誘発眼振の検査法には、迷路刺激により誘発される迷路刺激眼振に対する前庭刺激検査法として主に温度眼振検査や回転眼振検査がある。他に直流通電の刺激によって誘発される眼振を検査するものもある。また視覚刺激により誘発される眼振や眼球運動の検査法として視運動性眼振検査や視標追跡検査などがある。眼振急速相(眼振緩徐相により偏位した眼球を急速に中央に戻す時に見られる速い眼球運動)の速度異常などは肉眼観察や眼振計では十分な検査ができないため、コンピュータ解析による検査を行う。
一方、体平衡に関する機能検査では主に重心動揺の変化を調べ、重心動揺の変化をグラフに記録する他、コンピュータ解析により重心動揺の周波数特性や一定時間内での総軌跡長などの検査が行われる。 温度眼振検査では、仰臥位で頭部を30度挙上、温水、冷水を外耳道に注入する。体温より低い温度で刺激された場合には眼振急速相が対側を向き、体温より高い温度で刺激された場合には眼振急速相が同側を向く。温度眼振検査の臨床的意義は、1側迷路の機能を個々に判定し、1側の半規管機能低下を検出できることである。この検査法は外側半規管の機能を検査するもので前半規管や後半規管の機能検査ではないが、これにより外側半規管における前庭機能異常の有無を代表させることが多い。別名カロリック検査(又はカロリックテスト)という。 回転試験、クプロメトリーともいう。迷路に回転刺激を与えて眼振を誘発し、前庭系の異常の有無を検査する方法である。回転眼振検査においては、回転中眼振は回転方向に眼振が現れるが、回転後眼振は回転方向と反対の方向に眼振が現れる。検査法は座位で頭位を前屈し、外側半規管を水平にして左右への回転を行う。それにより内リンパ流を発症させて外側半規管のクプラを偏倚させると、その信号が中枢前庭系で変換され、眼振として出現する。回転方法として、旧来のバラニー回転法では、20秒間10回転と180度/秒の速度で回転し、急停止後に眼振の持続時間を左右比較する。他に等速度回転後に停止させる方法、クプロメトル方式、コンピュータでの詳細分析などがある。回転眼振検査では1側の前庭機能を個々に検査し、代償過程の検討に有効である。 頭位変化により現れる眼振の検査法である。一般に眼振は注視により抑制されるため、注視眼振を誘発するなどの場合を除き、多くは非注視下(フレンツェル眼鏡、暗所開眼下、眼振計による記録など)で検査される。頭位眼振検査では頭位を緩徐に変化させ、耳石刺激により現れる眼振を検査する。 また頭位変換眼振検査では急激に頭位を変化させ、半規管刺激により現れる眼振を検査する。 視標追跡検査(ETT)は正面を移動する視標を眼で追わせる検査法である。肉眼観察と眼振計による記録があり、近年は眼振計による記録の分析が行われる。主な刺激方法として水平方向、垂直方向への刺激がある。正常な場合には円滑な眼球運動が観察されるが、小脳や脳幹などに障害がある場合には追跡眼球運動が円滑に行われないことが多い。 直立姿勢では常にわずかな動揺を繰り返しながら動的平衡が維持される。重心計はこの動揺を体重心の移動として前後左右上下の各方向から計測し、モーメント(体重に距離を乗じて得た値)、もしくは移動距離として出力、記録するが、データ処理装置を使用するとより正確な結果が得られる。平衡機能は起立制御、平衡維持に働く各受容器、中枢神経系の機能などに左右されるため、平衡機能障害、メニエール病、難聴などのめまい検査、脳腫瘍、てんかんの検査、直立能力測定などに用いられる。 重心動揺計検査は検出台に直立した被検者の身体動揺を床反力の変化としてとらえるもので、XY記録計などの重心動揺計により開眼状態、閉眼状態における重心動揺の変化を記録する。以前は波形の定性的な観察が行われていたが、近年はコンピュータによる周波数分析、総軌跡長、動揺速度などの定量的分析が行われる。 『南山堂 医学大辞典』 南山堂 2006年3月10日発行 ISBN 978-4-525-01029-4
眼球運動の検査
温度眼振検査
回転眼振検査
頭位眼振検査
視標追跡検査
身体動揺の検査
重心動揺計検査
脚注[脚注の使い方]^ Godman, Heidi (2022年9月1日). “Better balance may mean a longer life
関連項目
姿勢反射
三半規管
参考文献
外部リンク
聴覚・平衡感覚の受容器と伝導路 (ビジュアル生理学
平衡覚
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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