冷戦における二大大国であるアメリカとソ連の間でも1969年に第一次戦略兵器制限交渉が開始され、1972年に調印されたのを皮切りに、第二次戦略兵器制限交渉(1979年)、中距離核戦力全廃条約(1987年)、第一次戦略兵器削減条約(1991年)と相次いで戦略兵器削減条約が締結された[26]。1990年にはヨーロッパ通常戦力条約が締結され、通常戦力の削減も行われた。1991年にソ連が崩壊した後もロシアとのあいだで第二次戦略兵器削減条約(1993年)が締結されたもののこれは発効しなかったが[26]、のちにモスクワ条約 (2002年)[27]、第四次戦略兵器削減条約(2011年)が発効するなど核軍縮の努力は続けられた。
各国の主権の及ばない地域においては、1959年の南極条約において南極における一切の軍事行動が禁止され、1967年の宇宙条約において地球周回軌道や宇宙空間に大量破壊兵器を運ぶ物体を乗せること、および月など他天体における一切の軍事行動が禁止され、さらに1971年の海底核兵器禁止条約における大量破壊兵器の設置を禁じるなど、軍事行動の禁止・抑制が相次いで決定された[28]。ただし宇宙条約では宇宙空間における通常兵器の使用は禁じられておらず、宇宙における軍備管理の議論も停滞している[29]。
化学兵器・生物兵器に関しては、1925年のジュネーヴ議定書で使用が禁止されたあと、1975年の生物兵器禁止条約によって生物兵器の開発・生産・貯蔵等が全て禁止され[30]、次いで化学兵器の生産・貯蔵等も1993年の化学兵器禁止条約によって禁止された[31]。
通常兵器に関しては、1980年の特定通常兵器使用禁止制限条約において地雷や焼夷兵器の使用制限が取り決められ[32]、1997年の対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約(オタワ条約)において対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲等の全面禁止が定められ[33]、2008年のクラスター弾に関する条約ではクラスター爆弾の全面禁止が決定された[34]。 戦争の違法化は国際連盟の設立を機に、1928年の不戦条約で戦争放棄に関する初の多国間条約が成立し、第二次世界大戦後には国際連合憲章の武力行使禁止原則(国際連合憲章第2条4項)に発展した[10]。国際連合憲章第2条第4項では「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と定められている[35]。ただし、国連憲章51条によって、他国からの侵略に対する防衛は自衛権として明確に例外とされ、認められている。自国のみの自衛権だけではなく、ある国が侵略を受けた際に第三国が共同で被侵略国を防衛する集団的自衛権も、同条項にて明確に認められている[36]。 戦争は資源や食糧を求めて他国を侵略することで発生することから、資源の共同管理や自由貿易(資源・食糧を金銭で獲得できる制度)を実現すれば戦争はなくなるという考え方が経済国際主義による平和論である[10]。この説の起源は古く、1910年にはイギリスのラルフ・ノーマン・エンジェルが当時の貿易統合の高まりを見て、経済緊密化による戦争抑制を唱えた[37]ものの、その4年後の1914年には第一次世界大戦が勃発した。やがて21世紀に入ると、エリック・ガーツキーが商業的平和論 戦争を偏見と民族差別に起因するものとみて相互信頼を構築することによって戦争が予防されると考える平和論である[10]。国際連盟の知的協力委員会及び第二次世界大戦後のユネスコの活動、国際親睦団体による国際交流や留学制度にその思想が引き継がれている[10]。 国際社会で集団的な制裁の仕組みを作ることによって戦争を防止しようとするもの[10]。集団安全保障体制は、国際連盟で初めて制度実現し、その後、国際連合で整備拡充されて今日に引き継がれている[10]。集団的自衛権との違いは、集団的自衛権が基本的に同盟国間で適用されるのに対し、集団安全保障は国際社会全体での対応を念頭に置いている点である[40]。 リベラリズム的平和論としては、まず機能主義が現れ、協力が困難な安全保障問題ではなく、経済や文化など協力しやすい特定の分野において交流を深め、国際平和を確実なものにしようと説いた。これは19世紀後半以降の各種国際機関の設立をもたらした。次いで1950年代には新機能主義が登場し、特定分野での協力を深化させて政治的信頼を醸成し、政治統合によって国家主権を徐々に超国家機構へと移行させることで平和を構築しようと考えた。これは欧州経済共同体の設立などの成果をもたらしたが、1960年代には行き詰まった。1970年代にはジョセフ・ナイとロバート・コヘインが相互依存論を唱え、複合的な国家間の相互依存関係が深まることで平和の可能性が高まると説いた[41]。 民主国家の間には相互に戦争を抑制する制度と文化が備わっていると考え、世界のすべての国を民主化させることにより平和を実現しようとするのが民主的平和論である[11]。
戦争の違法化
経済国際主義
相互信頼による平和論
集団安全保障
リベラリズム
民主的平和論
Size:79 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef