庄屋
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、江戸時代の役職について説明しています。

長崎県に本社のある和食ファミリーレストラン「庄屋」については「庄屋フードシステム」をご覧ください。

「庄屋拳」と呼ばれるゲームについては「狐拳」をご覧ください。

東京都に本社のある飲食店の「庄や」については「大庄」をご覧ください。

江戸時代を通じて河内国渋川郡鞍作村の庄屋を務め、周囲10か村の庄屋総代も務めた豪農奥田家の住宅(大阪市)

庄屋(しょうや)・名主(なぬし)・肝煎(きもいり)は、江戸時代の村役人である地方三役の一つ、郡代代官のもとで村政を担当した村の首長[1]。いずれも中世からの伝統を引く語で、庄屋は「荘(庄)園の屋敷」、名主は「中世の名主 (みょうしゅ)」からきた語とされている[2][3]。概して、庄屋は関西で、名主は関東で、肝煎は東北北陸で用いられる[4]。庄屋の多くは、武士よりも経済的に裕福で、広い屋敷に住み、広大な農地を保有し、また、文書の作成に携わるという仕事柄、村を代表する知識人でもあった[5]江戸時代に庄屋を務めた家系は、もともと名門家系だったことが多く、戦国武将の有力な家臣が、江戸時代に入って庄屋となったケースは、かなり見られる[5]
概要

大名は10万以上になるとトップクラス(「大大名の石高」参照)であるが、それよりも裕福であった大庄屋もいたと伝えられている[6]。有力家による世襲が多く、庄屋の呼称は関西、北陸に多く、関東では名主というが、肝煎というところもある[2]東北地方ではもっぱら肝煎という(「肝入」と書くことも多い)。城下町などの町にも町名主(まちなぬし)がおり、町奉行、また町年寄(まちどしより)のもとで町政を担当した[7]。身分は町人[8]。町名主の職名は地方・城下町によってさまざまである。(都市別職名は地方城下町の名主を参照。)
村の庄屋・名主
機能横須賀藩主大須賀忠次が大石宗兵衛を遠江国城飼郡池新田の名主に任じる判物(『松平忠次判物』慶長19年1月15日、個人蔵)[9]。「其方名主ニ申付候𫝂。」[9]と記されている

村請制村落の下で年貢諸役や行政的な業務を村請する下請けなどを中心に、村民の法令遵守上意下達・人別支配・土地の管理などの支配に関わる諸業務を下請けした。社会の支配機構の末端機関に奉仕する立場上、年貢の減免など、村民の請願を奉上する御役目もあった。このような村民側に位置する機能を「惣代機能」と呼ぶ。このように支配階級の末端としての面と被支配階級の代表者としての面を共に持つのが庄屋であり、かかる蝙蝠的性格が近世を通じて庄屋・名主の立場を曖昧なものとし、その社会的機能を不明朗なものとした。

用水路など土木工事を発注し監督もした。

庄屋の身分百姓であったが、地元の有力な豪農が多く、地侍など戦国大名家臣だった者も少なくない。したがって初期の庄屋には勝手気ままな振る舞いをすることがあり、村方騒動のなかには庄屋の年貢・村入用不正や村民に対する私的夫役を原因としたものが多い。しかし庄屋の私的権力領主によって規制され、その力には一定の制約があった。基本的に豪農・富農・大地主など、村の有力者が庄屋となった。近世後期に至り領主権力が弱体化すると、幕藩領主は庄屋・名主の惣代機能を否定しようと試みるが、「取締役」などの新たな役職を設置する場合があり、近世を通じて庄屋・名主の惣代機能を払拭することはできず、明治政府の課題として持ち越されることになった。

身分としては百姓ではあるものの、一般農民よりは一段高い階層に属し、その屋敷を構えたり、母屋に式台を設けることができ、着衣や履物にも特例が許されていた(物や雪駄の着用)。日常業務を自宅で行い、庄屋宅には組頭等の村役人が集まり、年貢・村入用の割当てをしたり、領主から命ぜられる諸帳簿や、村より領主への願書類等の作成に当った。

また領主からの触書、廻状類は、それを帳面に書き写したうえで、原文を定使に命じて隣村へ持って行かせた。ほとんどの公文書には庄屋の署名捺印が必要とされ、村人相互の土地移動(主として質地)にも庄屋の証印が必要とする場合が多く、それゆえ最低限の読み書き算盤の能力が必要だった。

蝦夷地北海道樺太および北方領土)では、「惣乙名」(ソーオッテナ[10])や「脇乙名」(ワキオッテナ[10][注 1]の役職にある蝦夷アイヌ)の有力者が、藩や奉行の掟書きを住民に伝達したり、住民や労働力を把握し宗門人別改帳の作成や夫役(漁場労働等)への動員に当たった。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:30 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef