強制性交等罪
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1907年の強姦罪制定時は、加害者は男性に限られ、被害者は女性とされていた[36][23]。女性は結婚相手以外の人と性交をしてはいけない「姦通」といった概念があり、家制度を守るために、「貞操」に対する罪として捉えられていた[36][11][61][62]。性は、長らく「権利の問題」ではなく、家父長制や家族といった「あるべき規範」に縛られ、性暴力は「あってはならないことがおこってしまった」という観点から、被害者が責められ、告発しにくい状況があった[36][11]。戦後は、「性的自由」の問題とするのが一般的となったが、「強姦」被害者の対象を女性のみにし、男性を含めないのは、女性の貞操への意識を残した差別的取り扱いではないかなどの批判もあった[63][36]
2004年の改正
強姦罪の
法定刑の下限を、懲役2年以上から3年以上に引き上げた[37]

集団強姦罪が新設された[64][20][65]。単独犯の強姦罪は親告罪で法定刑は3年以上であるのに対し、集団強姦罪は被害者の訴えがなくても検察官が起訴できる非親告罪であり、4年以上の懲役とした[64][20][65]


衆参両議会の法務委員会の附帯決議で、性犯罪の在り方についてさらなる検討が求められた[38][14]

集団強姦等罪(2004年創設、2017年廃止)

2004年の改正の際に、強姦罪等よりも重い刑を科すために創設されたが、2017年の改正で、強制・準強制性交等罪が非親告罪になり法定刑が5年以上に引き上げられて、集団強姦罪(旧刑法178条の2)の法定刑の4年以上を超えたため、廃止された[38][64][20]。集団強姦等致死傷罪(旧刑法181条3項。無期または6年以上の懲役)も廃止され、強制性交等致死傷罪(刑法181条。無期または6年以上の懲役)に含められた[38][66]

集団強姦等罪は、2003年5月18日のインカレサークルの集団強姦事件であるスーパーフリー事件を受けて、2004年の刑法改正で創設された[67][65]。2人以上の者が共同して強姦(準強姦含む)した場合に適用され、性別不問で実際に性行為に参加していなくても、その場に居れば刑罰が成立していた[68]
2010年の第3次男女共同参画基本計画における見直し

2010年、第3次男女共同参画基本計画で女性に関するあらゆる暴力の根絶が掲げられ、2015年末までに強姦罪などの「非親告罪化」「性交同意年齢引き上げ」「『暴行・強迫』を要する構成要件の見直し」が提案された[38][39]
強姦罪の非親告罪化(告訴するかどうかの選択を迫られているように感じる被害者の心理的負担。被害者が低年齢の場合、告訴ができるかという懸念の存在)。

性交同意年齢の引き上げ(13歳以上であれば性交がどのような行為か理解し、同意を自分で判断できるかが不明。性犯罪は10 -20歳の若年層が最も被害にあいやすい[20])。

「暴行・脅迫」を用いることを要件とする強姦罪の構成要件の見直し(被害者が恐怖や加害者の社会的地位への配慮により抵抗しないこともあるため)。

国際的観点からの問題点

性暴力について、日本は国連自由権規約委員会を始め、多くの国際的な条約機関から法改正の勧告を受けている[69][70]

2008年11月、国連自由権規約委員会は、「男女間の性交渉のみをの強姦罪の対象としていること」「攻撃に対する被害者の抵抗が犯罪の要件にされていること」「裁判官が被害者に抵抗したことの証拠を求めること」「被害者が13歳未満である場合以外は告訴が必要なこと」「加害者が公正な処罰を免れること」「被害者の支援が実行されていないこと」「性暴力の専門的な研修を受けた医療者が不足していること」等に懸念を示した[71] [72] 。委員会は、刑法第177条の強姦罪の定義を拡大し、「男性に対する強姦」と共に「近親相姦」「性交渉以外の性的虐待」も重大な犯罪とし、「被害者が攻撃に対して抵抗したことを立証しなければいけない負担を取り除くこと」「被害者の告訴がなくても起訴できるようにすること」「裁判官や警察官などに対する性暴力についてのジェンダーに配慮した研修を行うこと」を求めた[72]

2014年、国連自由権規約委員会は、数ある問題点のうち「強姦罪の構成要件(攻撃に対する被害者の抵抗)の見直し」「性交同意年齢の引き上げ」「性犯罪の非親告罪化」について勧告した[69][70]

2017年の改正(強制性交等罪に改称)

強姦罪から「強制性交等罪」、準強姦罪から「準強制性交等罪」に変更された。強制と準強制性交等罪の刑の重さ(量刑)は同じで、5年以上20年以下の有期懲役である[73][74][33]

強制性交等罪(刑法第177条旧規定)は、「暴行・脅迫」を用いた13歳以上の者への性交肛門性交口腔性交(以下「性交等」)、13歳未満の者への性交等に対する罪である[73][74][33]

準強制性交等(刑法第178条旧規定)は、被害者の「心神喪失」や「抗拒不能」な状況に乗じ、またはそのような状態にさせて性交等を行った場合に、「暴行・脅迫」がなくても罪に問えるものである[73][74][33]。準強制性交等の適用範囲は広く、「心神喪失」とは、アルコール薬物精神障害失神・睡眠・泥酔などから、自身の性行為について正常な判断ができない状態にある場合をいい、「抗拒不能」とは、手足を縛られたり、催眠術・錯誤・畏怖の状態など、物理的・心理的に抵抗ができない状態にあった場合をいう[11][注釈 1]


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