幻の湖
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スタッフ
本編

製作:
佐藤正之大山勝美野村芳太郎橋本忍

音楽:芥川也寸志

撮影監督:中尾駿一郎、斉藤孝雄 岸本正広

撮影:斎藤孝雄

美術:村木与四郎、竹中和雄

録音:吉田庄太郎

照明:高島利雄

編集:小川信夫

チーフ助監督:桃沢裕幸

撮影:岸本正広

原作・脚本・監督:橋本忍

特殊技術

特撮監督中野昭慶

撮影山本武

美術:小村完

照明:森本正邦

操演:松本光司

特殊効果渡辺忠昭

監督助手:松本清孝

合成班

光学撮影:
宮西武史

製作
経緯

監督の橋本忍によると、本作品は映画『八甲田山』(1977年)のロケ現場にてブナの木に話しかけた際に脳裏に浮かんだ一枚の絵が元になっているという[11]。その絵とは、「日本髪を振りみだした若い女が、出刃包丁を構え、体ごと男へぶつかっている」物であり、その女は縄文期より過去、現在、未来へと生まれ変わり続けているという設定を構想する[11]。また、橋本はタイプライターについて思いを巡らせ、従来の電動式のものからLSIのものに代わっていくと構想、さらに琵琶湖畔にある弥勒菩薩を見物した橋本は「LSI、十一面観音の菩薩像、出刃包丁を構えた女」の三つを組み合わせた話の構想を企画し始める[11]

企画会議では「LSIを内蔵した仏像」などの意見もスタッフから提案されたが、結果として2年間の時を費やし最終的な脚本が完成した[11]
その他

南條玲子はこの映画のために
清泉女子大学英文科を一年休学。デビュー作がトルコ嬢(註・現在のソープランド嬢)の役とあって、出演をめぐって少々の波風はたったが「本物のトルコ嬢に会ってみたんです。話をしてみるまでは確かに違和感がありましたけど、普通の人とまったく同じ。ほとんど抵抗はなくなりました」と答えている[12]

倉田役の長谷川初範は、TBSの野村清プロデューサーから『刑事犬カール2』(『ウルトラマン80』の後番組)レギュラーの打診があったがこれを断り、橋本忍が脚本・監督を兼任し一年間の長期撮影を行う本作への出演を選んだ[13]

スペースシャトルのミニチュアは、耐熱タイルが1枚1枚まで再現されたリアルな造形となっている[14]

宇宙遊泳のシーンは俳優をクレーンで吊った映像に背景を合成している[14]

シナリオの段階(第一稿?第三稿)ではスペースシャトルではなく、サターンIIロケットとスカイラブの設定で書かれていた。

封切

「ネオ・サスペンス」と称し、雄琴ソープランド嬢の愛犬の死を発端とする壮大な物語が展開される大作であったが、あまりに難解な内容のため客足が伸びず、公開から2週間と5日(東京地区)で打ち切られることとなった。その際、その年の夏休み映画だったたのきんトリオの『ハイティーン・ブギ』(1982年)、『ブルージーンズメモリー』(1982年)が急遽再上映されることとなった。この映画の5週後に続いて公開されるはずだった映画は、橋本と共に『八甲田山』を作った森谷司郎監督、高倉健主演の『海峡』(1982年)である。都市部のロードショーのみで打ち切りとなったため、舞台である滋賀県の映画館では、同県の大津市内の映画館『教育会館』などでの地元先行公開だけで終わった。

以降、1996年に『映画秘宝』で紹介されるまで名画座でもめったに上映されず[注釈 3]ビデオ化もテレビ放映もされなかったという、文字通り「幻の」作品だった[11]。また、日本を代表する脚本家であった橋本は、この作品の失敗で映画界での信頼を失ったとされ、1986年ごろに2本の映画の脚本を執筆したがどちらも興行収入が振るわず、事実上の引退状態となった[11]。ただしその後2008年には『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』『私は貝になりたい』の2作品の脚本を執筆している。
DVDリリース・派生作品
DVD


2003年4月25日、
東宝

2013年11月8日、東宝シネマファンクラブ

2015年2月18日、東宝DVD名作セレクション

書籍


幻の湖(1980年6月、集英社

幻の湖(1982年5月、集英社文庫

サウンドトラック


オリジナル・サウンド・トラック 幻の湖(2010年、富士キネマ)

作品の評価

映画本『底抜け超大作』では、「(主演に関して)喜怒哀楽を表現するのに、全身を使ってオーバーに体を震わせ、目を?いたりするものだから、暑苦しいことこのうえない」、「橋本演出は、二本の監督経験がある人とは思えないほど無駄で冗長な描写が多い」、「(最終シーンに関して)この場面の科学考証のデタラメさは語り草で、まさしくトンデモ映画」と否定的な評価を下している
[11]

映画評論家の山根貞男は、「(愛犬の復讐に燃えるトルコ嬢の設定について)そもそもトルコ嬢としての日々がきちんと描出されないから、主人公像は空疎に抽象的で、具体性をもたない」、「こんな主人公像に、話の展開と細部に、どう思い入れをしろというのか」として、「生命をもたない映画、死体のごとき映画であり、要するにどうしようもない愚作である」と酷評している[15]

本作品について橋本自身は、無理なシチュエーションや不自然なシチュエーション(例えば飼い犬の仇討ちと称して殺人を犯す点など)の連続を強引にまとめた不条理な脚本となっており[16]、「最後の仕上げでフィルムが全部繋がると、根本的な大きな欠陥と失敗が間違いなく露呈」[16]し、「大失敗」[16]だったと総括している。撮影開始前から本人が脚本に自信を持てずに製作中止も考慮していたが[16]、悩んでいるうちに製作準備が進んでしまい、撮影に入らざるを得なかったという[16]

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 書籍『ゴジラ画報』では、「2時間46分」と記述している[1]
^ この名目は本作品固有のものではなく、たとえば『海峡』(1982年)、『ひめゆりの塔』(1982年)、『南十字星』(1982年)といったこの年の他の東宝映画も東宝創立50周年記念作品として公開されている。
^ 1993年10月11日?13日、大井武蔵野館が封切り以来11年ぶりに上映。東宝がフィルムを出したがらなかったためと言われる。

出典^ a b c d ゴジラ画報 1999, p. 198, 「幻の湖」
^ 竹入栄二郎「アイドル映画 データ分析」『キネマ旬報1983年昭和58年)8月下旬号、キネマ旬報社、1983年、39頁。 
^ a b ゴジラ大全集 1994, pp. 72?73, 「東宝特撮映画史 ゴジラ誕生 特撮復権にむけて」
^ 小説版『幻の湖』(橋本忍著 1980年6月25日集英社)挟み込みの橋本プロのチラシによる


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