リベラリズム的平和論としては、まず機能主義が現れ、協力が困難な安全保障問題ではなく、経済や文化など協力しやすい特定の分野において交流を深め、国際平和を確実なものにしようと説いた。これは19世紀後半以降の各種国際機関の設立をもたらした。次いで1950年代には新機能主義が登場し、特定分野での協力を深化させて政治的信頼を醸成し、政治統合によって国家主権を徐々に超国家機構へと移行させることで平和を構築しようと考えた。これは欧州経済共同体の設立などの成果をもたらしたが、1960年代には行き詰まった。1970年代にはジョセフ・ナイとロバート・コヘインが相互依存論を唱え、複合的な国家間の相互依存関係が深まることで平和の可能性が高まると説いた[41]。 民主国家の間には相互に戦争を抑制する制度と文化が備わっていると考え、世界のすべての国を民主化させることにより平和を実現しようとするのが民主的平和論である[11]。この思想の起源は古く、すでに18世紀にはイマヌエル・カントがこれに類似した論を提唱していたが、1980年代に入るとマイケル・ドイルやブルース・ラセットらがこれを立証し、民主的平和論を確立させた[42]。民主国家間での戦争が少ない理由については、民主主義国は内政において議会などにより平和的に紛争を解決する規範を持っており、それを相手国にも期待できるためという説[43]や、民主国家においては権力分立が確立しており、国民が選挙や世論を通じて政府の暴走を止めることができるため、政府や政治家もそれを念頭に置いて平和的政策を採らざるを得ないという説[44]、また民主国家では政府の透明性が高く、相手国の情報がお互いに得やすいため相手の反応や限界が見極めやすいから[45]、民主国家が仮に参戦した場合は非常に継戦能力が高く危険なため[46]など、いくつかの説が存在する。 なお、成熟した民主国家間において戦争が起きにくいことにはほぼ合意が存在するものの、急激な民主化は必ずしも平和をもたらさない場合がある。これは、国内の政治情勢がまだ安定しておらず、先鋭化した国内対立が軍事的対立へとつながる場合があるためである[47]。また、独裁国家における戦争可能性はその政治システムによって左右され、文民による集団指導体制では武力行使の可能性は低くほぼ民主国家と同じ程度であるのに対し、独裁者一個人に依拠する体制では戦争に及ぶ可能性が高まると考えられている[48]。厳格なジャーナル「政治交流」によると、民主政治と平和の関係は誤りであり、実際には民主国家間の貿易や同盟の拡大が平和の原動力であるという意見もある。同誌によれば、権威主義が復活しつつある世界において、民主主義と平和の関係を真に理解する必要性が迫られているとのことである[49]。 国際連合は平和のために創設されたが、多くの問題を内包している。国連憲章にある集団安全保障は、冷戦における米ソの対立により機能不全に陥った[50]。国連憲章上に明文規定はないものの[51]、PKF(国連平和維持軍:Peace-Keeping Forces)を用いて、戦争に介入することで平和を積極的に創造する取組みも行っており、この活動に対して、1988年にはノーベル平和賞が贈られたものの、人材や資金の確保、その権限や任務内容において数多くの問題がある。 従来のPKOは停戦監視と兵力の引きはなしが主要任務であったが[52]、冷戦の終結後、1992年に当時のブトロス・ブトロス=ガーリ事務総長は増加する地域紛争を抑制するための予防外交という概念を提唱し国際連合平和維持活動を大規模化・強化した。しかしこの試みはマケドニア共和国では成功したものの、ソマリア内戦(UNOSOM II)やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(UNPROFOR)では紛争の抑止に失敗し、国際連合ルワンダ支援団(UNAMIR)でもルワンダ虐殺を阻止することはできなかった[53]。特にルワンダにおける平和維持活動は、国連の限界や平和維持活動の問題を浮上させることとなった。しかしその後もPKOの任務の拡大は続き、平和維持のみならず戦争によって荒廃した当該国の武装解除や新秩序構築までを視野に入れた、いわゆる平和構築が重視されるようになっている[54]。 国際連合の前に、第一次世界大戦後に世界初の集団安全保障体制を構築しようとした国際組織が国際連盟だった。連盟は、国際紛争が発生した場合は仲裁裁判や連盟理事会の審査などのいくつかの手続きによって両国の仲裁を行い、それでも戦争を行う国家には経済制裁などいくつかの制裁を行うことが出来たものの、軍事的な制裁機能が弱く、集団安全保障体制としては不十分なものであった[55]。結局この体制では平和を実現することはできず、1930年代以降世界各地で侵略戦争が続発し、第二次世界大戦へとつながっていくこととなった。 平和に貢献した人々のために、世界のさまざまな団体が各種平和賞を設立し、授与を行っている。1901年にはアルフレッド・ノーベルの遺志によってノーベル平和賞が設けられ、毎年12月10日にノルウェー・ノーベル委員会が授与を行う[56]。このほかにも、学生平和賞などさまざまな平和賞が存在する。 以下は、平和の記念物である。 名称位置組織意義画像
民主的平和論
運動・活動
国際連合「国際連合平和維持活動の一覧」も参照国連平和維持活動の実施状況を示した地図
現在平和維持活動を実施中の国・地域
過去に平和維持活動が実施された国・地域
国際連盟詳細は「国際連盟」を参照
近代オリンピック詳細は「近代オリンピック」を参照
各種平和賞
記念物
日本の平和の鐘アメリカ合衆国・ニューヨーク国際連合World peace
Fountain of Time
Fredensborg Palace