強制性交等罪
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

構成要件が変わっても、証拠がなければ有罪にならないことは変わらないため、客観的な証拠を残すための検査キットや24時間証拠採取ができる医療機関、ワンストップ支援センターにおける証拠保全体制の強化など、被害者支援の拡充を求めている[14][157]。また、立証責任が検察官にあることも変わらないため、検察官が丁寧で慎重な捜査・審議を行い、冤罪を防ぐための取締りの可視化や弁護人の立会権、勾留期間の短縮などが求められている[14]

刑事弁護士は、新たに設けられた8項目には、要件が明確なものと曖昧なものが混ざっているとして、「処罰される対象が事実上広がり、えん罪を生むおそれがある」と懸念を示している[134][158]。この懸念について、元刑事裁判官法政大学法科大学院の水野智幸教授は、「これまで裁判官が抽象的な条文を基準に考えていたことを明文化した形で、処罰範囲を拡大するものではないと考える」「これまでは何が犯罪か抽象的でわかりづらかったので被害の申告や捜査がしづらい面があったが、それが解消されるので、本来処罰されるべきものがきちんと捜査され、有罪とされるケースは増えるだろう」「具体的な要件を当てはめる際に安易に拡大適用をしてはいけないし、その意識を捜査機関と裁判所が徹底し、本来処罰されるべきでない人が処罰されないようにする必要がある」と述べている[4]

被害の実態

強制性交等の認知件数[159]年度認知件数被疑者被害者
男女男女
2021年1,3881,2447581,330
2020年1,3321,1734721,260
2019年1,4051,1726501,355
2018年1,3071,0844561,251
2017年1,1099064151,094
2016年98987140989

2020年度に内閣府が行った調査では、異性から無理やり性交された経験があると答えた女性は14人に1人だったが、そのうち警察に相談したのはわずか6.4%である[160][161][162]。さらに客観的な証拠が無い場合、被害届が警察に受理されないというケースもあり[92][74][40]、「強姦事件」としてカウントされるのは、ほんのわずかである[160][161][162]。また、男性は100人に1人が無理やり性交された経験があったが、誰にも相談していない割合が女性よりも高く、被害者の多くが1人で苦しんでいる実態が分かった[160][163][162]

内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」の相談件数は2021年度に5万件以上あったが、誰かに相談できた被害者のうち、ワンストップ支援センターに相談した人は0.6%だった[164][165][41][166]。性暴力の被害に遭ったときの対応には、証拠の採取や緊急避妊薬を飲むなど、急を要するものがあるが、性暴力の被害に関する電話相談のうち、72時間以内に寄せられたものは14.7%だった[165][41]。一方で、同年度の警察による強制性交等の認知件数は1388件にとどまっている[167][41]国連薬物犯罪事務所(UNODC): 人口10万人あたりのレイプ報告件数(2011年)。左から2番目が日本

国ごとに「強姦事件」が成立する条件が異なるため、日本は統計上は強姦の発生率が低い国になっている[168][161]。先進国で強姦事件の認知件数が最も多いスウェーデンでは、「強姦」は、肛門への指や物の挿入や、自慰行為の強制等も含まれる[161]。2018年からは「暴行・脅迫要件」も撤廃され、「イエス」という自主性を確認できない性行為は犯罪になった[161][169][170][171][43][172]。また、被害届を出しやすい環境も整っている[173]ストックホルムのレイプ救急センターは365日24時間体制で被害者を受け入れ、被害から10日後までレイプキットによる検査ができる[173]。検査結果は6カ月間保管されるため、被害者が検査や治療、カウンセリングを受け、一連の処置が終わった後に警察へ届け出を出すかどうかを考えることができる[173]。男性被害者専門のカウンセラーが対応する男性のレイプ救急センターも併設され、トランスジェンダーの被害者も受け入れている[173]。子どもへの性教育も義務化され、危険から身を守る知識を学校で得られるよう、幼稚園の頃から、胸や性器といった他者が触れてはいけない部分があると教えている[43][174]。国際的に性教育は基本的人権の1つとされ、性行為や避妊方法、性暴力、性感染症、ジェンダー論など、包括的な性教育をおこなう国は少なくない[175][85]
日本においても2023年度から、性暴力被害者加害者傍観者にならないための新しい教育が始まった[176][177]。発達の段階ごとに「生命の大切さ」「自分や相手を尊重し、大事にすること」「性暴力の根底にある誤った認識や行動」「性暴力が及ぼす影響」「性暴力の被害にあったときの適切な対応の仕方」などを学習する[176][177][178]性犯罪の被害者が、学校で性暴力について正しく学んでいたため、ワンストップ支援センターに連絡し、事情聴取や刑事裁判を乗り切ることができたという事例も存在する[11][179]
被害者になった場合詳細は「性的暴行被害者の暴行後の対応(英語版)」および「レイプの影響と後遺症(英語版)」を参照

ひどい怪我を負わされた場合、迷わず救急車を呼ぶか、救急外来で手当を受ける[180]

女性被害者の約50%で性器または性器以外の外傷が生じる[181]。男性被害者は身体的外傷を負う場合が女性よりも多い[181]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:323 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef