広辞苑
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報道によると「熊野市からは1997年頃に訂正の申し入れが岩波書店になされたが、その後に刊行された第五版・第六版でもそのままになっていた」としている[30]。これに対して、岩波書店は、1997年頃に熊野市から指摘を受けて検討した結果、『紀伊続風土記』等の江戸時代の史料に那智地方で産出する旨の記述があることから、1998年刊行の『広辞苑』第五版で解説文を「那智地方に産した」という過去形に変更しており、現在の採石地が那智地方であるとは説明していないと主張するとともに、これら一連の報道は「事実経過を歪曲し、また『広辞苑』の記述を誤りと決めつけた不当な内容となっている」とウェブサイト上で反論している[31]
第六版の複数誤記問題

2008年に発行された第六版では、その記載内容について複数の誤記が発見されている。まず「芦屋・蘆屋」の項目では、「在原行平松風・村雨の伝説などの舞台」と記載されているが、正しくは「須磨」である。広辞苑編集部は、ウェブサイト上で「お詫びと訂正」を行い、早期の訂正を行いたいとしている[32] が、これは第五版から残っていた誤りである。さらに「横隔膜ヘルニア」の項目では、「横隔膜の欠損部や筋肉の弱った所を通って腹部内臓が腹腔へ逸脱する現象」などと記載されているが、腹腔内の内臓が腹腔に逸脱するというのはおかしく、この文脈であれば「胸腔へ逸脱」とすべきである。編集部は2008年1月にこの誤りを認め、第二刷から訂正したいとしている[33]

2017年5月「フェミニズム」などの項目の記述について、明日少女隊ウェブスター辞典オックスフォード英語辞典を引き合いに出して説明文の書き換えを求める公開質問を行った。広辞苑編集部はこの指摘を受け説明文を見直す決定を行い[34][35]、第七版において説明文の変更が行われた。
第七版の誤記述問題と紙の限界

第七版の初刷では、内容について以下のような誤記述がネット上で指摘された。誤記情報がインターネット上でいち早く拡散されながらも、岩波書店側の対応が後手に回り「紙の辞書」のマイナス面が際立つ事態になった[36]。岩波書店はJ-CASTニュースの取材に対して「完璧なものを出したいと努力はしているが見落としが出てしまうのが現状」と答えている[37]
LGBT
「多数派とは異なる性的指向をもつ人々」という説明になっている。Tで表されるトランスジェンダーは心と体の性が一致しないことであり、「性的指向」とは関係がない[38][39]
しまなみ海道
因島生口島大三島屋代島(周防大島)を経由する」という説明になっている。屋代島(周防大島)は大島(愛媛県今治市)の誤り[40]
坊守
浄土真宗で、僧の妻」と説明しているが、2000年代に入り、本願寺派大谷派が相前後して女性住職の配偶者や家族が坊守を称することを認めており[41]、訂正を求める声もある[42][43]

一方、20年にわたり間違いが指摘されてきた将棋宗家伊藤家の始祖についての記述は修正されている[37]。また、「仮にこれまで指摘されているものだけに止まるなら、奇跡的に少ないと言うべき」といった意見もある[44]
台湾記述と台湾からの批判

『広辞苑』第六版は、「中華人民共和国」の項目に示す中華人民共和国行政区分の図に台湾「台湾省」として組み入れ、「日中共同声明」の項目では「日本は中華人民共和国を唯一の正統政府と承認し、台湾がこれに帰属することを実質的に認め」たと記述する。台北駐日経済文化代表処は2017年12月11日「台湾が中華人民共和国の「台湾省」として紹介され」ている「誤記」「事実と異なる内容」として、岩波書店に対し「中華民国台湾は独立主権国家であり、断じて中華人民共和国の一部ではない」と修正を要求した[45][46][47]

岩波書店は同月22日、「中華人民共和国・中華民国はともに「一つの中国」を主張しており、一方、日本を含む各国は「一つの中国」論に異を唱えず」とした上で、「台湾省」と表記して掲載した地図は「「中華人民共和国」の項目に付した地図であり、同国が示している行政区分を記載したもの」とする見解を発表し、指摘のあった記述について「誤りであるとは考えておりません」との「謹告」[48]を発表した。これに対し駐日台北経済文化代表処は遺憾の意を表明した[49]。第七版でもこれらの記述はそのままとなっている[注 9]
年間発行部数

1991年、第四版が出版された年は、大きな反響を呼んだ宮沢りえの写真集『Santa Fe』の出版があり、出版業界では発行部数でどちらが上回るかが話題となった。結果的に、年間発行部数は『広辞苑』が約220万部と『Santa Fe』の約150万部を上回り圧勝した[53]。以降の版は、電子媒体やインターネットの出現で初年度の販売部数を減らしており、第六版が出版された2008年1月-2009年3月では約36万部となっている[54]
種類電子辞書に収録された広辞苑

通常版(菊判

机上版(B5判) - 第六版では「あ - そ」「た - ん」までの二分冊となった。

総革装広辞苑(菊判)第二版から発売。第七版は未発売。

総革装広辞苑机上版(B5判) - 第四版から存在する。第六版のみ通常の机上版と同じく二分冊とされた。第七版は未発売。

CD-ROM版 - 1987年に発売された『広辞苑 第三版CD-ROM版』が最初[注 10]。第五版まで発売され、容量の問題もありDVDに移行した。

DVD-ROM版 - 第六版のものが岩波書店から発売された。コンピュータで使用する。書籍版と収録項目は同数であるが、文学作品・憲法等の文献資料、カラー画像、動画、鳥の鳴き声、クラシック日本民謡の楽曲を含み、検索機能が付加されている。

電子ブック版 - 第四版・第五版のものが岩波書店から発売された。電子ブックプレーヤーを用い、収録項目は書籍版と同数。書籍版とCD-ROM版の中間的なデータと機能を有する。電子ブックプレイヤーのバンドル版と市販品では、マルチメディアデータの収録状況に差がある。

携帯電話版 - 携帯電話の有料サービスとして2001年4月から開始した。一定の月額利用料金を支払うことで携帯電話のメニューから単語検索や漢字検索が行える。

電子辞書版 - 電子辞書機器向けの辞書として広辞苑を含む場合がある。収録語数は書籍版と同数だが、地名項目が市町村合併に伴い増補されているものもある。

スマートフォン・タブレット版 - 第六版以降にはモバイルアプリケーションがある。第七版は計測技研(iPhone・iPad)、コードダイナミクス(富士通パーソナルズからティーガイアを経て運営移管、Android)、ロゴヴィスタ(iPhone・iPad、Android)からリリースされている。

ロゴヴィスタ電子辞典版 - 独自のデータ形式を採用する。DVD-ROM版、ダウンロード版があり、Windows、Macintosh、iPhone/iPad、Androidの各プラットフォームに対応する。これまでに第五版(前身に当たるシステムソフト電子辞典を引き継いだもの)・第六版・第七版のものを発売している。

ATOK連携電子辞典版 - ジャストシステムの日本語入力システムATOKで入力・変換中に参照するための電子辞典。2016年のATOK 2016以降では「ATOKイミクル」により、入力・変換中でなく文書の閲覧中にも辞典を引けるようになった。2006年に発売された『広辞苑 第五版 for ATOK』以降、各版のものがある。ATOK Passport [プレミアム]ではクラウド辞典として第七版を参照できる。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 「大型の国語辞典である」とされることが多々あるが、日本で該当する大型国語辞典は、小学館が発行する『日本国語大辞典』のみである[1][2]
^ 同様の事例で、以前から存在する語句でありながら、法律の成立・施行により語彙を改められた「少子」などがある。
^ ただし、1954年(昭和29年)初公開の「ゴジラ」は第五版で既に追加されている。第六版では1983年(昭和58年)放送の「おしん」なども追加された[16]
^上高森遺跡」の捏造が発覚したため削除された例など。


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