強制性交等罪
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この8つの行為や状況は、今までの「抗拒不能」要件の解釈として、それぞれの裁判例でゆるやかに解釈して処罰されていた事案を類型化し、判断基準となるよう明確な文言に書き出したものである[4][14][11][53]。「抗拒不能」の解釈は、裁判官や警察官によって大きな幅があったため、判決や被害届の受理などの対応がバラついていた[53][14]。処罰される範囲が広がったのではないが、条文の中で明文化することにより、警察官の被害届の受理、検察官の起訴、裁判官の有罪にする確率に影響を与え、処罰されるべきものが適切に処罰されるようになる可能性がある[53][14][11][4]

公訴時効の延長。被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいという性被害の特徴を踏まえ、不同意性交等罪について、公訴時効が10年から15年に延長された[134][8]。被害者が未成年の場合は、被害だと認識できるまでにより時間がかかることなどから、時効の起点を18歳とする(例えば15歳で被害を受けた場合は、18歳+15年=33歳まで公訴が可能)[57][58][8][59]
世界の性交同意年齢
  13   14   15   16   17   18   結婚しなければならない   州や行政区によって異なる/曖昧

性交同意年齢の引き上げ。「性交同意年齢」(性行為を断る方法や、性行為のリスクに関する正しい知識を持っていると見なされる年齢)を、現在の「13歳以上」から「16歳以上」に引き上げた[134][142][139]。これにより、16歳未満の子どもと性的行為をすると、相手が同意していても処罰の対象になる[15]。ただし、13 - 15歳については同世代間の行為は罪に問わず、5歳以上年上の人が対象になる[139][134][8]。13歳未満に対して性的行為を行った場合は、以前と同様に、同意の有無に関わらず罪に問われる[134]。性交同意年齢の変更は、1907年に性犯罪の法律が定められてから初めてである[143]

体の一部(指など)や物の挿入も「性交」扱いになった[8][9][10]。強制性交等罪は、男性器を肛門口腔内に挿入する/させる行為を処罰対象としていたが、改正刑法では、「膣または肛門に身体の一部または物を挿入する行為」も性交と同じ扱いにすると定めている[8][10]。これにより、電車内の痴漢行為などで、相手の膣に指を入れた場合も強制性交の罪になり、5年以上の懲役となる[13][46]

配偶者(夫婦)間の強制性交等の罪が成立することが明文化された[54]

被害の聴取結果を録音・録画した記録媒体を、証拠として出せる特則がついた[13][11]

性的面会要求罪」が新設された[4][13][144]。16歳未満の子どもに対してわいせつ目的で、「だましたり誘惑したり、お金を渡す約束などをして会うことを要求した場合や実際に会った場合」「性的な自撮り画像などを撮らせてSNSやメールなどで送るよう求めた場合」は罪に問われる[4][13][144]。面会や画像の「要求」で1年以下の拘禁刑か50万以下、実際に会ったり送らせた場合は2年以下の拘禁刑か100万以下の罰金刑になる[4][145]。ただし、被害者が13 - 15歳の場合は、5歳以上の年齢差を適用の条件としている[4]

性器や下着、性交の様子などを盗撮したり、拡散することを取り締まる「性的姿態撮影罪(撮影罪)」が新設された[5][56][58]。これまでは、各都道府県の迷惑防止条例違反で規制していたため、客室乗務員の航空機内での盗撮は、場所が特定できなければ取り締まることができなかった[146][147]。全国一律の法律になったことで摘発が容易になる[146][147][148]。罰則も3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金に統一され、盗撮画像などの提供や拡散も処罰の対象となる[148]

5年後に性被害の実態や社会の意識、特に性的同意についての意識も踏まえて見直しを検討することや、「不同意性交罪」の時効の延長について、被害申告の困難さに関する調査をするという附則が付いた[50][5][8][51]

2023年の改正の課題

性犯罪の被害者などは、改正を評価する一方で、公訴時効については、被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいという性被害の特性から、さらなる延長・撤廃が必要だとしている[57][49][149]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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