生してもそれらを低減するための強迫行為をとらないという手法である。これらを患者の不安や不快感の段階に応じて実施する。その中で、「エクスポージャー後、時間が経過するとともに、不安や不快感が自然と少なくなる」ということや、「強迫行為をしなくても、実際には恐れていることは起こらない」「強迫観念は、実際には気にする必要のないものだった」ということを患者が体感・認識できるようサポートする[22]

エクスポージャー・儀式妨害を実施する際には、患者が同じ状況での他者(治療者など)の考え方・行動などを参考にする、モデリングの技法も非常に役立つ[23]。また、強迫行為をやめることで得られる利益を認識できるようサポートするなど、治療に対する意欲を維持できるようにする工夫も大切である[24]。なお、このような曝露反応妨害法は単独でも用いることができるが、強迫観念が強い場合、薬物療法と並行して行う方が成功体験が得られやすい。
行動実験

さらに、強迫観念の内容が現実には起こりえないことを理解するため、そして曝露反応妨害法のスムーズな導入へとつなげていくため、行動実験が行われる場合があり、その有効性と必要性が指摘されている[9]


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