不同意性交等罪では、条文に「有効な同意」ができない8つの典型的な場面を例示した[7][4]。8つの類型には、「暴力・脅迫」だけでなく、「心身の障害がある場合」「アルコール・薬物を摂取している場合」「睡眠・意識不明瞭な場合」「拒絶する隙を与えない不意打ち」「恐怖・驚愕させた場合」「虐待による心理的反応がある場合」「地位・関係性が対等でない場合」が明記され[7][4][52]、それに類する行為により「同意しない意思の形成、表明、全う」のいずれかが難しい状態にさせたり、そうした状態に乗じたりして、性行為をした」場合は処罰される[17][5]。 「不同意性交等罪」という名称は、内心(不同意であったこと)のみを成立要件とはしていないが、「同意がない性行為は性犯罪になる」という性犯罪処罰規定の本質をメッセージとして伝えている[11][7][4]。被害者が性行為に不同意である客観的な状況を条文の中で明確に規定しているため、法の明確性を守りつつ、これまでは処罰ができなかった加害者に対して適切な処罰が出来るようになる可能性がある[11][53][4]。
不同意性交等罪では、男性器だけでなく、体の一部(指など)や物を膣や肛門に挿入することも「性交」扱いになった[8][9][10]。配偶者(夫婦)間の不同意性交等の罪が成立することも明文化された[54]。性的部位や下着などを盗撮したり拡散することを取り締まる「性的姿態撮影罪」(撮影罪)も新設された[5][55][56]。公訴時効は10年から15年に延長され、被害者が未成年の場合は被害だと認識できるまでに時間がかかることなどから、公訴時効の起点を18歳とする[57][58][59]。
大人から子どもへの、地位や信頼を利用した性暴力への対策も強める[57][58]。性的行為の意味を理解し同意ができるとみなす「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げ、16歳未満と性的行為を行った場合は、同意の有無に関わらず処罰の対象になる[57][58][60]。ただし、13 - 15歳の場合は、5歳以上年上の者が処罰の対象になる[57][58]。16歳未満をわいせつ目的で金銭提供を約束するなどして手なずけ、会うように仕向けたり、性的な自撮り画像などを送らせることを取り締まる「性的面会要求罪」も新設された[5][55][56][58]。強制わいせつ罪(刑法第176条
)と準強制わいせつ罪(刑法第178条)も統合し、罪名を「不同意わいせつ罪」(刑法第176条)に改めた[57]。1907年の強姦罪制定時は、加害者は男性に限られ、被害者は女性とされていた[36][23]。女性は結婚相手以外の人と性交をしてはいけない「姦通」といった概念があり、家制度を守るために、「貞操」に対する罪として捉えられていた[36][11][61][62]。