引きこもり
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

また厚生労働省は「就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」と定義している[5]
定義と呼称の歴史

「引きこもり」とは英語からの訳語で、出典はアメリカ精神医学会編纂の『DSM-III』の診断基準におけるSocial Withdrawal(社会的撤退)という用語だった。

「引きこもり」の意味は時代とともに変化している。かつては、後述のように、隠遁や病気療養を指して使われたが、平成30年度(2018年度)の『厚生労働白書』では「様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたっておおむね家庭内にとどまり続けている状態を指す現象概念」と定義し、報告に一節を割いている。様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたっておおむね家庭内にとどまりつづけている状態を指す現象概念である。なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。 ? 思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究

なお、上記「引きこもり」の用法が生まれたのは平成年間以降である。原義は以下の通りである。「安心できる場所に退避する状態」 ? Association of Relatives And Friends of the Mentally Ill

元々は中国の歴史について記述した単行本や小説において、公職に就いていない、または官職を辞した状態を意味する用例が見られた[注釈 1]。なお、第2次橋本内閣までは、首相の病気による内閣総理大臣臨時代理辞令に「内閣総理大臣何某病気引きこもり中内閣法第九条の規定により……」と記載されていた。
ニートとの違い

引きこもりに類似する用語として、就学・就労していない、また職業訓練も受けていないことを意味する「ニート」(若年無業者)という用語がある。厚生労働省が実施した調査では、いわゆる引きこもりの状態にある者(調査では20 - 49歳)をニートの「就業希望を有しない者」に含めている[要出典]。
日本の状況

内閣府『若者の生活に関する調査報告書』(2016年) 満15歳から満39歳の者
狭義のひきこもり

ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける

自室からは出るが、家からは出ない

自室からほとんど出ない
17.6万人54.1万人
広義のひきこもり

ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する


人数の推計

厚生労働省の調査結果では、引きこもりを経験した者は1.2%、現在20歳代の者では2.4%が一度は引きこもりを経験していた。従来の調査では男性に多いとされていたが、2023年の内閣府の調査では、実は男女比の差は少なく、女性の引きこもり当事者が今まで表面化していないという問題があったのではないかという指摘が行われている(見過ごされてきた女性のひきこもりも参照せよ。)[6][7]

高学歴家庭では、約20人に1人が引きこもりを経験していた。家庭が経済的に困窮していたかどうかは引きこもりと関係ない。また、発達障害者が3割程度含まれることを確認した。

内閣府は、引きこもりの実態を把握するために、若年層(15歳 - 39歳)を対象に調査を行っている。しかし、引きこもりが長期化する人が増えていることから、2018年12月、中高年層(40歳 - 64歳)を対象とする初めての調査を行った。その推計では、中高年層における引きこもりは61万3000人に上る。内閣府の平成27年度(2015年度)調査では「不登校」「職場になじめなかったこと」、「就職活動がうまくいかなかった」「人間関係がうまくいかなかった」という、学生時代に直面した問題が引きこもりの切っ掛けとして上位に挙がっていた。しかし、平成30年度調査においては、「退職したこと(解雇・リストラ等が含むかは不明)」「人間関係がうまくいかなかったこと」「病気」「職場になじめなかったこと」という、社会人として直面する問題(職を失ったなど)が切っ掛けとして上位となっている。
高齢化と長期化

2010年代中盤まで、引きこもりは若者の問題であると考えられており、不登校問題と同一視されてきた経緯から、支援対象者は10歳代から20歳代を想定した場合がほとんどであった。内閣府は2016年9月、サンプル調査に基づき、15 - 39歳の若年層の引きこもりが全国で約54.1万人(統合失調症の者も含めた場合、約56.3万人)に上るとの推計を公表した。その内、準引きこもり(ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する。経済面では親に全面依存している)が約36.5万人、狭義のひきこもり(近所のコンビニなど近場以外に外出しない状態か殆ど家に出ない状態)が約17.6万人であった。内閣府調査で対象外だった40歳以上の引きこもりについて、 ⇒KHJ全国ひきこもり家族会連合会は、16万人いると推計している。

近年では引きこもりの長期化や、社会に出た後に引きこもりになってしまうケースなどにより、20歳代や30歳代以上が増加している。KHJが2016年から2017年にかけて実施したアンケートでは、引きこもりの平均年齢は33.5歳、40歳代も25%が占めた。引きこもりの平均期間は10.8年間で、調査対象の16%は20年以上に及んでいた。支える家族の平均年齢は64.1歳と高齢化している。2割近いという調査結果もある。

山形県が2013年に引きこもりの実態を調査したところ、15歳以上の県民のうち、引きこもりは1,607人だった。そのうち40代以上が717人だった。これはほぼ半数が高齢の引きこもりであるということを示している。

就職氷河期世代の高齢化などにより、引きこもりが中高年になっても続く傾向は2010年以前から指摘されていた。この年齢層では支援の方法も限られてしまい、支援団体でも支援対象者に年齢制限を設けている場合がある。引きこもりの子を養っている親が老年期に入ると、経済的・体力的に行き詰まってしまう場合が多い。このためKHJのように、中高年に達した引きこもりの子を持つ親も参加できる支援団体もあるほか、親の退職・死亡後も子が引きこもりから抜け出せないことを前提に、生活資金の確保や物価が安い地域への引っ越しといった「サバイバルプラン」を助言するファイナンシャルプランナーもいる。高齢化がさらに進むことで、後期高齢者になって介護が必要な80代の親と50代の引きこもりとの親子関係における問題があるとする「8050問題」についてメディアが積極的に追求・報道するなど社会問題に発展している。

政府の引きこもり支援は内閣府所管の「子ども・若者育成支援推進法」に基づき、当初は34歳までを上限としていたが、後に39歳までに変更し、支援対象者を年齢で線引きしてきた[8]。また、内閣府は引きこもりの実態を把握するために、15歳から39歳までの主に若者を対象に調査してきた。引きこもりが長期化する人が増えていることから、2018年12月、40歳から64歳を対象とする初めての調査を行ったところ、40歳から64歳で引きこもりの人は推計で61万3000人おり、内閣府が2015年度に実施した調査で1若年層を推計した54万1000人を上回っていた[9]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:84 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef