幻覚
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錯聴の患者を鑑別診断する際に外側側頭葉てんかんであるのかどうかを考慮することが重要である。他にもウィルソン病、さまざまな内分泌疾患、多数の代謝異常多発性硬化症全身性エリテマトーデスポルフィリン症サルコイドーシスなど、多くの疾患が精神病を呈する可能性があるため、精神病の特徴を示したとしても、必ずしもそれ自体が精神疾患であるとは限らないと考えることが必要である。

音楽的な幻聴も複雑な幻聴の中では比較的多く、難聴(シャルル・ボネ症候群の聴覚版である音楽耳症候群など)、外側側頭葉てんかん[14]、動静脈奇形[15]、脳卒中、病巣、膿瘍、腫瘍に至るまで幅広い原因によって発生することがある[16]

カフェインの大量摂取は、幻聴を経験する可能性を高めると言われている。ラトローブ大学心理科学部の研究によると、1日5杯のコーヒー(約500mgのカフェイン)が幻聴を誘発する可能性があることが明らかになった[17]
幻視

幻視とは、「何も存在しないのに、外部の視覚刺激を知覚すること」である[18]。これとは別に関連する現象に錯視があり、これは実際の外部刺激が歪曲されたものである。幻視は、単純なものと複雑なものに分類される。

単純幻視(SVH)は、非形成視覚幻覚、初等視覚幻覚とも呼ばれる。これらは、光、色、幾何学的形状、そして不定形の物体の幻視のことを指す。さらに、構造を持たない幻視(眼閃)と幾何学的構造を持つ幻視(光視症)に分けられる。

複雑幻視(CVH)は、形成された幻視とも呼ばれる。複雑な幻視は、人、動物、物、場所など、鮮明でリアルなイメージや情景が知覚される。

例えば、キリンの幻覚が見えると報告されることがある。単純幻視は、キリンに形や色が似ている(キリンに見える)不定形の図形であるが、複雑幻視は、紛れもなくキリンそのものの個別の実物大画像が知覚されている。

多くの場合、幻視は意識混濁という意識障害時に起こることが多く、特に薬物離脱症状(アルコールなどの中毒性疾患[19])や神経変性疾患認知症でよく認められる[19]
命令幻覚

命令幻覚とは、外部からの指令のように聞こえる幻覚、または、被験者の頭の中から出てくるように感じられる幻覚のことである[20]。幻覚の内容は、無害なものから、自分や他人に危害を加えるように命令するものまでさまざまなものがある[20]。そしてこの幻覚はしばしば統合失調症と関連している。この幻覚を経験した人は、状況に応じて、幻視された命令に従うこともあれば、従わないこともある。非暴力的な命令であれば、従うことがより一般的である[21]

命令幻覚は、しばしば殺人など、犯した犯罪を弁護するために使われることがある[22]。これは、人の耳に聞こえる声で、それが聞き手に何をすべきかを伝えるのである。「立て」や「ドアを閉めろ」といった、極めて穏当な命令であることもある[23]。それが単純なものであろうと、脅威となるものであろうと、やはり「命令幻聴」とみなされる。このような症状があるかどうかを判断するのに役立つ質問には、次のようなものがある。「声は何をするように言っていますか?」「声はいつからあなたに何かをするように言っていますか?」「自分(または他人)を傷つけるように言っている人がわかりますか?」 「声が言っていることをするのに抵抗できると思いますか?」などである[23]
幻嗅

実際にはないにおいを嗅ぐ異嗅症(嗅覚性幻覚)[24]、実際のにおいを吸い込んだのに記憶と違うにおいと感じる異嗅症(嗅覚性錯覚)は[25]嗅覚(嗅覚系)のゆがみであり、ほとんどの場合、深刻な原因はなく時間がたてば自然に治ることが多いが、この嗅覚性幻覚と嗅覚性錯覚を併発した場合は注意が必要になる[24]。この併発は、鼻の感染症、鼻ポリープ、歯の問題、偏頭痛頭部外傷発作脳卒中脳腫瘍など、さまざまな条件によって生じる可能性があるためである[24][26]喫煙、ある種の化学物質(殺虫剤溶剤など)への暴露、頭頸部癌の放射線治療など、環境暴露も原因となることがある[24]


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