平等主義
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初期仏教では、僧伽(僧団)に属する出家者(比丘比丘尼)が涅槃到達・解脱のための修行を行いつつ、在家信徒へ智慧・徳を与え、その見返りとして在家信徒が食物・物品を彼らに提供するという共存関係で成り立っていたが、この関係は在家信徒側に不満・疎外感を蓄積させていく格好となり、やがて衆生救済に励む「菩薩」信仰を派生させ、大乗仏教という仏教改革・革新運動成立の1つの要因・背景となった。そうして成立した大乗仏教の経典においては、『維摩経』『勝鬘経』のように在家信徒を題材として扱ったり、『法華経』『涅槃経』のように仏性如来蔵思想が強調されるなどして、在家信徒を含む平等主義がより強調されるようになって行った。

(更に後の仏教においては、大衆的な宗教であるヒンドゥー教の台頭に伴い、それに対抗していくために、土俗の様々な呪術を取り入れたり、現世利益を強調する一方、そうした中で僧侶側の理論・行法の高度化・秘術化、大衆との差異化の探求も進み、それらが結合して密教が成立していくことになった。)
中国(儒家・墨家など)

古代中国では、春秋戦国時代に登場した諸子百家によって様々な思想が説かれたが、その内の1つである儒家では、開祖である孔子によって、「」(人間愛)が最重要徳目として説かれた。また孟子は、全ての人間が善性の萌芽を備えているとして「性善説」を説き、同時に、人民の生活を顧みてその信任・支持を得ることができないような天子天命を失っているのであり、新たな天子に取って代わられるのが当然だとする「易姓革命」論を唱えた。

また墨家では、孔子の「仁」が近親者に向けられた差別的な愛であるとして、徹底した平等愛としての「兼愛」が説かれた。

朝末期に起きた、史上初の農民反乱である陳勝・呉広の乱の首謀者・陳勝が、決起するに当たり発した言葉は「王侯将相いずくんぞ種あらんや」であった。
近代以降
黎明期

上記の古代ギリシャや古代ローマの伝統、及びそれらと中世キリスト教神学で紡がれてきた自然法思想を継承する形で、また、15世紀から17世紀にかけての、

大航海時代以降の欧州外の植民地と通商の拡大、欧州外の人々との接触の増加

宗教改革に伴うキリスト教の分裂・権威失墜

上2つが絡んだ紛争戦争革命の発生

科学革命理性主義の台頭

といった社会環境の変化などを背景として、17世紀から、「自然・理性」を前面に出した「公正・合理的」な社会像を模索する思想的営みが活発化し、一方ではフーゴー・グローティウス自然法万民法の概念を絡めてあるべき公平な国際的法秩序(国際法)を説いたり、他方ではトーマス・ホッブズジョン・ロックらによって、仮想的な自然状態において万人が元来保有していたと想像される自己保存的・自在的な権利・能力としての自然権(=人権)概念(と、それを束ねて秩序付ける自然法概念、そしてそれを実現・強化するための社会契約)といった発想が提示され、「理性的な公平さ」や「個人の自由・平等の尊重」を旨とする、近世・近代的な自然法自然権人権)思想、法・政治・社会思想が醸成されていくことになった。

18世紀に入ると、ジャン=ジャック・ルソーや、トーマス・ペインが、ロックの自然状態の議論を引き継ぎ、啓蒙思想的・自然主義的な平等主義・自由主義の喧伝役となって、アメリカ独立フランス革命の理念形成に影響を与えた。

また、ロックを源流とするモラルセンス学派の系譜を引き継いだデイヴィッド・ヒュームや、アダム・スミス等によって、(経験主義と相性が良い)感情・共感・是認を基礎とした感情主義的な道徳哲学も醸成され、ジェレミ・ベンサム功利主義にも影響を与えた。

他方で、イマヌエル・カントは、純粋理性の実践的使用(実践理性)において、理性的存在者の幸福には自由と共に平等がアプリオリに要請されることを論証したり、定言命法義務論的な道徳法則を通して理性的存在者が互いの人格の尊重を目的として結合する「目的の国」を主張するなど、超越論哲学先験哲学)・批判哲学という独自の枠組み・切り口から、近代的な自由・平等・個人主義を擁護した。
税・経済

1775年からのアメリカ独立戦争は、課税等の手続きに関する植民地民の不満が契機となった。

1789年からのフランス革命は、不平等な重税に耐えられなくなった第三身分(平民)達の反発が契機となった。自由・友愛と並んで、平等が革命の三大理念の1つとなった。議会で急進派ジャコバン派)が議場左側に陣取ったことが、「左翼」の語源となった。

19世紀には、市場経済資本主義経済)による民衆の疲弊を背景として、プロレタリアート(労働者)による社会支配を掲げる社会主義共産主義マルクス主義が台頭し始めた。


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