カメラは予め決められた場所に持っていって、カメラの位置・画面の切り方・実景等にこだわり、絵に対して意図的にコントロールしていった[8]。
作品は岩井俊二の影響を強く受けているように見えるとも言われており、全体的に岩井俊二テイストの音楽、編集、テロップなどが出てくるが、その映像の構図、撮り方などは庵野独特のものに他ならない。庵野特有の映像、カットが実写にも取り入れられ、映像作家として、彼の世界を垣間見ることができる。 原作者でもあり、主演でもある藤谷は「ラストの一部は精神性・観念的なイメージで書いた原作と一番違っていて、映画では会話で成り立たせた。『現実に流れている空気』が伝わるシーンでこれは実写だからこその醍醐味」「現場の人間として、少しは強くなれた様に思います。『遠慮する時はして、しなくていいときはしない』というやり方が少しわかりかけてきた様な気がするんですよ」「映画の根底にあり、ベースになっているものは、小説で自分が求めていたものと一緒だった」と感謝の意を示している[6]。 松蔭浩之は「ナレーションのインサートがたくさん入っていて、どうしても何度も泣いてしまうんですよ。特に『カントク』の独白はたまらなかった。チャールズ・ブコウスキーの小説を読んでいるみたいだった」「『カントク』の持っている雰囲気が、フランス映画で見られる『アンニュイ』『倦怠感』『退廃』ではなくて、日本人独特の『何かを持て余している。だけど、あがくのもなぁ』という『憂鬱』がポイント。『憂鬱』を描かせたら庵野さんが世界一だ」と称賛している[4]。 製作に関与した鈴木敏夫は「よく『自伝』と称した小説や映画があるが、そのほとんどが美化が入ったフィクションでしかない。しかし、庵野は違う。そもそも彼は『等身大の自分自身をそのままさらけ出すのが映画作りだ』とかたくなに信じこんでいるのだ。『式日』はその庵野秀明の映画作りが最もピュアにほとばしり出た作品になった。『新世紀エヴァンゲリオン』が好きな人は、ぜひ『式日』を見るといいと思う。より深く『エヴァ』の本質が分かる、いわば“副読本”みたいな映画だ」と話している[9]。
スタッフ
製作総指揮:徳間康快
製作:鈴木敏夫
原作:藤谷文子
監督・脚本:庵野秀明
特殊技術:尾上克郎(特撮研究所)
撮影監督:長田勇市
撮影:大沢佳子
照明:長田達也
ビデオポートレート撮影:岩井俊二
音楽:加古隆
音楽監督:岸健二郎
録音:橋本奏雄・清水和法
衣装:伊藤佐智子
ヘアメイク監督:柘植伊佐夫
美術:林田裕至
編集:上野聡一・庵野秀明(ノークレジット)[4]
音響効果:伊藤進一、林彦祐
助監督:大崎章、谷口正晃
VRX Supervisor:石井教雄(オムニバス・ジャパン)
挿入歌作・編曲:川井憲次
プロデューサー:高橋望・南里幸
エンディングテーマ:Cocco「Raining」
メインキャスト
岩井俊二 - 男・「カントク」
藤谷文子 - 原作、「彼女」、ナレーション(映像ソフト版の音声特典として収録)
村上淳 - 「自転車の男」
大竹しのぶ - 「彼女」の母親
松尾スズキ - ナレーション
林原めぐみ - ナレーション
評価
脚注[脚注の使い方]^ a b c d “庵野秀明が自身のキャリアを振り返る!【実写映画編】アニメで感じた限界と実写でしか撮れない映像とは?Part2
^ a b c d 徳間書店刊「アニメージュ」2000年10月号「式日 特報 庵野秀明×スタジオジブリ 実写を撮る」pp.8-9より。
^ 徳間書店刊「アニメージュ」2001年1月号「ガメラに恋して、式日で開花。」p.97より。
^ a b c d e f g 美術出版社刊「美術手帖」2001年4月号「[対談] 庵野秀明×松蔭浩之 視線の構造学と色彩の論理額」pp.16-21より。
^ “ ⇒THE GUEST VOLUME 02 スタジオジブリ プロデューサー論 岩井俊二×鈴木敏夫”. JAPAN FM NETWORK (2004年3月30日). 2023年4月19日閲覧。
^ a b c d e キネマ旬報社刊「キネマ旬報」2000年12月下旬号「作品特集 式日」pp.64-68より。
^ 美術出版社刊「美術手帖」2004年6月号「digi+KISHIN×庵野秀明 欲望の写し取り、緊張感の制御への挑戦」pp.32-33より。