廃線
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これに近い例として石川県南部の温泉地を結ぶ観光路線であった北陸鉄道加南線は、国鉄接続駅に優等列車が停まらなくなったことがだめ押しとなり、廃線に追い込まれた。類似のケースとして東北新幹線延伸に伴い、接続路線が青い森鉄道に移管されたことで優等列車が停車しなくなった影響を受けた十和田観光電鉄線がある。

乗客流動と関係しない例として、阪神甲子園線は廃止直前でも12分間隔で運行するなど比較的利用者があったが、車庫のあった阪神国道線が廃止されることとなり、道連れとなる形で廃止となった。
新線開業による廃線
線形の改良(急勾配の緩和など)新フルカトンネルの開通によって廃線となったアプト式線路。2010年に復活(スイス、オーバーヴァルト)。

技術の進歩により、長大なトンネル橋梁などの敷設が可能となったことを活かして、緩勾配で重量貨物列車が運行可能な新線が引かれ、それ以前の旧線が放棄されることがある。北陸本線東北本線などのように新線が旧線と全くかけ離れた場所に敷設され旧線が廃線となった事例もあるが、高度成長期には地域の利便性よりも都市間輸送に重点を置いた側面もある。また、電化に際してトンネルの断面が狭く、電化の障害になるとして新たなトンネルが開削され、旧トンネルとその取付部の区間が廃線となった例もある。

また勾配改良ではないが、急曲線が連続している区間のスピードアップや輸送力強化のため旧線に近い場所に緩い曲線の新線を設け、当該区間の旧線が廃線となった例もある。さらには、急勾配や急曲線の改良・電化のための新しいトンネルの開削などの複合的な改良を伴う新線の建設により、旧線が廃線となった例も多い。

なお、風光明媚な廃線が観光鉄道として復活する例がある。山陰本線の旧線[注釈 5] を転用した嵯峨野観光鉄道台湾鉄路管理局旧山線スイスマッターホルン・ゴッタルド鉄道新フルカトンネル開通に伴い廃線となった区間がフルカ山岳蒸気鉄道として復活した例などがある。
代替路線開業によるもの

上の例に似ているが、運行形態などの全く異なる新線を敷設したことで並行する在来の路線が廃止された例もある。

大都市部では従来の路線に並行して別の事業者による地下鉄路線を敷設し、その路線に乗り入れる運行形態に変更して従来の路線を廃止する事例が見られる。この例としては筑肥線博多 - 姪浜間・福岡市地下鉄1号線乗り入れ)・京阪京津線京津三条 - 御陵間・京都市営地下鉄東西線乗り入れ)・東急東横線横浜 - 桜木町間・横浜高速鉄道みなとみらい線乗り入れ)などが該当する。なお名鉄小牧線味鋺 - 上飯田間)は営業主体が変わらないため上記の「線形の改良」にも分類できるが、建設主体は別であり事業種別も「第1種」から「第2種」へ変更されていることから、この分類に該当する。

近年では、整備新幹線の開業に伴い並行する在来線の事業者が変わる場合もある。路線自体がなくなるわけではないが、JRの路線としては廃線扱いとなり、翌日からは新事業者による新規開業の扱いとなる。

これ以外の例としては、高規格・高速路線が並行区間・至近区間に開通したために在来路線が廃止された例も多々ある。例えば西大寺鉄道赤穂鉄道は国鉄赤穂線が開業したことにより廃止された。また、大阪市南部を走っていた南海平野線は、大阪市営地下鉄谷町線天王寺 - 八尾南間開通に伴い、大部分が並行区間となるため廃止された[注釈 6]北陸新幹線の一部先行開業で廃止された、並行在来線である信越本線横川 - 軽井沢間(碓氷峠)等、新幹線の開業に伴う廃止や経営分離も広い意味ではこれに当てはまる。

箕面温泉箕面鋼索鉄道等、かつて日本国内の数箇所に存在した温泉旅館内のケーブルカーは、現在は鉄道営業法上の正式な「鉄道」扱いのものはすべて廃線になっているが、これは技術革新による長大なエレベーターエスカレーターの設置が可能になったための廃線で鉄道の新線に置き換わったわけではないものの、広い意味でこの例に含めることができる。また、関電トンネルトロリーバスは、2019年に車両の更新に際して充電式のバスに置き換えられ、営業実態は大きく変わらないものの、鉄道事業法の適用される無軌条電車事業としては廃止された[1]

乗客数の増加に対して、複線化のための敷地確保の難しさや予算不足で廃止になった珍しい例もある。これに該当するのは単線の路面電車であった名鉄起線である。休止の時点でバスに代替され、バスが好評だったために1年後に正式に廃止された。他に同社の高富線などがある。

なお、路線の廃止を伴わず、単に別の線路に切り替えることによって線路が廃止されただけのものは、本項の意味での「廃線」には含めない。そのようなものは無数にあるが、例として、1970年代に近鉄大阪線の列車衝突事故を機に、まだ計画段階だった複線化計画を前倒しして工事を行った例がある。この例では、単線の旧線が複線新線の完成と共に切り替えられて廃止となっている。2017年現在、事故があった総谷トンネルを含む旧線のトンネルは残存しているものの、線路は取り払われている。この例のように線路の変更が大規模な場合、路線の廃止を伴っていなくても「廃線」と呼ばれる場合もある。
公共事業によるもの

ダム建設予定地にかかっていたり、河川道路の改修などの公共事業において障害となるため廃止・線路付け替えとなった路線もある。これは東武伊勢崎線鐘ヶ淵駅 - 北千住駅 - 西新井駅間。荒川放水路建設に伴うルート変更)、大井川鐵道井川線福塩線飯田線の各一部区間などが該当する。この場合は旧線での営業を続けながら新線を建設し、運休期間をほとんど作らないことが多いが、東急新玉川線(2000年に田園都市線に編入)のように、旧線である玉川線とは別途で免許を取得し、玉川線の廃止から新玉川線の開業までに8年近くの期間が開いた事例もある。また稀な例ではあるが、新線の完成前に旧線からルートの異なる暫定的な新線へ切り替えた例もあり、草木ダム建設時の足尾線(現:わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線)がその一例である。

また名鉄岐阜市内線岐阜駅前 - 新岐阜駅前間は道路工事のため2003年12月から営業休止となったが、この区間は岐阜市内線が不採算のため2005年3月末で全線廃止となったため、その後一度も電車が走ることがないまま廃止されてしまった。

また名岐バイパス建設に伴い、交差する踏切回避のために立体交差化か廃線かの判断を迫られて結局廃線となった名鉄一宮線や、わずか半年間の一時的な地方博に過ぎないぎふ中部未来博覧会開催に伴いアクセス道路の自動車通行の阻害になることを指摘され廃線となった名鉄岐阜市内線(長良線)も、ここに含められるものである。
線路が新線の建設予定地にあったことによる廃線

新線の建設予定地に既存の鉄道路線がある場合、線路用地確保のためにその鉄道路線が廃止された例もある。江若鉄道名鉄挙母線宮崎交通線は、国鉄新線の建設(それぞれ湖西線岡多線日南線)における用地確保のため廃止された。

他にも定山渓鉄道の一部は札幌市営地下鉄南北線の、南海天王寺支線の一部は大阪市営地下鉄堺筋線の、土佐電気鉄道安芸線土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線(計画時は国鉄阿佐線)用地の一部になっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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