2017年の法改正では刑法に明文化されなかったが、現状では夫婦間であっても、ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)に該当する強制性交の罪が問われるという考え方が有力であり、内閣府は「『嫌がっているのに性的行為を強要する』『中絶を強要する』『避妊に協力しない』といったものは、夫婦間の性交であっても、刑法第177条の強制性交等罪に当たる場合があります(夫婦だからといって、暴行・脅迫を用いた性交が許されるわけではありません)」と説明している[108][109][92][110]。
戦前は「夫婦間で強姦罪は成立しない」とする否定説が通説であり、その後も家父長制よる女性差別的な価値観やプライベートな問題であることなどから、夫婦間の強制性交の問題が語られることは少なかった[92]。そのような中で、徐々に「強姦罪が夫婦間で成立するか」という議論がされ、裁判でも争われるようになった[92][注釈 2]。
2023年の法改正で、配偶者(夫婦)間の不同意性交等の罪が成立することが、刑法に明文化された[54]。
2019年3月の無罪判決「フラワーデモ」も参照フラワーデモ東京の参加者が作ったメッセージボード
2019年3月、性犯罪に関する無罪判決が4件相次ぎ、刑法の要件が厳しすぎるため加害者が罪を免れているとして、各地で被害の実態を訴える「フラワーデモ」が始まるきっかけとなった[42][44][113]。特に、19歳の実娘への性的暴行罪が問われた判決では、娘の同意がないと認めながら無罪としたことから大きな波紋を呼んだ[44][40][73]。この4件のうち1件は検察官が控訴せず無罪が確定したが、3件は控訴により逆転有罪となった[73][90][40][114]。
3月12日、テキーラなどを大量に飲まされ、酩酊状態で性交をされた準強姦罪が、「女性は『抗拒不能』であったが、被告人は女性が抗拒不能であったことの認識がなく、性交について承諾ありと誤信した」として、故意が否定されて無罪判決になった[74]。2020年2月5日、控訴審が行われ、前回と同じ証拠で逆転有罪判決となった[74]。
3月19日、静岡地方裁判所の裁判員裁判で審議された強制性交等致傷罪が、「被告人の暴行が女性を抵抗困難にした」と認定されたものの、「被告は女性が抵抗困難であったことの認識がなく、故意が認められない」として無罪判決になった[115][90][11]。この裁判では検察官が控訴せず、無罪が確定した[73][90][11]。
3月26日、事件当時19歳の実娘が父親に性交をされた準強制性交等罪が、「娘の同意がなく長年の虐待で父親の精神的支配下に置かれていた」と認定されたものの「抗拒不能だったとはいえない」として無罪判決になった[44][40][73]。長女は、中学2年生の頃から性交を含む性的虐待を受け続け、殴る蹴るなどの暴行の存在も認定されていた[44][40]。2020年3月12日、控訴審が行われ、「娘は性的虐待を受け続けたうえ父親から学費や生活費の返済を迫られるなど、要求を拒否できない心理状態だった。性欲のはけ口にした卑劣な犯行で被害者が受けた苦痛は極めて重大で深刻だ」として逆転有罪判決となった[44][40][73]。